球の中身はなんだろな
アスとひとしきり会話を終えると眠そうに目を擦りながらケトが起きてくる。
「兄ぃ?あれ?なんでこんな所で寝てるんだろ」
ケトの寝起きを初めて見たアスは目を見開いてこっちに向けて訳が分からないよ、という視線を送ってくる。
「あー……俺はだな、ケトのお兄ちゃんの代わりになってる。…………らしい」
「らしいってなに」
「あのだな━━」
俺はアスにケトが兄ぃと呼ぶようになった経緯をあの宿屋で起こったことから今まで一通り話す。
〜〜〜
「ふぅん、よくわかった。じゃあみんながいないあいだはおにいちゃんってよぶ」
「どうしてそうなった」
「へぇ、ファルにいったらどうなるんだろうなー」
「はい、わかりましたどうぞなんとでも呼んでください」
実はアス、頭良いんじゃないか?!
━━その通りである。実際にアスのIQはゆうに140を越している、それは天才というレベルを楽々と越しているという事だ。
「で、おにいちゃん。これからどうするの?」
「とりあえずみんなが起きたら船長を叩きに行く。そんでもって…………後で考える!!」
「いきあたりばったりだね」
「り、臨機応変と言うんだ」
アスの一言にかなり苦しい言い訳をするがアスはニコッと笑うと
「しょうがないおにいちゃんだね」
と、からかうように言う。
………………っと!!いかんいかん、理性が飛びそうになった。
もう慣れたと思っていたけど全然慣れてなかったな、気を付けなければ。
そんな思いを頭の片隅に入れながらみんなが起きるまでの間新しい魔法のイメージを膨らませる。
休みの期間に魔術の心理で新しい魔法が作れることを知った俺は暇があれば頭の中で魔法の研究をするようになっていた。
「アス、さっきの球体どうやって作ったんだ?」
「んえ?!え、えっとーかべとかてんじょうをそのままギューって」
『振動探知魔法』
「…………中になんか入ってるぞ、しかも羊…………か?」
「そ、それはただのおきもの、決してマスターのことを眠らせたジンギスカンじゃ………………あっ」
「バカの皮を被った賢者ってか……アス、大人しく出してあげなさい。ただし手足は頑丈に拘束して」
「ちょっとなにいってるかわからない」
反抗的な態度をするアスに拳を握り「対阿呆娘専用兵器」と小さな声で囁くとすぐに行動を開始した。
「そうそう、そうやって素直にすればいいのです」
素直に言うことを聞いてくれたアスの頭を優しく撫でると球体の中から出てきた羊?を一瞥するともう一人の襲撃者のもとへ行き手足を土魔法にてガチガチに固める。
「さて、みんなが起きたら本格的にこれからの事を話そう」
その顔には悪意のこもった笑みが貼られていた。




