馬鹿に見えるやつほど意外と賢い
目の前の女が欠伸をした瞬間、マスターを含め他の人達が全員倒れてしまった。
「メッメッメ、おやすみなさい、永遠に」
女はそう言い捨てると私のマスターを一瞥し踵を返そうとした。
「ちょっと待って」
「?!」
私の声に女は眠そうな重いまぶたを大きく吊り上げこちらを見据えた。
「メッ………あ、あなた…………何で!?」
「答える義理はない、マスターを起こして」
「メヘェッそれは出来ない相談」
女は私の命令に欠伸混じりに答えると私が眠らないことを確認し、その目が敵を見る目になる。
「メェ、馬鹿でいるのは疲れる」
「それは少しだけ同意する」
「メェ、ここは正々堂々この金貨が床に落ちた時に開戦と行こうか」
女の言うことに武器を出すことで肯定するとコインが親指ではじかれ宙を舞い━━
━━カチャン
戦闘の火蓋が切って落とされた。
まず先に動いたのはアスだった、コインの音と共にアスが弾かれたようにシー・プゥ懐に入り込み腰にぶら下げているダガーを瞬時に抜き放つ。
そのダガーの切っ先はシー・プゥの心臓へ向けて進むがダガーが体に触れようとするその瞬間シー・プゥの方から声と共に淡い光がアスを襲い、その一撃は力無くヘナヘナと落ちる。
「どうして」
「メエェ、残念」
━━ドゴッ
鈍い音と共に脳裏に響く強烈な痛みが襲ってくる。
「うっぐ……」
「膝枕はお嫌い?メヘェ」
シー・プゥはアスの顎へ膝蹴りを入れると口を吊り上げ不敵な笑みを浮かべる。
「むっ!!」
しかしアスもやられっぱなしでは無く腕に深々とダガーを刺す。
「メェ、痛いじゃないの」
ダガーを刺されたシー・プゥは歯をギリッと歯を食いしばりアスの腹を蹴り飛ばし無理矢理距離をとる。
「うっ、ただでは終わらない!!」
蹴られ吹き飛ばされたアスは無理な姿勢でクロスボウをシー・プゥ目掛け打ち放つ、しかしその矢はシー・プゥの裏拳により壁へ方向を変えられる。
「メッヘェッヘェ?そんな程度で当たると思っているの、っ!?」
シー・プゥは目を見開き驚いた何故なら先程壁へ弾いたはずの矢が自分の脇腹へ刺さっているのだから。
「跳弾のお味はいかが?」
「チッ、『上級治療魔法』洒落せぇんだメェ」
メェ、危ない、このまま戦っていたら魔力が尽きるのが先、どうにかしないとヤバそう。
このままだとアレを使わざるを得なくなってしまうメェ。
むぅ、あの女どれだけやっても回復される……どうやって倒せばいいのだろう、マスターを起こしてもらう為に殺すわけにはいかないし…………考えすぎは良くない、回復には魔力を使うはずだから早いうちに枯渇させてしまおう。
この戦い負ける訳にはいかない
互いに覚悟を再度決めるとアスはクロスボウとダガー、シー・プゥは右の拳を握り左は何時でも魔法が放てるようアスへ向け構える。
「いざ、覚悟!!(メェ!!)」




