侵入経路
あの後、アス達とは何事も無く合流し、目の前には都市の中心部のビルに酷似した建物がある。
「これ、入口なくね?」
少しふざけたトーンで言うがどう見てもこの建物には出入りするための通路が無い。
「イガラシ、情報は?」
「天空都市には転移装置なる物があって色々な手順を踏んでじゃないとその装置の場所には辿り着けないらしいよ」
俺はその説明を聞いた瞬間『よし、この壁ぶち抜いたろ』という発想に至ったがその必要はなかったらしい。
「マスター、あっち」
「あっちがどうし…………よし、入るか」
アスが指を指した方には空賊が開けたのであろう成人男性十人が肩車して横に並んでも余裕で通れるほどの大穴が空いていた。
思ったより簡単に入れた事に少しの戸惑いを覚えながらも何かがある場所にまで走って行く。
途中都市の人かわからないが空賊と間違えたのか攻撃してきたためアスに頼み建物で手錠を作ってもらい拘束する。
「五分後に解けるようにしてやってくれ」
「りょうかーい」
「いや、言ってみただけなんだが本当に出来るのか?」
「マスター、あんまりわたしをなめないほうがいい。まほうにかんしてはゆうしゅうそのもの」
いや、魔法以外のことを言ってるんだがね……五分が分からなくてものの数秒で解けて襲いかかってこられることだって無くもないし……。
そんな事を考えると身震いがしてきた。
「いいや、アス……俺達が曲がったりしばらく走ったら俺が合図をするからその時に解いてくれ」
「あい」
「解いていいぞ」
「わかった」
俺がそう言うと、土が崩れて床に落ちる音が静かな空間にこだまする。
「よし、アスは優秀だな」
「えっへん」
「それともうひとつお願いがある、天井を崩してあいつをこっちに来れないようにしてくれ」
「おまかせあれー」
俺に褒められ少し上機嫌のアスは天井を物凄い勢いで崩し、流石にこれならこちらまで来れないだろうと思った…………その矢先に
天井が崩れるのをやめず追って来るかの如く天井がこちらへ向けて崩れ落ちてくる。
「こういうところを言ったんだよ馬鹿野郎!!」
「ちょっとはりきりすぎた」
「ちょっとやそっとじゃねぇよ!!」
天井の崩落から逃れるように動けないメアを抱えただひたすらに走る。
すると目の前にはほかの壁とは少し違う色、と言うよりも質感の壁が立ち塞がっていた。
「おいおい、これはヤバイ……生き埋めなんざごめんだ!!」
『爆裂魔法』
魔法による爆破のドゴンという音と共に俺の蹴りが壁に吸い込まれ、壁が砕け散る。
そこには足元にナイフが転がって困惑しているアウルが立っていた。
ここはとりあえず挨拶からかな?
「アウル!!久しぶりだな!!」
「ルアン!!」
俺の久しぶりコールにアウルはとても嬉しそうに返事をしてくれる。
「ルアン、どうしてここがわかったのだ?!」
うーん、勘とたまたまってのがあるがまぁここはこれで間違いはないであろう
「主人公補正ってやつだろうな!!」
これを言って通じるやつなんてこの世界にはいないだろうけどな。
「ルアン!寂しかったのだ!!」
「アウル、俺は少しの間君の事を忘れていたごめんな。だけどこれからは忘れることは無い、これからはみんなで一緒にいよう」
「待ってたのだ王子様」
「ああ、お待たせだねアウル!!」
こうして無事アウルと合流する事が出来た。━先程の廊下は無事ではないが━




