ゴーレム違いですかそうですか
ゴーレムの墓場、そこはもとはただの洞窟だったのだ。それが一人の若者と一体のゴーレムによってこの洞窟は墓場に変わったのだ。
ある日一人の若者が採掘に来ていたところそこに偶然一体のゴーレムが姿を現した。それに若者は驚くがしかし、そのゴーレムには不思議なことに原動力となるココロが無かった。
ココロとはゴーレムのエンジンのようなものであり、それが無ければゴーレムはただの糸の切れた傀儡に成り下がるのだ。
しかも、異様な事に外傷はなく、周りには争いの形跡すら何も無かった。
その日以来学者達の間ではこの名も無き洞窟について議論が行われ一つの仮説へとたどり着いた。
それはゴーレムを作成しているものが意図して心を抜き取りこの洞窟に捨てているのではないか、と。
故にこの洞窟はゴーレムの墓場と呼ばれることとなった。
『この洞窟の名前の由来スゲェな』
『ここは神が壊れたり反逆を起こしたりしたゴーレムを捨てる言わばゴミ箱見たいな場所です』
『ファ?!シファー、いつの間に?!』
『貴方の中にダイブしました、これなら2時間位はこっちにいれますよ♪』
『ほぅ、そんな事が出来るのか……てかファルさん、威嚇しない』
俺の中にシファーが入り込むとファルがぐるるぅ、と喉を鳴らし犬のようにシファーを威嚇する。
『いきなり出てきてルアンさんと仲良く話しているからって威嚇なんてしてませんよ!!』
『思っくそ威嚇してんじゃん!ちょっとは仲良くしてくれよ』
『私は堕天使ですからね!寝てる間に夢で話す事なんて容易いですよ♪』
『私だって暗黒竜ですよ!!』
『ふふん!私は堕天使の中でも一番偉いルシファーなんですよ♪』
『いやお前しか堕天使いないだろ』
『私だって暗黒竜の中で一番強いファフニールですよ!!』
『嫌だからお前らみたいのが何体もいるわけないだろうがよ、いたら困るわ!』
下らない言い争いが始まったが気にせずに━ツッコまないとは言っていない━依頼人の下へとむかった
「あなたが冒険者の方ですね?」
「はい、依頼を見て来ました、ところでココロとはどのような形なのですか?」
「ココロはゴーレムによって形が違います、なのでこちらのゴーレムをご覧下さい。」
「ほおぉぉ……」
言われるがままにゴーレムと示されたものを見るがどう見ても普通の人間にしか見えないほどだった。
髪はこんな所にいるせいか輝きが無かったが、腕、足、胴、全てをとっても人間とほぼ変わらないものだった。
しかし、その中に一つだけ大きな違和感、と言うよりも欠陥があった。
それは人で言う心臓の部分に拳一つ分の穴が空いていた。
「あなたにはこの穴にはまるココロを探し出してほしいのです」
「了解しました」
『ファル、シファー仕事するぞ』
『私の方がルアンさんの事知ってますよーだ!!』
『私はあの人を連れてきたんですよ?あなたより知っているに決まっているでしょうが』
『じゃあルアンさんの驚いた顔とか見たことあるんですか?微笑んでくれてるところとかも』
『それは勿論見てま━━━』
『お前らいい加減にしろ、仕事だ』
『『ごめんなさい』』
素直に従ってくれるのはいいんだが少し言い合いをどうにかしてくれないだろうかねぇ……
~~〜
このクエストをみんなが受けない理由がわかった気がしたわ……
「ぜんっぜんみつからーーーーん!!どこにあるんだココロってやつはー!!」
そう、このような採掘系はなかなか目的のものが見つからないのだ。
それが分かっていれば俺は受けなかっただろうし、それが分かってるからこそ周りのやつは避けてとっていたのだ。
『まぁまぁ落ち着いてルアンさん、冷静でないと見つかるものも見つからないですよ?』
『そうですよ、落ち着きましょう少し悔しいですがファルさんの言う通りです』
『落ち着いてって言われても落ち着いてられるか!!あんだあの依頼人、場所がわからないからツルハシ渡して適当に探してくれだなんて、見つかるわけなかろうて!!』
『あぁ、駄目ですね。完全にご乱心です』
『ですね』
『どうしましょうかねここは最初からルアンさんに関わっていた私が』
『これは放置しておいた方が良いですね』
『誰か……だれ……か………助け……て、ここから…だし……て』
『ファルさん』
『シファーさん』
『『『何か言』ったか?』いました?』
『『『…………はぇ?!』』』
素晴らしい程に息ぴったりと間抜けな声を出す。
『わ………たし…は…………ア……トラ…スおねが………い助けて』
『………あぁ、アトラス助けてやるさ。意思を送り続けてくれそれを辿って助け出してやる』
『あり……が…とう……』
『お礼はまだ要らない助けてられてないからな、だが………もう安心しろ見つけてやる!!』
俺は依頼人に借りたツルハシで慎重にかつ大胆に削り出す。
声もとい意思の聞こえる場所を中心に周りを削りまくる
よし!!見つけたぞ!!
しばらく掘り続けると岩肌が崩れ落ちそこからキラキラと眩しい煌めきが漏れ出す。
『アトラス、安心しろ今出してやる』
壊さないよう慎重にココロを取り出す
『ありがとうございます』
『あぁ、どういたしまして。君、いやアトラスはなんでこんな所に居たんだ?』
『私は神の命令にそむいたらここに捨てられました』
『やはりそういう事か、とりあえず君の体と思わしき物がある所に行こう』
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『違います私の体じゃないです、私の体は短い白い髪でよ……』
『よ?』
『幼児体型と言われてい…ます。』
言葉を一つ一つ言う度にその声が震えていく。
『うん。何故泣きそうになるのに言わなくてよかったんだよ。ごめんね?それとアトラス、君の呼び名はアスでいいかな?』
『え?!』
俺が呼び名を言うとアトラスは驚いた風に返事をする。
『ごめん、嫌だった?』
『いえ、逆です。とても嬉しいですマスター。一生あなたについて行きたいほどです』
『マスター呼びか。まぁいいやではよろしくな、アス』
『よろしくお願いしますマスター』
その無機質ながらも人間味を帯びたその少女は星より綺麗に輝く笑顔を咲かせた。
「すみませんこのクエスト辞退させていただきます 」
「あなたのその手に持っているのは?」
「別のゴーレムのココロでした」
「ではそちらを渡して下さい」
「いえ、このココロの本当の体を見つけるまで預かります」
「渡しなさい」
「嫌です」
「この下等生物如きがナニオいっテいる」
下等生物呼びとかヤベェなこいつ、いや……俺が言えたことじゃないか。
俺も昔は言っていたような気がするんだよなぁ。
「神の名の元に消エ去レエ!!」
おっと、神様のとこのイカレ野郎か、しかも神の使いが人を下等生物扱いとか神様の所はいつからマ●ドマックス化したんだ?
「オイオイ神さんよぉしつけがなってないな!!こんなゴミみたいなやつを育てるとはな!!」




