裏がない
街へと入るとそこにはエメラルドグリーンに彩られた街とそれに似合わぬ暗い顔をした住民達であった。
やっぱり何か厄介事を抱えているな……
「アス、別の場所に………だめだ、あんな顔されちゃ言おうにも言えない…」
そのアスは目をキラキラと輝かせ今にも走り出してしまいそうなほど興味を示している。
「マスター!あそこいこ、いこ?」
「わーったよ、行くぞ」
「マスターありがと」
俺が了承するとアスは可愛らしい笑みを浮かべぼふっという音を立て懐へ抱き着いてくる。
この状態になれてきたことが怖いがまぁこいつら相手にするならいちいち気にしているとこっちの身が持たないだろうからな。
しばらく街を歩いて回っていると一つの天幕が目に入る、そこには[表]と書かれた看板があるだけで他には何も書いていなかった。
「ルアンさん、あれなんて言うかわかりますか?」
「おもて、かな?」
「マスターあれ読めるの?」
「ん?みんな読めないのか?」
疑問に思い仲間たちを見るが情報屋であるイガラシまで首を横に振っていた。
「これは表って書いてある、でも本当の意味は占いだと思う」
「どういう事なの?表って書いてあるんだよね?」
「はいファル君、頭が固いぞ?ここには表しか書いてない、つまり裏が無い」
「あぁ!そういう事か!新しく情報に増やしとこうかな」
「取り敢えず入ってみるか」
中に入ると薄暗い天幕の中に水晶が乗った台と入口の反対側に目もと以外を隠す黒い布のようなものを被った人が座っていた。
「おやおや、ここの意味がわかって入って来たのかい?」
「そんなら日本人だって話だろ?」
「ふむ、わかってるじゃないか。その通りだよ、なんだいなんだいまさかこんな事で会えるとはね」
日本人、という単語を聞いて占い師はテンションを上げて話しかけてくる。
「ところであんたはどうしてこんなところに入ってきたんだい?」
「仲間がうるさくてな…」
「おっと、そりゃ大変。もしかしてもしかするかい?」
「多分お前の考えてることで当たってるよ」
そのタイミングで後からアスやらファルやらが入ってくる。
「クフっ、やっぱりか」
「はいはい、やっぱりですよ」
その後でファル達は何の事かわからずキョトンとしているだけだった。




