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第一話第二幕


いつまでも学校の悪口を言っていても埒が開かない。

僕は何か西野さんと話せることが無いかと思い、図書館をうろついた。


西野さんは生活感の薄い人だ。

どこか現実に対して信用が出来ないのだ。

部屋は真っ白だし、パジャマは薄い青だし。

そして僕にもそういう所がある。


「UFOを信じる?」

「うーん、いたらいいなとは思うけど」

「UFOがいたとして」

「うん」

「それが僕たちに利益をもたらす可能性は極めて低いと思うんだ」

「なんで?」

「UFOは兵器だから」

「そう言われるとそうなのかも。テレポートができたら、もう地球人のスペースシャトルでは追いつけないもんね」

「そういう話好きなの?」

「うん」

「本当に? なんか仲良くなれそうな気がする」

「四年間一緒のクラスだったはずなんだけどね」

そう。中学から数えて四年間同じクラスだったのは西野さんだけだったのだ。

西野さんもそれを知っているわけで。


「じゃあこういう話は知ってる? もうすぐ日本は滅びるんだよ。何故だと思う?」

「国の借金が膨れ上がって破算するから?」

「それがね、僕もびっくりしたんだけど……もっと直接的に日本を滅ぼそうとしている団体がいるからなんだ」


世界の人口が今の一パーセントになれば、今地球が抱えている問題の殆どは解決する。

そう言ったのは誰だったか。


「実は今、ある国が実験のために滅ぼされようとしている。そして、実証段階に移った時、ターゲットになるのが日本なんだ」

「自然災害と偽って、新型の兵器をテストしているという話は私も聞いたことがある」

「地震を人的に発生させたり、食事に毒を混ぜて売ったりしてるんだ。 またの名を食品添加物というとか」

「ちなみにどこの国?」

「それが会員にならないと分からないんだ。この本の巻末に入会方法が書いてあるんだけど。ほら。年会費が二万円なんだよね。微妙……」

「横田君がそういうことが好きなのって意外だなあ」

「西野さんもね」


僕は荒れていた中学校時代、何度も本の力を借りて、その場をやり過ごしたり、その場と戦ったりした。

そしてできるだけ人の道を外れないように勉学に励み、スポーツをし、大人にいい顔をし、友人と切磋琢磨した。

別に嘘を吐いて生きているわけではない。

そういう現実は面白い。

だけれど、一方で僕は絵空事の面白さにも惹かれていた。

クラス内の噂話でしか盛り上がれないと、なんだか負けたような気持ちになった。


なんのために僕は学校に行き勉強しているのか。

それは内輪で盛り上がるためだけではないはずだ。

この世の中の支配者とリンクするためではないのか。


「まあ、人を殺す方法は、直接的な殺人と戦争だけじゃないって事だよ」

「なんで日本が対象なの?」

「日本のような民族国家は、世界が統一されることを受け入れられないからだ」

「日本人の国民性?」

「そう」

「そっか。私は日本人の国民性なんて全然いいと思わないけどね。差別ばっかりしてるじゃん」

「いいねいいね。そういうことが聞きたかったんだよ」

本心からそう思う。


「その後、統一政府ができる。そして人間は支配者と被支配者に別れる」

「封建制度みたいなもの?」

「自分が王様だと勘違いしている奴隷だから、反乱されることがない。どうも人間には被虐願望みたいなものが生得的にあるらしい」

「……アリストテレスは奴隷制度を肯定していたんだっけ。社会の授業でやってたようなやってないような」

そして、理想の支配者なんていうものは、被支配者の頭の中にしかない。だから、反乱は無くならない。

「ブルービーム計画って言うんだけど、その時僕たちは支配者になれるのかな」


僕は本を読むことで、知識を学びながらそれについて想いを馳せる。

想いを馳せられる本が好きだ。


「そういうのどこで知るの?」

「全部図書館で知った知識だよ。学校のも、近所のもあるけど」

「今度行ってみようかな」


<<ここにもう一回学校の話が挿入される>>


後日、西野さんと図書館に行くことになった。

「最近嵌まってるのはこの辺なんだよ」


超常現象。宗教。スピリチュアル。


究極の絵空事。究極の現実逃避。

でもそれは時に現実を切り裂くナイフとなる。

そう信じたい気持ちが僕をそのコーナーへと導く。


百年に一度しか起こらないこと。それは言い換えれば、人生で一度は起こることだ。


自分の読んでいる本の話を人にするのは恥ずかしかった。

僕は手に汗が滲んでいた。


西野さんは占術の本を手に取った。

「僕も占いに興味があるんだ。一緒に分担して勉強しよう」

西野さんは同意してくれた。

占いは主に六種類に分けられる。

だから三種類ずつに分ける。西野さんに三つ選んでもらうことにした。

その結果、僕は数秘術と手相と風水を勉強することになった。

西野さんは占星術・タロット・夢判断である。


僕はいつもやっている方法ではなく、しっかり読んで理解した。

長い本に対する僕の基本的戦術。

1.超重要な事(=他人に教えたくなる事)は丸写しする。

2.読みながら考えたことはメモを取る。

3.よく分からない文は飛ばす。

4.図の意味は極力理解する。


その本は西野さんに持って帰ってもらった。

三日後にまた会い、勉強した成果を試す事になった。

小さな学校が出来た。


西野さんは相変わらず学校に来なかった。

そろそろ誰も何も言わなくなっており、西野さんはいないものと扱われるようになった。

僕は学校で理性という現実を学び、放課後に人間関係という現実を学び、余った時間で非現実を学ぶのである。

西野さんが学校を休んだ理由が少しずつ分かってきた。


僕は茶葉占いを試すために色々な紅茶を買ってきた。

散らかった心を整理するのに、紅茶の香りはちょうどいい。


僕は西野さんの部屋を見て、白が好きなどと直感で言ったけれど、

その頃よりも、もっともっと細かい観察眼が出来上がっていった。



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