ハーフオークに転生
「ここは……?」
目の前に広がる光景を呆然と見つめた。
ついさっきまで居た公園は消えていた。代わりにあるのは、南米の国にでもありそうな巨木が立ち並ぶ森だった。
「……一体何が起きた?」
あまりに現実離れした現象に思考がパニックを通り越して冷静になる。
そして、ぼくは自分の体を見下ろして更に現実離れした事が自分に起きていることに気付く。
「な、なんだこれ……!?」
まず、手の形が変わっていた。
筋肉がほとんど無くて細かった腕は、強固な分厚い筋肉が覆っていた。病的なまでに白かった肌は、黒人の様に暗い茶色に染まっている。
更に指先に生えている爪は、鋭く尖っていてまるで野生の獣の様だ。
「なんだよ……これ」
呆然と呟きながら自分の体を触っていく。
痩せほそって、肋骨が浮き出ていた胴体は肉厚な腹筋と胸筋によってコーティングされている。
身長も大幅に伸びていて、足下の地面が遠く見えた。
顔は見えないが、触った感じは人間と同じようだ。ただ、口元に生えている犬歯が以上に長く、鋭くなっているのが分かった。
これは、まるで……。
「別の生き物に生まれ変わったみたいだ」
そう呟いた瞬間、目の前に光る何かが出現した。
それは、光る板のような、ホログラムノのウィンドウだった。
そこには、様々な事が書かれていた。
中でも一際目立つのが画面左上に書かれた、『シュンヤ』の文字。
「ぼくの、名前?」
そして、その下には『ステータス』と書かれており、その下には『スキル』、『魔法』、『戦技』と書かれている。
ぼくは、名前のすぐ下にある『ステータス』のアイコンに触れてみた。
すると、表示されていた画面が切り替わった。
~ステータス~
名前:シュンヤ
種族:ハーフオーク(オークと人間の混血種)
性別:雄
所属組織:無し
職業:初級魔法士
特殊状態:魔王因子
~ ~ ~
「まるで、ゲームみたいだ」
表示された画面を見て、ぼくはポツリと呟いた。
だが、これで納得がいった。
どうやら、ぼくはーー。
「別の世界に転生した……」
どういう原理かは、分からない。だが、それしか思い浮かばなかった。
だけど、間違い無さそうだ。
どうやら、皐月を殺した直後にぼくは、異世界(それも、魔法が存在する)にオークと人間のハーフであるハーフオークという生き物として生まれ変わったようだ。
それに最後の魔王因子とはなんだろう?
分からないことが多すぎる。
とりあえずためしに、メニューの『魔法』のアイコンを押してみる。
表示された『魔法』の種類は、
『魔龍爆誕』
この一つだけだった。
たったの一つかぁ、と肩を落とす。
しかたがないのでぼくは、その中の1つの名前を叫んだ。するとーー。
キイイィンという甲高い音ともに巨大な紫色の魔法陣が出現。
その中から黒い炎に包まれた一頭の龍が出現する。
龍は、数秒ほど空を舞った後、静かに消えていった。
「す、すごい……!」
初めて見る、魔法に戦慄が体を駆け抜けた。
たった一つしか使えないが、使える魔法はあれほど派手なものだった。きっとこの世界でも有数の強力な魔法に違いない。
この魔法を自由に使えと思うと興奮が止まらなかった。
だが、喜んでばかりはいられない。
この世界にもっと強力な魔法を使える奴がいないという保証はないり
つまり、まずはーー。
「情報収集だな」
そう思い、ぼくは森の中を散策すべく歩こうとした。その直後。
「きゃああっ!!」
森の奥で女性の声が、それも絶叫と呼べる物が聞こえてきた。
恐る恐る森の奥に進んでみると、そこにはーー。
「なんだ……あれは?」
金色の髪を伸ばして、銀色の鎧を纏った美しい顔立ちの女性が角の生えた悪魔のような風貌の黒髪の女に踏みつけられていた。
更新です。読んでいただければ幸いです。