寝る前に昔話をしましょう - 2つめのお話
「寝る前に昔話をしましょう」の最後で、ママが約束していた3兄弟の話を。
これ単品でも大丈夫です。
ほら、3人ともおいでー。布団入って。
寝る前に、お話? いいよ。何にしようか。
ああ、「3兄弟の話」ね。
うーん、そうだなぁ。
昔々じゃなくて、いつかどこかのお話です。
ある所にあっ君、かー君、さー君という兄弟がいました。
ああ、うん、あんた達と同じ名前だね。
え、あんた達のお話かって? どうかなー。
さて、ある日あっ君、かー君、さー君は、お母さんから大きな蒸しケーキを丸ごと1個貰いました。
3人の顔よりも大きい甘くておいしい蒸しケーキ。レーズンもたっぷり入っています。
そうだね、ふわふわで。
レーズンだけじゃなくて、もっと入っている方がいいの?
じゃあ、マンゴーとかパイナップルとかクランベリーとか。いっぱい入ったねー。
うん、もちろんハチミツも入ってるよ。
さて、お母さんは3人に、
「おつかいに行ってくるからお留守番お願いね」
と言いました。
「ピンポンが鳴っても、出なくていいからね。電話も出なくていいからね。仲良くしててね」
そう言ってお母さんはおつかいに行きました。
「蒸しケーキ、食べたい」
そう言って、かー君が蒸しケーキに手を出したので、あっ君は慌てて言いました。
「3つに分けるから、それからだよ」
でも、あっ君が切った蒸しケーキは、ちょっぴり大きかったり小さかったり。
「オレこっち!」
「えーっ、オレもそれがいい!」
「さーも、さーも、それ~!」
誰が大きいのを取るかで、けんかになってしまいました。
「おやおや、どうしたんだい?」
いきなり窓から声がしました。
3人が振り返ると、大きなカラスが窓からのぞいています。
あー、さー君はカラス嫌いなんだよね。つつかれたら痛いもんね。
大丈夫だよ、このお話は、痛いことはないから。
うん、痛いことはないんだけどね。
さて、窓からのぞいたカラスは、3人と蒸しケーキの載ったお皿を見て、
「ははぁ。大きいのを取りっあいっこしてたんだね」
ふんふん、と頷いて言いました。
「それじゃあ、みんな同じ大きさになるようにしてあげようね。こっちにおよこし」
そう言って、カラスはお皿の上の1番大きなひと切れを、少しちぎりました。
「あっ、そっちの方が大きいよ」
「あれあれ、ホントだ。今度はこっちが大きいねぇ」
そう言ってカラスはちぎった蒸しケーキを食べ、別の大きなひと切れをちぎります。
「あっ、そっちのが小さくなったよ」
「おやおや、ホントだ、今度はこっちが大きいよ」
そう言って、またパクリと食べて別のをちぎります。
ちぎっては食べ、ちぎっては食べして。
そうだよ、カラスがパクパク食べちゃったから、蒸しケーキはもうビー玉みたいに小さくなっちゃったんだよ。
「ほら、これでおんなじ大きさだ。ごちそうさま」
そう言ってカラスは飛んで行ってしまいました。
あっ君、かー君、さー君の前には小さな小さな蒸しケーキが3つだけ。
あれ、すっごく嫌そうだね。
うんうん、そうだね、ケンカしない方が良かったね。
え、何?
お母さんがちゃんと3つに切ってくれれば良かったのに?
あははは、うん、そうだね、ホントそうだよね。
あはは、ごめん、笑いすぎ?
いや、ちょっと意表を突かれたよ……。
ふふっ。
うん、ごめんね、ただあんた達のママで良かったなぁって思っただけ。
はー、一杯笑ったわ。
きっといい夢見れるよ。
え、冒険? うーん、冒険かぁ。するかも?
おやすみ。また明日ね。




