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魔法使いと魔法と
魔法使いの朝は、鳥の鳴き声から始まります。それは朝を告げる朝鳥の鳴き声でした。
朝鳥は誰よりも早く起きます。そして大きな声で、朝になったことをいつも人々に知らせるのです。
その声は世界中のどこにいても聞こえました。それは、大きな木の上に住む魔法使いも例外ではありません。
魔法使いは朝になると、まず一番に魔法を使います。それは、朝になる魔法です。
外は真っ暗闇に包まれています。その空を、人々は夜空と呼びました。夜空には、まだ月や星が浮かんでいます。
魔法使いは呪文を唱えました。朝になれ、と。
すると、月と星が西の空に沈み、太陽が東の空から浮かび上がってきました。そしてあんなにも暗かった空を、明るく染め上げてしまったのです。その空を、人々は朝空と呼びます。
魔法使いにとって、魔法とはカンバスに絵の具を塗ることに似ています。
今日の空は、少し白く塗りました。曇り空です。昨日まで晴れの日が続いたので、雲を多くしました。
夕方になれば、夜になれば、空をまた塗り直すでしょう。
魔法使いの朝は、こうして過ぎて行くのです。