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木の上の魔法使い
大きな大きな木の上に、ひとりの魔法使いが住んでいました。
その木は人々から世界樹とも呼ばれる、世界で一番大きな木です。どんな大きな山もこの大きな木と比べると、とても小さく見えました。
木の上には魔法使い以外、誰も住んでいません。魔法使い以外の人々は、誰も木の上まで登れなかったからです。
だから魔法使いは、いつもひとりぼっちでした。
でも、魔法使いは寂しくありません。魔法使いには、魔法があったからです。
魔法使いの魔法は、人々を喜ばせる魔法でした。
時には、人々を怒らせる魔法でもありました。
時には、哀しませる魔法でもありました。
時には、楽しませる魔法でもありました。
魔法とは人々にとって、とても大切なものなのです。また、世界にとっても大切なものなのです。
魔法使いが魔法を使えば、世界のどこかで誰かが幸せになります。だから魔法使いは寂しくありません。なにせ魔法を使えば、たくさんの幸せが周りにあふれるのだから。
魔法使いは、今日も木の上から世界に向けて魔法を使います。