(2)
「えーっとね~。」
レルマの部屋からまっすぐ行くと、行き止まり。
「ここのレバーを引くと…」
壁から突き出た木のレバーをリオンが引く。
ガコッという鈍い音が響く。
すると、天井から階段が…
「この食堂ね、高さが高いんだ。
だから地下合わせると四階だてになってるんだ。
ローズさんと僕は三階。
レルマさんは一階のに住んでるんだよ。」
ノエルに説明しながら階段を登って行くリオン。
ノエルは無言でリオンの後に続く。
「二階は物置とかにもなってたり。
一階は食堂になっててね、軍人さんがよく来るんだよ。
食堂の奥に厨房、レルマさんの部屋があって…地下に食料とか置いてあるんだ。
四階は屋根裏部屋になってる。
……ここが僕の部屋。」
赤色の扉を通り過ぎ、青色の扉を指す。
「結構狭いんだ。ごめんね?
僕、床で寝るからゆっくり休んで。」
部屋にはベット、本棚、クローゼット、机が置いてあった。
「……」
無言でノエルは頷く。
やはり、人間であるリオンへの警戒心は強いようだ。
それもそのはず、人間の男に犯されたのだから。
吸血鬼は仲間を大切にする意識が高い。
だから吸血鬼の血が入っているローズには特別警戒心を抱かないのだ。
ローズには助けて貰ったからもあり、仲間の血も入っているというのもあり、信頼しているのだろう。
「じゃあゆっくりしててね。
鍵、かけとくからね。」
ベットに横になるノエルに声をかけ、リオンは下へとおりていった。
そして、ノエルは深い眠りについた……
ノエルは夢をみた
それは一週間前のこと
妹と母親と久々に人間の国のそばの野原に
花を摘みにいった
その帰りに
人間の吸血鬼狩にあったのだ
妹と母親とは離れ離れになり
暗い部屋で犯されて
逃げ出したけれど
路地裏でまた犯されて
そしてやっと
救いの手がーーーー
「……ん!…エ…くん…!…ノエルくん!」
「……ん…(嫌な夢を見た)」
ノエルが起きるといい匂いがしていた。
リオンの手にはスープとパン、赤ワインが。
「はい、お腹空いてるでしょ?
あっ!赤ワインに動物の血を混ぜといたってローズさんいってたよ。
血の代わりになるんだよね。」
「……ぁりがと」
小さな声でお礼を言うと、リオンの手からスープ等を受け取った。
「(確かに…お腹減ってるや…)」
スープを一口飲む。
「美味し…」
体の底から温まるような温もりと、トマトの甘い味が口いっぱいに広がる。
「でしょ?
レルマさんの料理は絶品なんだよ♪」
にこにこ笑いながら言うリオン。
ノエルは今度はパンを口にしてみた。
「…ふわふわ…」
弾力があり、もっちりとしたパンだった。
ーーノエルはあっという間にペロリと平らげた。
「美味しかった?」
皿を片付けながら聞くリオン。
「……ん。」
こくっと頷くノエル。
「よかった……
よしっ。もう寝る?」
「……ん」
またこくっと頷くノエル。
「わかった…じゃあお休み。」
それだけ言うと、部屋から出て下へ降りて行くリオン。
「……」
ノエルはふっとめをとじ、また深い眠りについていった…ー