出会い
「いらっしゃいませー!」
ここは王国アリクストの王都アリスト。
王都アリストNo.1の食堂『薔薇の茨』働くのがリオン=リミア。
明るい茶髪にキラキラと輝く不思議な碧色の瞳、黒色のシャツに白の半ズボンという店員服を着ていた。
髪が長ければボーイッシュな女の子にも見えたであろう容姿だ。
「あっ、ローズさん!」
リオンが裏口へいくと、パーマがかかった赤髪にくっきりとした桃色の瞳、赤のワニ皮ジャケットに赤のぴしっとしたズボンの美女が立っていた。
その横にはリオンの見慣れない子が…
「ローズさん、その子…」
「ああ、この子かい?
この子はそこの裏路地で拾ったんだ。
名前はノエル。……吸血鬼だよ。」
最後の方は声を落として言ったローズ。
それもそのはず、アリクストでは吸血鬼狩というものが人間の間で流行っていたからだ。
吸血鬼狩とは名前の通り吸血鬼を捕らえることだ。
そして、性欲処理機として使われる。
最悪最低の人間の本性が行っているものだ。
「レルマさんは…きっと住まわせてくれると思うけどな…」
レルマさんとはこの薔薇の茨の女主人である。
厳しい人だが、優しい面もあるので皆の人気者だ。
「レルマさんにはあたしが話をつけとくよ。
それより、ノエルを風呂に入れてやんな。」
グイとリオンの方にノエルを押すローズ。
スッポリとタオルを頭から被っていて顔もよく見えない。
「はーい。」
リオンはノエルの手を引き風呂場へと連れて行った。
「多分湯が残ってるから、使ってね。
服は外においとくよ~。」
リオンは風呂場へと入っていくノエルに声をかけた。
「リオン、ほら、ノエルの服だよ。」
リオンはローズに渡された服を風呂場のそばに置くと、また仕事へと戻っていたのだった。
ノエル視点
あったかい……
心の底から温まる…感じかな…
吸血鬼狩で捕まってヤられて……
路地裏に残されたままだった俺をローズさんが拾ってくれた……
ローズさん半吸血鬼か…
……家に、帰りたいけど……
無理、なんだよな……
第三者視点
「ふぅ…」
リオンは買った食材を運んでいた。
「……」
「あっ、ノエルくん…」
風呂から出てくるとノエルの顔がやっとはっきり見えた。
肩ぐらいまである漆黒の髪に血のように紅い瞳、灰色のティーシャツに黒い半ズボン。
綺麗、という言葉が似合うがどことなく格好良さもある容姿だ。
「ノエルくん、レルマさんのとこ行かなきゃいけないから…」
行こ?と首を傾げたリオン。
こく…とノエルは頷いた。
「レルマさーん。」
リオンが辿り着いたのは檸檬色の扉の前。
「入りな!」
大きいが聞くには心地よい声がした。
「失礼しまーす。」
レルマはまさに女主人、という感じの女性であった。
ボワボワになった紺色の髪をおおざっぱに後ろで縛っていて、キリッとした山吹色の瞳、黒と白の丈が長いワンピースを着ていた。
かなりおおざっぱという印象があるが、美人だった面影が残っている。
「ローズ嬢から聞いたよ!!
最初は黒猫!次は吸血鬼だって!?
全く!」
あっちへこっちへ動き回りながら言うレルマ。
「す、住んでもいいよね…?」
「いいけど、その代わり自分の食費は自分で稼ぐんだね!
働くのが無理だったら出てきな!
部屋は無いからリオンと一緒だよ!
分かったね!」
(よかった…)
ぼそりと心の中で呟くノエル。
「はーっい」
元気よく返事をするリオン。
こうして二人の物語が始まったのである。
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