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ゴトゴトゴト...
荒っぽい作りの馬車が揺れる音とその振動で僕は目を覚ました。
_ここはいったい何処なんだろう?
僕は確か自分の住んでいた森で散歩をしていたはずなのに・・・
そう考えつつ僕は自分の置かれている状況を少しでも把握するために
薄暗い馬車の中を見渡した。
中には人が二人、あと犬が一匹に大きな蛇が一匹。
みんなぐっすり寝ている。
・・・まったくもって関連性が見えてこない。
それに僕はオオカミだ、犬には少なからず共通するものがあるかもしれないけど、
今、僕は少年の姿に変化しているし・・・
・・・やっぱりわからない
なんで僕はここに居るんだろう?
なんで僕以外みんな寝ているんだろう?
とりあえず隣の人間のにおいを嗅いでみる。
すると、まったりとまどろむ様な独特のにおいがした、これはきっと睡眠薬だ!
僕は自分の体を確認してみた。すると脇腹あたりに注射針の跡があった。
きっとこれで眠らされたに違いない。
僕が平気なのはきっと森で散歩をしているときに人間の子供に化けていたからだろう。
麻酔薬の量が少なかったのだ。
僕はオオカミといっても親類に九尾の狐がいたから、化けることならお手の物。
あと、長生きだし、知能も発達してるから人の言葉も理解できる。
自分で言うのもなんだけど、たぶん普通のオオカミより化け物じみてると思う。
あと、僕が子供に化けていたのは、ただ単に木が生い茂る森の中を進みやすいから。
大きなオオカミのままだと下の方の小枝や草が邪魔だし、
木の上を歩こうにも人間に見られたら、大騒ぎされる。
まったく、少しぐらいオオカミが木の上歩けるぐらい進化しても驚かないでほしい。
今や、ドラゴンが空を飛び交っている時代なのに・・・
ゴトゴトゴト・・・ガガガッ!!!!
規則正しく揺れていた馬車が突然激しく揺れた
この馬車から脱出する機会を窺っていた僕はしめた!と思って馬車から飛び出そうとしていた。
その時、馬車の後ろがバキバキと音を立てて崩れ落ちた。
外が見える!・・・誰かいる?人かな?
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そこには一人の少年と大きく、不気味な竜がいました。
ワニのような大きな口に全身に生えた青黒い羽毛、大きな翼に
巨大な鉤爪、瞳は羽毛に覆い隠され、表情がわからないので余計に不気味さを増しています。
少年は口を開きました
「今、助けるからね。少しここで待ってて。」
少年は馬車の前の方へ歩いて行きました。