みんな悪い人…そうじゃないでしょ?
『どんな洋服が好みなの??』
神様は、篠塚くんだった。
ふぅー、セーフ。
『私は白黒系かな。あんまり派手なのは嫌い』
『そうなんだ。じゃあ今日は頑張って由実ちゃんに似合いそうな服を探してみる!笑』
『分かった(笑)』
いつもは気に入った棚しか見てないことに気付かされた。
このお店は今まで5回くらいは来ているけど、
今までまったく見たことの無かったお洋服がたくさんあった。
自分1人じゃなくて他の人と一緒だとそういうところに目がいく。
お店自体はそんなに広くないけど、店内にたくさんある鏡のおかげでなんだか広く見えた。
『私に似合いそうな服あった??』
とりあえず聞いてみる。私が見回したところ、
どれも〝あっあれかわいいな〟程度のものしか無かった。
うーん、篠塚くんは何を選ぶかな。
『おうっ!結構自信あるよ(笑)』
そうなんだぁ…。どんな服なんだろう。
篠塚くんは店の端の方へと足を進めた。そんなところまで見ていたんだ。
そこにはたくさんのTシャツがが並べてあったけれど、
やっぱりパッと見では良いものはなかった。
『これなんかどうかな?由実ちゃんにすごく似合うと思うんだけど』
『うわぁ…かわいい…』
思わず言ってしまった。篠塚くんといると何だか〝思わず〟っていうのが多い。
『気に入ってくれた??』
『うん!将来はお洋服関係の仕事に就いたら?(笑)』
『えwww 無理だよそんなの(笑)』
『どうしてー?? 人に似合いそうな服を選ぶの得意じゃん!』
『それは由実ちゃんだから!!』
…うよよ?
『好きな人の趣味って結構気になるじゃん。
話したりいつもの仕草だったりとかから、
こんな服が好きなんじゃないかなと思ってこれにしましたっ(笑)』
『そうだったんだぁ。でもでもやっぱりセンスあるって(笑)』
『そうかなぁ…(笑)』
今度は私が、って言おうかと思ったけど、
男物があんまり無い店だったからまた今度にしようって決めた。
それにしても…
『ね、あのさ、もう出ない?』
『え?なんで?』
『なんか、篠塚くんのこと見て笑ってる…』
『あぁ…。なんでだろ…』
『私…かなぁ…』
また…私のせいで篠塚くんが…。
『大丈夫。由実ちゃんのことを言ってるんじゃないよ』
『なんで分かるの??』
『だって俺と目を合わせた瞬間に笑ったんだもん(笑)
由実ちゃんのことを言ってるんだったら、
普通は俺じゃなくて由実ちゃんを見るでしょ?』
『…そうだけど…でも…』
『大丈夫!…ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね』
『うん。行ってらしゃい』
その後ろ姿を目で追う。
『あの』
ごめんね、こんな体で…。私…。
『あの!』
『は、はい…?あの、私…ですか?』
『そうですよ(笑)こなことを言うのもおかしいとは思うんですが…』
…やっぱり…
『あんまり街中で〝好きだ〟とかなんとかは言わないほうがいいですよ(笑)』
『え?』
『彼氏さんのことですよ。すっごく目立ってますから(笑)』
なんだ…そういう事かぁ…。
『わかりました。すみません、ありがとうございます』
『いえいえ。ではこれで』
『はいっ』
私のことじゃなかったんだ。
篠塚くん、大正解。
『大丈夫?』
『うん!私のことじゃなかった(笑)』
『え?話しかけてきたの??』
『うん。〝あんまり街中で好きだって言わない方がいいですよ〟って』
『えっ…それって俺のこと?笑』
『うん(笑)』
『まじか…(笑)気をつけます…笑』
あー楽しい(笑)
なんか、どんなことでも楽しめてしまうのはなんでだろう。
恋だから?
なんか、それこそ本当のデートが出来てる気がする。
しかも、お洋服を買ってくれた。
『欲しいとは言ってないし…』
『でも欲しいんでしょ?』
『…うん。笑』
『じゃあいいじゃん(笑)はい』
『ありがとう!お金、大丈夫なの?』
『…使い道が無くて困ってたからさ。ただ溜まっていくだけだったから』
『…ありがとう。こんな私のために…』
そうあたしが言うと、篠塚くんはパッと私の前に出た。
いきなりだったので、急ブレーキになってしまった。〝ガコッ〟と車椅子が揺れる。
『体の障害とか関係無い。俺が好きなのは由美ちゃんで、
好きな人のためにお金を使ってるだけじゃん?』
『ちょっと!笑』
『街中?そんなの関係ないよ(笑)俺らは俺らの道を進めばいい。
見ず知らずの人に邪魔をされたくないっ…みたいな感じかな』
まっすぐと私の目を見つめる。
その目が、嘘を言っていないと伝えてくれた。
『じゃあ私も、まわりを気にしない。いつでもどこでも篠塚くんの近くにいたい』
『一緒だね。…ところでさ、篠塚くん、って呼ぶのなんか嫌だな。
俺は由美ちゃんって呼んでるのに』
『…海斗くん』
『…もうさ、いっそのこと呼び捨てにしない?笑』
『…海斗…。うあぁ恥ずかしいっ』
思わず手で顔を隠す。きっと今頃私の顔は真っ赤になってる。すぐに顔に出るって
言われるし…。
海斗は私の手を取り、レバーを握らせた。
『次に行こうか、由美』
『…うんっ』
海斗も、顔に出やすいようだ。
こんばんは。高橋拓郎です。
連続での投稿となりました。
あんな状況で由実を置いていく海斗もどうかと思いますが、
それでも海斗はすべて分かっていたわけです。
もしかしてトイレに行ったのもわざとだったとか?!笑
真相は、わかりません。
でも、世の中には悪い人だけじゃない。
気にせずに、声をかけてくれる人もいる。
そう、由実が気付けた瞬間でもありました。
なにせ、外に出るといったら学校と図書館くらいだったのですから。
次回、またすぐに載せます。
色んな物語を載せていきたいので(笑)
では。