もどかしい、この気持ち。
篠塚くんに会ってからしばらく経ったある日。
私はあれから風邪を引いてしまっていたので、外に出ていなかった。
だから気分転換に外の空気を吸いたくなったのだ。
『んーっ』
力いっぱい伸びをする。
清々しい朝だなぁ。
3月は本当に過ごしやすい。
暑くもなく、寒くもなく。
じめじめしてなくて、ただ大陽が照り付ける。
気分は良い。
図書館や学校へは家を出て右に進むけど、
今日は左にレバーを倒してみた。
私の家は風景が変わる丁度境目にある。
右側は最近開発がされている、ちょっぴり近代的な街。
左側は昔のままの風景が残されてる、いわゆる田舎。
山あり谷あり…あ、谷はないか。
道端にある桜の木、今年もいっぱい花を咲かせてくれるかな。
『あ、おばちゃんこんにちは』
『おやおや由実ちゃんかい?また久しぶりねぇ。お出かけ??』
『うん。ちょと散歩しようと思って。じゃあまたね☆』
『気をつけておくれ』
おばちゃんは私がちっちゃい時から知っている人だ。
元々は私のお母さんの世話ををしていたらしい。
おばちゃんとあいさつをした後、ある丘に行こうと角を曲がった。
すこし大きめの道に出る。片側2車線。車がいっぱい走っている。
今から行こうとしている丘からは、この街全体が見渡せる。
今までもたまに気分転換をしに行っていた。
…あ、でも最近は半年くらい行ってないかなぁ…
何か風景変わっちゃってるかな…。
と考え事をする。
ふと顔を上げると、反対側の歩道に篠塚くんが歩いているのが見えた。
いつもの笑顔。
でも、その隣には…
『…やっぱり…ね…』
私なんかと比較にならないくらい可愛い子がいた。
長い髪をツインテールにしていて、赤色のシュシュがとても似合っている。
彼女かぁ…。
私なんかなぁ…。
足が無いってだけなのに…。
私はさっさとその場を立ち去った。
目尻からこぼれ落ちるものが、私の気持ちを確実に表していた。
幸い、篠塚くんには見つからずに家まで帰ることができた。
玄関をくぐり、お母さんに〝ただいま〟とだけ言って自分の部屋に閉じこもった。
車椅子から転がるように降りて、床に突っ伏す。
『…っく…ぅっ…ひっ…く…』
涙を押さえ込もうと口を押さえても、どうしても息が漏れてしまう。
人生で初めての恋が始まったと思ったのに。
今、この時、終わった。
『そうだ。本読もう』
こういう時こそ、小説を読むのが一番だよね。
でも私が持っている本は全部何回も読んでしまっているもので、
ページを開いてもその内容が頭に元々入っている。
だからなんだかつまらなかった。
それに、いつも頭から離れないのが篠塚くんのあの笑顔。
それをいつの間にか振り切ろうとしている自分がいて、さらに驚いた。
あんなに憧れていた恋によって、こんなに胸が苦しくなるなんて。
…なんだか色んな意味でまだまだ勉強不足なんだな。
そうだ、図書館行こう。
私は一度ベッドによじ登ってから車椅子に座った。
『ちょっと図書館行ってくるね』
『あらそうなの。気をつけて』
『うん。行ってきます』
こんにちは。高橋拓郎です。
女の子=由美ちゃん
男の子=篠塚くん
という設定です。
そして、突如現れた少女。
彼女はいったい…。
まだまだ寒い季節です。
今日も、最低気温が0度と凍えるような寒さ。
皆様、インフルエンザや風邪にご注意を。