それでも、良いところはたくさんある。
『あの…いつもここに来てるんですか??』
『はい。週に3回は来てますよ(笑)』
『じゃあ、私のことも…?』
『もちろん。目立ちますからね、やっぱり』
少し腹立たしくなったのは気のせいかな。
こんな優しそうな人でも、やっぱり足が無いのは嫌なのかな…。
心のどこかで馬鹿にしてるのかも…。
と、どうしても悪い方向へと考えが向かってしまう。
ネガティブシンキングなのも、生まれつきだ。
『でも、お陰様で見つけやすかったですよ』
見つけやすい…?。
そっか…。悪いことだけじゃなかったんだな…。多分…。
ん、でも1つだけ疑問が残った。
『どうして見つけようとしたんですか??』
『そんなのは当たり前じゃないですか。困っていたらいつでも助けてあげようと思って』
『…ありがとうございます』
あ、この人は本当に優しい人なんだなと思った。
この人なら、あたしも気遣うことなく楽しめるだろうなぁ…。
それこそ、理想のデートとかも…。
『あ、いやだいやだ』
『どうしたんですか??』
『あっ…な、なんでもないです!』
思わず口にしてしまう。
私にこんなに優しくしてくれる男の人なんて、今まで一人もいなかった。
だから、ついそんなことを考えてしまう。
『あの』
『はい?』
…ふう。落ち着け、私。
『で、電…』
『でん?』
あー恥ずかしっ!しかも距離ちかっ!!
本を渡してもらうために近付いたのが裏目に出たなぁ…。
ふぅーー…。
『電話番号…教えてもらえませんか…?』
あぁ…全部言えた…あとはどうにでもなって…(笑)
緊張し過ぎて手が…というよりは全身が震えているのがよく分かった。
『いいですよ。いつでも電話ください』
メモに電話番号を書き留め、私に渡してくれた。
やったーーー!!
と、心の中で、叫ぶ。
だって声に出したら大変だもん(笑)
あたしは足が無いっていうだけでそもそも友達とかがいない。
みんなあたしを軽蔑してる。
学校なんて最悪。
先生でさえもがあたしと会話するのを避けている。
でも今目の前にいる男の子は、本当に普通に話をしてくれた。
本当に嬉しい。
普段友達がいない私は、休みの日は本当に嫌いだ。
することもなくただダラダラと時が流れるのを待つだけ。
だから、唯一友達になれそうな彼との繋がりが欲しかった。
『ありがとう!』
『いえいえ(笑) 家、近いんですか??』
『はいっ。あ、でも段差とか多いから大変』
実際、ここからは歩くと3分もかからないと思う。
ただ、私だと10分もかかる。
この車椅子は安全のためとかなんとかでスピード出ないし、
段差はどんなに小さくても一度止まらないといけない。
…もー大変。
本を棚に戻す。
『じゃあ、私はそろそろ帰ります。今日は助かりました』
『いえいえ。あっ、なんなら送っていきますよ!家に帰っても暇なので』
えっ、と口を動かしてしまった。
どうしよう…。
でも、なぜかもっとこの人といたい…ような気がしなくもないような…。
うーん…なんでだろう。
それでも、なんだかんだで答えは決まっていた。
『じゃあ、お願いします』
こんちには。高橋拓郎です。
ちょっぴり、頑張りましたね。彼女。
今まで他人と話なんて怖くてあまりできなかった彼女が、
ここまで素直に話をすることができるだけですごいのですが、
さらに電話番号まで聞くことができました。
彼女なりに、頑張ったのでしょう。
少年は、彼女に一目惚れしていたのかもしれません(笑)
積極的ではないにしろ、ずっと彼女のことしか見ていなかったのですから。
これからどのような展開になるのか、
お楽しみに。
では。