障害は、乗り越えられる。
『忘れ物は無い?』
『うん。大丈夫だよ』
『…でおネクタイ曲がってるじゃん(笑)』
『嘘(笑)さっき引っ張っちゃったからかな』
『直してあげるからこっちに寄って?』
『はい』
ワイシャツのボタンにネクタイを合わせ、形を整える。
『出来上がりっ☆今日も一日頑張っていきましょう♪』
ガッツポーズをする。海斗も同じようにポーズをとった。
『おっす!笑 ちゃんと昼ご飯食べてね?』
『分かってますっ』
『無理はしないように』
『はいはい』
『あとそれから…』
『行ってこーいっ(笑)』
『…行ってきます(笑)』
本当なら玄関の外に出て見えなくなるまで手を振っていたいけど、
外に出るのも出てから戻るのも大変。
だから毎日ここでお別れ。
今まで何回ここから海斗を見送ったんだろ?
結婚して…就職して…それから3年経ったのか!
てことは500回くらいかな?笑
こんな私でもちゃんと家事をこなしてる。
最初は洗濯物を干すのだってもう大変だった。
家の中でやった方が良いんじゃないかって思ったりしてて…。
でも今はもう全然大丈夫。
廊下を進んでキッチンに行く。
冷蔵庫の扉には、私達が初めてデートに行った時に撮った写真が飾られてる。
喫茶店で撮った写真。
初めてキスしたところ。
…。
『わーっ(笑)』
急に恥ずかしくなって、手で顔を覆う。
だって喫茶店でキスなんて…よくやったなぁ…(笑)
それだけ海斗が大好きだったんだなぁ。
『いやいや今も大好きだよ(笑)』
もちろん(笑)
『…大好きだよ、海斗』
再確認。
海斗が帰ってきたら真っ先に言おっと。
〝おかえりなさいっ! ね、私、海斗のこと大好きっ!〟
なーんて。笑
そうしたら海斗なんて言うかなぁ(笑)
絶対やってやる(笑)
俺たちの部屋は、2人暮らしには十分過ぎるくらい広い。
〝身体的障害〟というのは確かに普通の人との距離を遠ざける。
それも様々な方法で。
障害を抱えている人を支えることができる人、というのもこの世界には少ない。
でも、身体的な障害を抱えてしまっている人は、心が温かい。
普段あんまり話す機会が無いからなのか、俺には全然分からないけど…。
でも、由美を見ているとそう思う。
最近通うようになった〝障害者サークル〟の皆さんも、本当に優しい人ばかりだ。
由美はまだ25。
これから大変になってくることも、きっと沢山あるだろう。
俺は由美を守らないとな。
精一杯、一生、由美を守る。
『大好きだよ、由美。』
今つぶやいても意味ないけど、なんだか言いたくなった。
ホームで同じく電車を待ってる人に横目で見られてる気がする。
でも、気にしない。
いつだったか言ったから。
〝俺らは俺らの道を進めばいい〟って。
駅に電車が入ってきた。
徐々に速度を落とす。
今日も1日が始まった。
電車のドアが開く。
今日も頑張ろう!笑
そう心の中で言って、足を踏み出した。
-本物か、偽りか。 END-
こんばんは。高橋拓郎です。
今回で、本物か、偽りか。
完結となりました。
ここまで読んでくださった方々、
ありがとうございます。
お陰様で、由実たちも幸せになることができました(笑)
そして、また次のストーリーへと変わっていきます。
この話の続き(第2部)を書くかもしれません。
その時は…くるかはわかりませんがwww
では。