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初めての。

『すっごく良かったね♪』



帰りに寄った喫茶店でアイスカフォレを飲みながら話しかける。


店内は木をふんだんに使った、レトロな雰囲気がある。


あまり広くなく、7つあるテーブルのうち5つにはお客さんがいた。


カップルだったり、ダンディーな男の人だったり、勉強をしている女の人だったり。


不思議なのは、どんなに人が来てもその人たちを帰そうとしたりしないところ。


普通、あの女の人とかには帰ってもらって、新しいお客さんに入ってもらった方が絶対儲かる。


でも、このお店の人はそれをしない。


だから私達は時間を忘れて話に夢中になることができた。


そういう意味ではものすごく良いお店だ。


『うん。ストーリーも、曲もすごく良かった!』

『ね!楽しかったなぁ☆また今度、映画見に行こうね!』

『そうだね。今日のお願いはまだあるのかな?』


もう大分日も暮れてきた。道路を歩く人の影も、もう大分のびてきている。


『あと1つだけ。一番、やってみたいこと』

『なにそれ~(笑)』

『…ふぅ』

『ん?』



…言うぞっ。



『キス…したいな…』

『えっ…』


首をカクンっと折り、下を向く。


こんなことを言っておきながら海斗の目を直視なんて到底できない。


それはきっとたった5秒くらいだったと思う。


でも、ファーストキスの申し込みをした後。


少なくとも1分は固まっていたはず。きっとそうだ。


そんな時間の止まった世界から私を連れ戻したのは、海斗のこの1言だった。


『…じゃあこっちに来て』


閉じていた目を開ける。


海斗は私をテーブルを挟んで反対側に移動させた。


どうして?


と聞こうと思ったけど、すぐに何故か分かった。


ここなら、他の人からも見えない。


店のはじっこ。


『…いい?』


海斗の問い掛けに、うつむいたまま頷く。


まわりの音が一気に消える。


ゆっくり、ゆっくりと海斗が近付く。


その間をふさぐものは、何もない。


心臓がバクバクいってる。


無意識だけど、いつもよりまばたきが多くなってる。




キスってどうやるんだっけ…。


…あっ…目、閉じればいいんだ。




メヲ閉じると、より一層心臓の音が強くなった気がする。


とにかく、これ以上にないってくらいの緊張だ。


あと5センチ…3センチ…1セン…


『(ん…)』


柔らかな海斗の唇が、触れた。


何故か唇に力が入る。


『(これが…キス…なんだ…)』


優しくて、なんだかほんわかしてくる。


どれくらいの長さだったのか、もう全然分からなかった。


海斗くんの胸元に手を当て、またゆっくりと離れる。


もっともっとしていたかったけど、店員さんとか他の人に見られたら大変だから止めないと。


『…ありがと』

『ううん。なんか俺も緊張した(笑)』

『なんで?笑』

『こんなところだし…初めてだし』

『嘘?!海斗も初めてなの?!』

『俺、誰かと付き合うのは由美が初めてだよ?笑』

『…知らなかったぁ…』

『でもさ、お互いに初めてって良いね』

『確かに』

『これからもよろしくね、由美』

『こちらこそよろしく、海斗』


目を見つめたまま言う。

それがなんだか可笑しくて、2人して吹き出してしまった。



これからも、幸せな日が続きますように。



こんにちは。

終わりのようで、終わりではないです。


あともう少しですね!


まさかの海斗も初めてだったというようにしました。

お互い背伸びしなくて良い。

すごく良いことだと思います。



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