大切なもの。それが、ない。
本、というか小説は唯一心を落ち着かせることができるもの。
最近は恋愛小説をよく読むようになった。
やっぱり普通の女の子みたいに恋をしてみたいと思うし、
できればデートとかもしてみたい。
普通のデート。
駅で待ち合わせをして電車に乗り、ちょっと遠くへお出かけ。
遊園地で遊んだり、ショッピングセンターでお洋服を見たり、映画を見たり。
とにかく2人きりで出掛けたい。
でも、あたしにはそれが出来ない。
電車に乗っていても、
洋服を見ていても、
映画を見ていても、
必ず誰かの目線が私目掛けて飛んでくる。
ましてや遊園地なんか行ってもたくさんある段差に苦労するだけの場所だ。
あたしには、両足が無い。
生れつきなのだ。
どこにいても、何をするのも、誰かの手を借りなきゃいけない。
でも他人にいつも迷惑をかけてしまうのが本当に嫌だ。
そんな矛盾がいつも私には付きまとっている。
なぜあたしにはあるべきものがないのか。
どうしてあたしなのか。
こんなあたしは必要とされているのかなぁ。
『あっ…』
またやっちゃった…
大好きな図書館でも、本を落としちゃうと大変。
自分では拾えない。
電動車椅子を下りることもできないし、大体一度下りたら乗れない。
『どうしたんですか??』
声をかけてきたのは、多分同じくらいの歳の男の子だ。
ビシっと制服を着ているような子でも、チェーンを付けてだらだら歩いているような子でもない。
…まぁつまりはごく普通の男の子だ。
あ、でもかっこいい。
結構、あたしのタイプかな。
人目見ただけで、その人の性格を見分けるのがあたしの特技。
といってもここ何ヶ月で見つけたことなんだけどね(笑)
『あの…本、拾ってもらえませんか??』
自分の足元…ではなく、車輪の脇を指差す。
なんだか悔しい。
『大変ですね…何かと』
本を差し出しながら男の子が言う。
ありがとう、と言ってから返事をする。
『本は大好きなんですけど…こういうことがあると泣きたくなってきちゃうんです』
『そんな…。大丈夫ですよ。この図書館は良い人達であふれてますから』
そんな図書館あるの?笑
そう言いたかったけど、その男の子の笑顔を見てたらそんな質問は消えていった。
なんだか本当に〝図書館〟という場所を好きになれそうな気がした。
…なんでだろう。
どうも、高橋拓郎です。
今回が初投稿のこの作品。
今回は、2人の出会いまでを描きました。
図書館というのは、素晴らしい場所です。
たくさんの人の中にあるたくさんの世界が集まった場所。
その物語を読むだけで、その世界に入れる。
そんな世界での出会いです。
彼女(まだ名前が出ていないので)は、もうご存知の通り
両足が無い、という障害を抱えています。
今まで、色んな人から冷たい視線を突きつけられてきた彼女。
そんな彼女に、優しく声をかける。少年。
彼女にしても、何か感じるものがあったのでしょう。
次第に心を開いていきます。
詳しくはまた次回。
早いうちに掲載できるよう、頑張ります。