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第九節

 さて、これからの狩りに向けて考えなければなるまい。

魚が食べられるようになって一安心だが、

これから、それだけと言うのも厳しいだろう。

下手をすれば、川の魚を取り尽くすことになってしまう。

先の事を考えても、それだけは避けたい。

食料として、他の動物も視野に入れなければならないだろう。

はたして、どういったものが使えるだろうか?

動物に向かって漠然と石を投げるだけでは、あまりに原始的過ぎる。

それにある程度の重さの石を投げてみると、相当の負荷を感じる。

これでは、いずれ肩を壊しそうだ……

だが、これと言った材料が無い今は洒落た物が作れないのが現実だ。

何しろ、自然の物から作りださなければならない。

かなり、レトロな武器に頼らざるを得ないだろう。

今は、少しでも多くの材料を集めるのが最善に違いない。



 とりあえず紐やロープは必要だろう。

植物の蔓は、前に見つけておいた。

それが材料になるか実験してみる必要がある。

私は、その場所に向かった。


 蔓を適当に引っ張ってみると、なかなか丈夫だ。

これを解したら細い糸のようになるだろうか?

ある程度集めると、洞窟に持ち帰ってみた。


 慎重に解していくと、かなり丈夫な繊維になった。

手で引っ張っても簡単に切れる事は無い。

これは、中々良さそうだ……


 次に、川原で見つけておいた艶のある平たい石を持ってくる。

形が手頃で適度な薄さ。そして割れが無いツルツルとした石。

こういうサイズを見つけるのは意外に苦労するのだ。

薪を拾うときに見つけておいた手頃な木の棒に、石を紐で何重にも縛りつけた。

かなり不恰好ではあるが、石斧の完成だ。

原始人的な雰囲気が何とも言えないが……

まぁ、即席にしては上等だろう。


 完成した石斧と木の槍を持って川原へと向かった。

先日に目を付けておいた大きな岩の前で座り込む。

さて、地味な作業になるな……

相当にザラついた岩の表面に、石斧を擦り付けて行く。

辺りには異様な音が響き続けていた。

汗だくになりながら、約二時間の間ひたすらに擦り付けた。

石は徐々に削られて、そこに刃が立って来る。

最後は川の水で濡らしながら仕上げを行った。

決して鋭い刃では無いが、斧としてはこれで十分だろう。

私はその場に崩れるように座り込んだ。

あまり量を食べていない状況で、この作業はハード過ぎる。

さすがに疲れた……

喉に渇きを覚えたので、木の槍を持ち水辺へと向かう。

水を手ですくって、ほんの少しだけ口に含む。

今の所、川の水を飲んで身体に悪い症状は出ていない。

この水は普通に飲めそうだと確信に近づいているものの、

まだ必要以上の量を摂取しないように気をつけた。

「そこだっ!」

水面に向かい、木の槍が飛ぶ。

着水した槍は、そのまま倒れずに左右に妙な動きを続けている。

靴と靴下を置いて川の中に入り、フワフワしている槍を手にした。

一気に槍を地中深く突き刺してから引き上げれば、そこには魚が深く刺さっていた。

うん……これは、なかなかのサイズだ。

この手の魚取りで、目に見えるチャンスはなかなか訪れないものだ。

逃げ場の無い岩場の間で、魚は完全に油断していたようだ。

その岩の影にも助けられ、水の中が良く見えた。

今日はかなりラッキーと言って良いだろう。

ツールナイフで魚をさばき、内蔵を処理しながら呟く。

「今日は、良い夕食が出来そうだ……」

荷物をまとめて、私は早急に洞窟に戻った。

ひとまず、製作した斧の実験だけはしておこう。

太目の薪に斧を振り下ろすと

刃がストンと木に食い込んだ。斧の刃先に木をつけたまま地面に叩き付けると

薪は綺麗に割れた。

うん、これなら何とか使えそうだ……

石を木に縛ってあるだけなので、重量が片側に寄ってしまい

バランスは良いとは言えないが

癖さえ判れば十分使える範囲だ。

これから宜しく頼むぞ……

そんな言葉を掛けながら、不恰好な石斧を撫でた。


 今回は丈夫な紐が手に入った。

いずれこの紐を利用して他にも実験したいが、今日はもう気力が無い。

さっさと食べて寝る準備をしよう。













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