第二十三節
狼と鹿の皮を干しておいたら、なんか良い感じになってきた。
頭の革がそれと判るような仕様は、別に私の趣味ではない。
ただ単に、革を切断するのが勿体無かっただけだ……
だが、これはとても良さそうだ。
全長3メートル近い毛皮が1枚と、
2メートル弱の毛皮が3枚。
これは十分に布団の代わりになる。
とても暖かそうだ。
まぁ、毛皮としては完成度が低いのは確かだ。
もっと念入りに綺麗にした方が良いのは判るし、
もっと乾燥させた方が良いに決まっている。
なめしたりすれば、もっと良くなるだろう。
しかし、そこまで追求する気も無い。
そして、狼3頭分の独特な臭いは、この程度の洗浄で落ちるとは思えない。
これは、かなりの効果を発揮するだろう。
狼は他の動物にとっても脅威であり、恐怖の対象だ。
ここに狼が住んでいると勘違いしてくれれば、
相当に防衛の予防線になるはずだ。
今までより、少し安心して眠れそうな気がする。
さっそく毛皮の布団を敷いて横になってみる。
おぉ、あったけ~……
これは、凄い……
さすが毛皮だけの事はある。
枯葉とは保温性が桁外れで、夜中に寝呆けていたとしても全く死ぬ気がしない。
「お前も、おいで」
臭いに嫌がるかも? と思っていたが、意外にも喜んで中に入ってきた。
猫で、さらに倍……あったけ~……
これまで、あまり睡眠が取れていなかった私は
いつしか深い眠りへと落ちていった。
何やら光が気になり、目を開けると
あまりの眩しさに、すぐに閉じてしまった。
奴だ、あの怪しい光だ……
いったい、何処から出てきた?
腕を翳しながら光の様子を見る。
気が付けば、目の前に黒猫が座っている。
やがて、ゆっくりと口を開いた。
「お前は、時を失った……」
私はそれに驚き、おもわず呟いた。
「おいおい……お前、何で話してるんだよ……キモイよ……」
だが、その言葉は完全に無視されているようだ。
「お前は、在るべきはずの時を取り戻すのだ」
何がどうなって居るのか良く判らずに、ただ呆けている私に続けた。
「本来の目的へと向かうのだ。真実を知る為に……」
私は飛び上がるように起き上がった。
黒猫は?!
慌てて確認すると、腕の中でスヤスヤと眠っていた。
大きく溜め息を吐いて、冷静さを取り戻すと鳥の声が聞こえてくる。
それに気が付いて外を見れば、すでに朝だ。
本当かよ……そんなに寝てしまったのか……
寝ている間に、襲撃されなくて良かった……
しかし、あれは夢なのか?
まぁ飛び起きたのだから、多分夢だろうな……
猫が話すって……いくら何でも可笑しいだろう……
いやぁ……さすがに、それは無いわ……
私は、一人で夢を思いだして笑みを浮かべていた。
だが、はっきりと覚えている。
しかし、怪しい光の野郎……
いったい何のつもりだ?
在るべきはずの時?
本来の目的?
う~ん……全く意味不明だ。