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第十三節

 森で、野ウサギに遭遇してソマイで確保した。

恨みは無い……すまん……

いつもながら、動物の命を絶つ時は罪悪感に苛まれる。

生きる為だと己に言い聞かすが、

見た目が可愛いだけに余計辛い。

だが、これは肉の中でも相当に美味い部類のはずだ。

私は美味い肉が食べたかったのだ。

こればかりはどうにもできない。

川原で黙祷を捧げて、もくもくと捌いた。



 焼きあがった肉を食べてみる。

おぉ……クセが…無い……

豚肉のような鳥の肉のような不思議な感覚だ。

やはり、ウサギは素晴らしい。

満腹になるには、ちょっと少ない気もするが……

だからと言って、何羽も狩る気にはならない。

まぁ、小鳥よりは明らかに多いので良しとしよう。



 先程から、どうも雲行きが変だ。

森の臭いも、いつもと違う。

湿気を含んだような、独特な臭い。

こんな日は、かなりの大雨になる可能性がある。

もし想定を超えた雨が振ったなら、暖炉が消えてしまう恐れがある。

乾けばまた使えるだろうが、復活まで何日掛かるか判らない。

さて、どうした物か……


 私は川原へ石を集めに行った。

足りるであろう数になるまで5往復かかった。

洞窟の上を見ながら雨が掛からないであろう位置に積み重ねる。

大きな葉を天井に何枚か組んで、煙が外に出るように配置する。

そこに暖炉の炭を持って来て、その上に薪を積み重ねる。

しばらく煙の様子を伺っていたが、この流れ方なら大丈夫だろう。

少なくとも、死ぬ事は無いはずだ。

これで小型の暖炉が完成だ。


 メインの暖炉の勢いを落として行く間に、大き目の石を拾ってきた。

平らな石が欲しかったのだが、そんな板のような石はさすがに無かった。

それでも、意外に薄めの石があったのでそれを暖炉の上に置く。

これが蓋代わりだ。

もし大雨が降っても被害は少ないだろう。


 作業が一段落した時には、もう空はかなり暗くなっていた。

これは、本格的に来そうだな……

動けるのは、今のうちかな?

私は川原で3匹の魚を確保して戻ってきた。

さばいた魚を竹で作った串で刺し

メインの暖炉に蓋をした石に挟み込んだ。

これで一時間も置いておけば、スモークもどきが出来るはずだ。

しっかり作られた燻製には程遠いが、生のままよりも良いだろう。


 燻し終わった魚を引き上げると、ぽつぽつと降り出してきた。

空の様子を伺っていると驚くほどに雨足は速く、すぐに本降りになってしまった。

森は灰色に染まり、曇りガラスのように霞んでいる。

聞こえてくるのは雨の音だけ。

これは凄いな……

夕立のように激しい雨は、ひたすらに降り続いていた。

小型暖炉の火を調整しながら、溜め息を付く。

ちょっと予測が甘かったかな……

さすがに、ここまで勢い良く降るとは思っていなかった。

これでは雨が上がっても、すぐには動けそうに無い。

ぬかるんだ土に足元を取られたら危険だ。

崖から転落でもすれば、お陀仏である。

ここでは誰も助けてはくれない。

まずは、安全第一だ。

ひとまず3匹の魚と、煮沸済みの水で凌ぐしかない。

念の為に、本降りになってから空の竹バケツを洞窟の入り口に置いてある。

雨水は、比較的に綺麗なはずだ。

煮沸すれば問題なく飲めるだろう。

さて、どれだけ降り続くやら……













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