第十一節
尖らせた石で、大きめの木に目印の数字を刻みながら思わず呟く。
「少し息が切れてきたな……一気に歩いたのが効いたか……」
今日は少し気合を入れて、遠征を試みている。
もう、だいぶ距離を歩いてきた所だ。
かれこれ2時間は歩いているだろうか?
何か違う物があるだろうと期待していたのだが、
森の景色はそうそう変わってはくれないものだ。
いくら歩けども、ひたすら森と言うのは心が挫ける……
どこかで休憩を入れよう。
その時に、妙に足が重く感じた。
なんだ?
見ると靴に土がこびりついている。
うっ……まさか、獣の糞か?
いや……臭いは……無いな……
少なくとも、糞では無いようだ。
臭いがこびり付いたらたまった物ではない。
私は胸をなでおろした。
良く見てみると、どうやらこの一帯が同じような感じだ。
明らかに、土の質が違う。
しかし、なんだ? この異常な粘り気は……
指で少し取り上げて見ると、赤茶色の激しくネバついた土である。
これは、もしや……
私は、森を見渡す。
大きな葉でもあれば良いのだが……
その時、左の方にやたらと緑の多い木が見えた。
それに近づいてみると、かなり大きい葉がぶら下がっている。
笹を巨大化したような縦長で相当に分厚い。
触ってみると、かなり丈夫そうだ。
裏を見ても、粉などは噴いていないので毒は無さそうだ。
これ、使えそうだな……
5枚ほど刈り取ると星型のように広げた。
腕の先を大きい葉ですっぽりと包むと
赤茶色の土を掻き集める。
葉の上にある程度盛って土を包み込んだら
葉の芯で縛り上げた。
見た感じは、巨大なチマキと言った所だ。
まぁインスタントのバッグにしては良く出来た方だろう。
それを持ち上げてみると結構重い。
これを持って、また2時間か……
その距離にゲッソリしながらも帰路に就いた。
休憩を挟みながら、ようやく洞窟に辿り着いた。
もはや汗だくだ。
もう、どうにもならないくらいに疲れている……
しかし、それでも私は何かワクワクしていた。
川に行って手と靴を洗い、顔を洗ってリフレッシュする。
竹のバケツで水を汲んできて、その土をいじり倒した。
うん……やはりそうか……
これは粘土だ。
かなり純粋な粘土質の層が剥き出しになっていたのだろう。
これは、使えるぞ……
私は、水辺の目の細かい綺麗な砂を持ってきて
その粘土に混ぜ合わすと、いくつも形にして洞窟の奥に放置した。
時間は掛かるが、後の楽しみだ。