馬鹿の酒取り
大蛇のような見た目をした酒好きのハルルイ、ノーブルはある時家でお酒を作っていました。
ノーブルは「この酒を口にした者は何者でもあろうとも立てなくなり、この酒の欲望には抗えぬだろう。」と日頃から言っていました。
そんな事を聞いた大鼠の見た目をしたハルルイ、ピーニクスと毒虫の見た目をしたハルルイ、バルグスはその酒を手に入れようとしました。
まずピーニクスとバルグスは直接ノーブルの家を訪ねました。
「ノーブル殿、どうかお主の酒を私に分けてはくれぬか。」
卑しい声でピーニクスはノーブルへと乞いました。
「ピーニクス殿、お主がなぜ我が酒を求むるか知らぬが、あれは天を揺るがしかねぬ毒である。故にあの酒は何人にも渡せぬ。」
しかし、ノーブルはピーニクスの願いを丁寧に断りました。
そして、ピーニクスの後にバルグスもジリジリと声を上げ酒を強請りました。
「ノーブル殿、私はお主の酒の作り方を教えて欲しい。私はあの酒を口にしたことがないのだ。それ故あの酒の味が気になって気になって夜も眠れぬ。」
「バルグス殿、あの酒を口にしたものはあの味を忘れられず夜も眠れ無くなる、それでは味を知ったところ意味はなかろう。」
とノーブルはバルグスを説得しました。
しかし、バルグスは「作り方だけでも。」と言いました。
呆れたノーブルは酒を隠し、二人を家の中に案内しました。
ノーブルは丁寧に自身の庭で摘んだ香草の茶を二人に出しました。
その茶を飲んだ二人は感嘆して声をあげました。
「おおおおお!これはなんと丁寧な茶であるか。匂いも、味も、何もかもが優しい、この茶だけでも私達は来た甲斐があると言えよう。」
それを聞いたノーブルは言いました。
「なれば、その香草をお主達に分けよう。そして、帰ってくれ給え。」
ですが、ピーニクスとバルグスは言いました。
「それとこれとはまた話が違うではないか。我は酒の作り方を教わりに来たのだ。速く作り方を教えぬか!」
バルグスは傲慢にもノーブルを急かしました。それを聞いたノーブルは諦めて作り方を教えました。
「まず、とびきり赤いファーミルの花の蜜ととても緑の深いミハルの葉を一握り、水瓶一杯の水を腰くらいの大きさの大壺に混ぜて180回空が暗くなってその次の日にミハルの葉を取り出し、それを7日間掛けてじっくりとろ過をすると、輝き出すそれこそが我が酒酒豪の酒だ。」
それを聞いたピーニクスとバルグスは急いで家に帰りその酒を作り始めました。
まず、とびきり赤いファーミルの花の蜜、とても緑の深いミハルの葉を一握り、水瓶一杯の水を腰くらいの大きさの大壺に混ぜた。しかし、彼らは180回空が暗くなるのを待つことが出来ません。
「そうだ、この中に種酒を入れれば180回も空が暗くなるのを待たなくてもよくなるのではないか?」
とバルグスが言いそれをピーニクスは「賢い!」と煽てました。
彼らはすぐさまノーブルの家へと行き、種酒を貰おうとしました。
「ノーブル殿、我らは閃いたのだ、種酒を入れれば180回も空が暗くなるのを待たなくてもよくなるのではないか?とそれ故その酒豪の酒を分けてはくれぬだろうか。コップ一杯だけでも良いのだ。」
「その酒はそれだけじっくりと待つことによってこそ真のうまさが出るのである、それ故そのような事をしてはならぬ。」
とノーブルは彼らに強く言いました。
しかし、彼らは諦めてはいなかったのです。彼らはノーブルが不在となる時間を狙って彼の家に忍び込んでしまいました。
「へ!ノーブル殿は相変わらず頭が硬い、それに比べ私達の頭は柔軟であるから、こう言う事も思いつく。」
「我らは柔軟であるからな。」
彼らは得意げに話しながら家を物色し、遂に瓶に入った酒を見つけました。彼らは喜んでそれをその場で飲みました。
それから用事が済んだノーブルが家に帰ると床の上に大鼠のピーニクスと毒虫のバルグスがひっくり返っていました。それに気が付いたノーブルは急いで酔いさましの薬を飲ませました。
彼らが目を覚ますと目の前には呆れた顔をしたノーブルが座っていました。
「お主ら、我がお主らに薬を飲ませねば、今頃あの酒の虜になっていたであろう。これで分かったか。」
そう言うとピーニクスはノーブルに言いました。
「では、あの酒と共にあの薬を配ればよろしいではないか。」
それを聞いたノーブルは呆れながらも教えました。
「あの薬は貴重な素材である鳥の涙を使わなければならないのだ、それをその倍のの速さで作れる酒と共に配ることなど不可能なことである。」
そう言うとバルグスは大声で騒ぎました。
「なれば、あんなものを作るな。」
その言葉を聞いたノーブルはまたしても呆れました。
「もう良い、お主ら、我の元働かぬか。」
そう聞くと彼らは言い返しました。
「我らがノーブル殿の元で働き我らに何がある。」
それを聞いたノーブルは少し悩んだ後に言いました。
「なれば、私の元で180回空が暗くなる程働いた後に酒豪の酒よりかはうまくはないが、その次にうまいと言える酒をお主らに与えよう。」
それを聞いたピーニクスとバルグスは跳ねて喜びました。
それから180回空が暗くなる程働き、約束の日となりました。
ノーブル達はピーニクスの家に向かいました。
その間ノーブルは何やら道端で草を抜いていました。
ピーニクスの家に着くとノーブルはピーニクスが作った酒壺に道中で拾った草と自身の家から持って来た香草を入れ、それを日に掛け始めました。それを見たピーニクスは急いで止めに入ろうとしましたがノーブルがそれを止めました。
「何をするか、ノーブル殿はそれは私が作った酒豪の酒ではないか!なぜそのような事をする。」
「まあ、少し待ち給え、安全で美味しい酒を今作っているとこだ。」
そう言われたピーニクスは何もわからなかったので騒ぎ続けました。
そうして少しして、遂にノーブルの酒が完成しました。
それを杯に分けて、騒ぎ疲れて座り込んでいるピーニクスに渡しました。
ピーニクスは残念そうにそれを見ながらもグビッと一口飲みました。するとあまりの美味しさに歓喜しました。それを見たバルグスもノーブルに願い自身の酒をピーニクスの酒と同じ様にしてからいました。
その事でピーニクスとバルグスは反省し、それ以降はノーブルの手伝いなどを進んでするようになりました。




