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第3話:弾切れ!? 嘘だと言ってよ、バーぁあぁんっ!!?

「ギ、ギギ……ギギギギ……ッ!!」


 目の前で、血塗れのチェーンソーが狂ったように回転している。


 火花が散り、ボクが隠れていた木箱が、まるで豆腐か何かのように一瞬で両断された。


「ひぎゃあああああああああああああああああああッ!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! 今の掠ったよ! 鼻先三センチくらい通ったよぉおおッ!!」


 ボクは情けない絶叫を上げながら、広場の石畳を這いずるようにして転がった。


 後ろを振り返る余裕なんてない。でも、聞こえてくるんだ。


 重い足音と、あの――鼓膜を直接削るような「ブォォォォォンッ!!」というエンジン音が!


「近寄るな変質者ぁああッ! 執行猶予なしの死刑だよ、そんな武器持ち歩いてたらぁああッ!!」


 ボクは半泣きになりながら、魔導銃の銃口を背後へ向け、闇雲に引き金を引いた。


 ――カチッ。


「…………え?」


 乾いた音が、ボクの脳内に絶望の冷水をぶっかけた。


「嘘だ。嘘だよね? さっきリロードした……したっけ!? してないぃぃぃぃいいいッ!!」


 そう、広場の村人たちを相手に、ボクはパニック状態で乱射しすぎたのだ。


 魔石のエネルギーは枯渇し、シリンダーは空っぽ。


 絶体絶命。


 原作知識によれば、ここでチェーンソーを喰らえば、ボクの首は物理的に「さよならバイバイ」だ。


「怖い怖い怖い怖いッ! 助けて今世の師匠ぉおおおおおッ!!」


 ボクの脳裏に、この世界での師の顔が浮かぶ。


 名前を呼ぼうとしたけれど、恐怖で名前すら思い出せない。多分バーナムとかバーなんとか、とにかくあのクソ強いオッサン、助けに来てよぉおおッ!


 ――いや、来るわけない。


 ここは孤立無援の狂瀾の村なんだから。


「……っ、やるしかないんだね!? やればいいんでしょぉおおおッ!!」


 ボクは覚悟を決め(というかパニックの極致に至り)、腰に下げていたタクティカルナイフを逆手に抜き放った。


 特殊部隊員としての「器」が、勝手に最適な戦闘姿勢を取る。


 チェーンソー男が、頭上に凶器を振り上げた。


 ボクを縦二つに叩き割らんとする、その瞬間――。


「おりゃあああああああああああッ!!」


 火花が散った。


 ボクはナイフの腹を使い、回転するチェーンソーの刃を「受け流し(パリィ)」たのだ。


「う、浮いたぁあああッ!? 本当にパリィできたよ!? ナイフの耐久値がマッハで死ぬけどできたよぉおおおッ!!」


 驚いている暇はない。


 相手が体勢を崩した隙に、ボクは全力でその股間……じゃなかった、脛を蹴り抜いた。


 ぐらりと揺れる大男。


 そこへ、ボクの中のプロフェッショナルな傭兵としての経験が最速のコンボを叩き込む。


 喉元への掌打。


 からの、耳の下へのナイフ投擲……は勿体ないので、そのまま懐に潜り込んでの回し蹴り!


「どっせぇぇぇぇえええいッ!!」


 ボボォォンッ!!


 魔力による膂力強化が乗った一撃が、チェーンソー男を後方の民家まで吹き飛ばした。


 壁を突き破り、砂塵が舞う。


「……た、倒した? 今度こそ、サヨナラできたよね……?」


 ボクは肩で息をしながら、震える手で魔導銃の弾丸(魔石)をポーチから探り出す。


 手が震えて、弾を一個落とした。


「ああっ、もうッ! ボクのバカバカ! 落ち着け、一発、二発……よし、リロード完了ぉおッ!」


 ガチャリ、とシリンダーを戻したその時。


 ――ゴゴゴゴゴ……。


 村の奥にある巨大な教会の鐘が、低く重い音を立てて鳴り響いた。


「……え?」


 さっきまで殺気立っていた村人たちが、一斉に動きを止める。


 彼らは武器を納め、何かに導かれるように、静かに、そして無感情に村の奥へと歩き去っていく。


 壁に埋まっていたチェーンソー男までもが、フラフラと立ち上がり、ボクを無視して消えていった。


「な、なになになに!? タイムアップ? 休憩時間なの!? 誰もいないの!? おーい!!」


 広場には、ボク一人と、燻る焚き火だけが残された。


 あまりの急展開に、ボクの絶叫も行き場を失って、虚しく霧の中に消えていく。


(……そうだ。原作通りだ。鐘の音が鳴れば、奴らは「祈り」の時間として去っていく……。助かった。ボク、まだ生きてる……)


 地面にへなへなと座り込む。


 恐怖の反動で、全身が氷のように冷たい。


 


「……あー、もう、本当に最悪。このゲーム、主人公へのパワハラが凄すぎるよぉ……」


 ボクは泥を拭い、ひび割れたナイフを鞘に戻した。


 まだ冒険は始まったばかり。


 聖女リディアーヌを救い出し、この「寄生体の村」から生きて脱出するまで、ボクの絶叫は止まりそうにない。


「とりあえず……どっか安全な部屋で、三日くらい寝たい……」


 ボクの切実な願いは、誰にも届かない。


 重い足取りで、ボクはリディアーヌが囚われているはずの「教会」を目指し、再び歩き始めた。

【作者より】


もし「カイの絶叫をもっと聞きたい!」「チェーンソー男からの生還に拍手を送りたい!」と思っていただけましたら、ページ下部の【★★★】での評価や、ブックマークをいただけますと、ボクの生存確率がわずかにアップするかもしれません!


次の地獄でも、またお会いしましょう!

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