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第八十話

これが、本当の最終決戦!


直美は頭の中で作戦を考えてみるが、普通に考えたら、お互いが戦闘機動中にも関わらず同じ場所に攻撃を当てるのは難しい。


「セレナ、グラディオンとの戦いは、また無理をしないと駄目そうなんだ。一旦、グレムリンに移って後方に避難してほしいんだけど」


「嫌ですわ! また後ろで心配しながら見ているだけなんて、嫌です。私もグリムリーパーの乗員です! 直美、今度は私も連れて行ってください」


「すっごい危ないよ。私も成功するか分からない方法だよ……貴方に何かあったら……」


直美はセレナを残すべきだと思っている。たしかに今のセレナは皇女ではなく、あくまでも連邦政府代表の孫であり後継者なので、万が一があっても連邦政府が継続出来ないわけでは無い。

しかしそれは、政治的にと言うだけで、万が一彼女を失った時のフェルマントが心折れずにやっていけるのかと言うと難しい気がしているのだ。


「なぁ、直美。今回ばかりは俺もセレナ様と同じ意見だ。デスカリオンの時のような思いは、もうたくさんだ。俺は……直美が白色矮星に向かってワープしたと知った時、どうして俺も一緒に行かなかったのかと悔やんだんだ。だからセレナ様の気持ちが痛いほど分かる。俺たちは仲間だ。危ないからと言って、残されるのは、もう嫌なんだ」


バロックとセレナの真剣な顔を見ていると、直美も強くは言えなくなった。皆には言っていないが、頭の中に浮かんだ作戦なら、相手を沈める事は可能だと思っている。しかし、その後の生存率は極めて低いとも考えていた。


「遺された者の気持ちか……それは、逆の立場なら嫌かもね……わかったよ。ここまで一緒に来たんだから最後まで付き合って貰うよ。リム=ザップ、エルザ、シノはどうする? 降りるんなら今だよ?」


「私は軍医ですからねー。なーんて言わないわ。ここまで来たら一蓮托生よ。それに、何だかんだと言っても艦長の傍の方が生存率高そうだし、私は艦長に賭けるわ」


「私も艦長の傍が良いです。私は艦長と共にします」


「俺は……直美の護衛だ……」


「はぁ~~。本当に貴方たちも馬鹿ねー。本当に生存率低いよ。でも……ありがとう。それじゃ、皆で、あのデカブツをぶっ飛ばしましょ!」



直美はオルヴァンやアンヌたちや残っている指揮官たちと連絡を取った。

この作戦には皆の力が必要だ。如何に退路を確保するかが、作戦の鍵となる。

残っていたグリサン男爵家の駆逐艦も遂に撃沈され、グレムリンも戦闘不可、黒槍艦隊の重巡も全滅、残りはわずか九隻。敵の数はデカブツを含めて五十隻。デカブツを倒したとしても、残りの帝国軍が戦闘を継続すると全滅も視野に入れないといけない状態だ。


「直美艦長、本当に良いのですか? それにセレナ様まで……」


「オルヴァン、私は決めました。逃げ隠れしていても駄目なんですわ。この一戦に全てを賭けないと連邦政府は生き残れません。だから、直美を信じて皆で戦いましょう!」


直美は、ちらりとセレナの横顔を見る。彼女は、この短期間で少し大人になったように見えた。


「ええ、セレナの言う通りです。これ以上はジリ貧になるだけです。私も最後まで足掻いて見せますから、皆さんもよろしくお願いします! それでは作戦はお伝えした通りでいきます」


直美は、一瞬、この戦の後、はたして何人生き残れるのだろうかと、頭をよぎった。それでも、今やらないと全滅する可能性の方が高い。

大きく息を吸った後、迷いを捨てた。


「全艦、突撃隊体勢!」


直美の指揮のもと、全艦が突撃体勢を取った。陣形は鋒矢ほうしの陣、最後尾に付いているのはグリムリーパー。


全艦隊が帝国軍のグラディオンを目掛けて突撃を開始した。対して敵は鶴翼の陣。こちらを向け討つ構えだ。最後尾にグラディオンだ。この状態を作るのが重要なのだ。

帝国軍は数に物を言わせて、包み込むように左右に別れた艦から砲撃が飛んでくる。


連邦軍は、防御力の高い戦艦を外に配置して、砲撃に耐えながら一点集中で突撃していく。


「まだまだ、皆頑張ってよ!」直美は艦長席でモニターを見つめる。


連邦軍は、仲間が爆散しても止まることなく突き進んでいく。その姿は愚かな指揮官による無謀な突撃にも見える。

左右からの砲撃を受けて戦艦さえも爆散していく。


「艦長! ジェンガ―さんが!」


シノの声が艦橋に響く。直美の艦長席に表示されているモニターからジェンガ―の乗艦、レッド・レクイエムが消えた。


「シノ! 超短距離ワープ! 目標デカブツの背後!」


直美は、亜空間魚雷と同じぐらいの超短距離ワープを指示した。ワープしたと思ったら、直ぐに通常空間に出る。いつもの眩暈を感じる暇もない。


「超信地旋回!」直美は操縦桿を目一杯倒し、反対側のフットペダルを踏み込む。グリムリーパーはその場で艦体を九十度傾けると、速度を乗せたままアクセルターンを行った。慣性制御をもってしても、殺しきれないGが体を艦長席から引きはがそうとする。


「リム=ザップ! 亜区間魚雷全弾発射!!」


直美の指示で近接で亜空間魚雷を三本放つ。亜空間魚雷はピンポイント攻撃には向いていないが、近接した状態で三本平行発射することで、何とか目的地点に当てようと言う考えだ。


「機関最大戦速! 魚雷の着弾地点に突っ込むよ」


グラディオンの後部に取り付けられた二基の主砲から粒子砲が放たれる、グリムリーパーの防御シールドに当たって拡散していくが、それでも近距離過ぎてダメージが入る。


「艦首破損! 第一砲塔溶解! 魚雷管三本とも持ってかれた! 正面外部カメラ破損。予備を起動!」


オオサカからダメージ報告が入る。それを聞きながらも直美は突進の速度を緩めない。


「魚雷、着弾します!」


「カメラ起動急げ!! 早くぅ!!」


失った正面カメラの代わりに予備に切り替わる。


「見えた!」


モニターにはグラディオンの背がデカデカと映し出された。衝突寸前だ。直美は急制動をかけて、直進しようとするグリムリーパーの慣性を必死で殺す。

最早、衝突は回避できない。咄嗟に操縦桿をわずかに動かして、ぶつかる場所を定める。亜空間魚雷によって出来た装甲の穴を目掛けて。


グリムリーパーの艦首がグラディオンに接触する。艦体に大きな衝撃が走る。軋む金属音。鳴り響く警告音。次々と気密扉が閉鎖されていく。


「こんのぉー!!」


直美は、最大出力で後退に移る。あちらこちらで軋む音を立てながら、グリムリーパーの艦首がグラディオンから抜ける。


「バローーック!! 撃て!!」


魔力を十分に溜め込んで、生き残っている二つの主砲から、高密度粒子の光が迸る。


グラディオンが展開している防御シールドの内側どころか、むしろ艦内にまで、めり込んで放たれた主砲がグラディオンの内部で、あらゆるものを溶解し破壊していく。


「機関最大戦速!!」


直美は後退を諦め、前進することにする。後退して距離を取る行動よりも、全速力でグラディオンの天上付近を突っ切ることにしたのだ。


「防御シールド、後方に展開!! 正面は何とか避ける!」


防御シールドで物理的な攻撃や衝突物を防ぐことは出来ない。それでも一縷の望みをかけて、後方に展開する。


「デカブツから高エネルギー反応!!」


シノの声は悲鳴へと変わっている。後部にデカブツから主砲を受けたら、グリムリーパーのエンジンは助からないかも知れない。

エンジンが破壊されたら、グリムリーパーは只の射撃訓練用の的になるだけだ。


「しょ、正面に戦艦が接近中!!」


「あっ!」思わず、直美は声を上げてしまった。直美が見つめるその先には、真っ黒になったモニターがあった。


「アカン、予備のカメラも壊れてもうた。艦長はん、勘でよけてや! たのむで!」


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