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第七十九話


直美が乗るデスカリオンの砲撃を受けてグラディオンの艦体が真っ赤に染まる。五本の高密度の粒子砲を防御シールドによって防いでいるのだろう。


「リム=ザップ、グラディオンに向けて連射! 右舷側砲<みぎげんそくほう>、接近中の戦艦を狙って、後方右舷は、後方より接近中の重巡を!」


直美はデスカリオンの足をほぼ止めて真っ向から撃ちあいを始めた。

前面の主砲三基と左の舷側砲、さらに後方の左舷側の主砲と合計五基の主砲を使ってグラディオンを攻撃し、右の舷側砲を使って、右より接近中の戦艦を攻撃。後方より接近中の重巡には後方左舷側の主砲で対応させる。


しかし、実際に撃って来るのは取り巻きの戦艦や重巡ばかりに見える。


「あれ? コンゴウ、グラディオンからの砲撃がないけど?」


「おそらく、この連続攻撃を凌ぐために、防御シールドに魔力を全部注いでいると思います」


亀が甲羅に閉じこもるように、防御シールドに身を隠しているようだ。それでも連射を行っていると、遂にグラディオンの艦体から火の手が上がった。

何度目の砲撃が通ったのか分からないが、最低でも一発は命中したのだろう。


「艦長! グラディオンの皇帝から緊急停止信号です! 間も無く私は止まってしまいます!」


「へ? 停止って、停戦では無くって?」


「違います。AIコンゴウを強制停止するための総司令官命令です。もうすぐ本艦は動けなくなります! 脱出用に連絡艇を出しておくので、艦長たちは直ちに退避してくだ――」


「リム=ザップ、逃げるよ!」


直美は、リム=ザップに声を掛けると、手元に置いていたヘルメットを被り、酸素供給を開始した。コンゴウが止まると何処までの設備が止まるのか分からないが、最悪の状態は想定しておいた方が良い。


艦長席のシートベルトを外して立ち上がろうとした瞬間、人工重力が止まった。何とか座席を蹴って出口へと向かう。リム=ザップが直美の横に並ぶと、直美の体を横に抱えて、足から噴射する小型のスラスターを噴射して通路を素早く移動していく。


「リム=ザップ、連絡艇の場所は分かる?」


「ああ……コンゴウが……教えてくれた」


通路の照明が消えて行く、ガコン、ガコンと言う音が通路の先から聞こえてくる。電気類は全て止まったようだ。


通路の先に気密扉がある。リム=ザップに運ばれているから分からないが、ヘルメット越しに聞こえる音から判断すると、おそらく空気が漏れ出しているのだろう。

リム=ザップが直美を背負う様に後ろに回した。直美がリム=ザップの首に手を回して、念のために両足をリム=ザップの胴体に絡め、後ろからしがみ付くような格好になる。


「はっは、乙女がする格好ではないけど、飛ばされたくはないからね」


リム=ザップが気密扉に手をかけ、強引に開いていく。やはり開錠されているようだ。


ズゥゥン! 大きな音と共に艦が大きく揺れた。おそらく敵の砲撃が直撃したのだろう。


「この振動って……防御シールドも消えているのかな」


「ああ……恐らくな……いくら装甲が厚くても……撃ちまくられたら……危ない」


何度か大きく揺れることがあったが、何とか連絡艇の発着デッキに辿り着くことが出来た。


「それじゃ、私が操縦するから、リム=ザップはデッキの開放をお願いね」


直美は素早く連絡艇の乗り込むと操縦席に潜り込んだ。操縦桿を握って魔力を通す。

連絡艇の三方向に取り付けられたモニターが外部の様子を映し出す。デッキと艦艇を繋ぐロックを解除し、ゆっくりと発信する。


モニターにはリム=ザップが映っており、手動でデッキの扉を開けているのが見えた。


扉を出る直前にリム=ザップが連絡艇の側面に取り付けられた取っ手を掴んだのが見えた。どうやら彼は、このまま宇宙空間を移動するらしい。


「ほんと、リム=ザップって何でもアリだね。というか小型のスラスターが付いていたから、宇宙空間でも自分で飛べるんだよね。おまけに大きな銃も持っているし……やっぱり巡洋艦より強いかも」


直美が操縦する連絡艇が、デスカリオンから勢いよく脱出する。


「コンゴウ……沈んじゃうのかな……」


直美は、モニターの一部を後方モニターに切り替えた。そこには砲撃を受けるデスカリオンの姿が見える。


「何とか逃がすことが出来たらいいんだけど」


「大丈夫や! ちゃんと逃げる用意はしておいたで」


「え? オオサカ! 通信が届く範囲にいるのね。えっと逃げる用意って??」


「まあ、デスカリオンの様子を見といてみ」


オオサカの言葉に従って、後部モニターでデスカリオンを見ていると。


「あれ? 小さくなっている!? いや、遠ざかっているのか。オオサカがエンジンを再起動させたの?」


「いや、あの大きさやと、一度止まると再起動に時間が掛るんや、そやから補助エンジンだけ吹かせて、必死にバックしとる感じやな。距離さえとってしまえば、あの装甲やから、ちょっとぐらいは当たっても問題ないやろ。ある程度下げたら、後はカシアはんところの乗組員を入れて、スタコラさっさと逃げる事にするわ」


「良かった。艦に思入れは無いけど、コンゴウは生き残ってほしかったから良かったよ。ありがとねオオサカ」


「いやー、あの艦を沈めるのはもったいないからな。これからは、連邦政府のために働いて貰わんとな」


「はいはい。素直じゃないね。オオサカ先輩!」


「あ、それは冗談やって、アイツは、何でも簡単に鵜呑みにするからなぁ、あとで再教育せんとな――」


オオサカがAIらしからぬ言い訳をしているが、直美としては、親しくなったコンゴウが撃沈されずに済みそうなので安心した。


「オオサカ、この連絡艇のレーダー範囲は狭いから、まだグリムリーパーが見えないんだけど、オオサカの方で誘導してもらえる?」


「おう、任せとき。艦長はんは、少し休んどいてエエで」


オオサカの言葉に甘えて、直美はのんびりと周りの様子を見ることにした。さすがにこの小さな連絡艇を狙って撃って来るものは居ないので、流れ弾だけ気にしてれば良いので安心だ。

デスカリオンで攻撃したときは、手あたり次第に砲撃していたから、何隻沈めたのかも分かっていない。デスカリオンで出撃する前は約百隻だったから半分ぐらいになっていてくれると助かるのだが。



暫くすると、グリムリーパーの綺麗な流線形が見えてきた。こうして宇宙空間で、外からグリムリーパーを眺める機会は無かったので、なんだか新鮮か気分がする。


「艦長はん。その連絡艇を収容できるスペースはないから、ここからリム=ザップはんに運んでもろてな」


「あー、せっかく新鮮な気分を味わってたのに、ざーんねん。今度は荷物の気分を味わうのね」


直美はハッチから出るとリム=ザップによってグリムリーパーの船外ハッチまで運ばれて行った。グリムリーパーの近くまで航行しておいたので、宇宙空間の飛行はわずかだったが、リム=ザップに運ばれている間も安定しているので安心感はバツグンだった。


グリムリーパーの艦内に戻るとセレナが出迎えてくれた。


「直美、お帰り!!」直美がヘルメットを脱ぐ前からセレナが抱き着いてきた。


「ただいま」直美がそう言うとセレナは、また泣きそうな顔をしている。

大分心配かけたのだろうと、少し反省してしまうが、まだまだ敵が居る。いや、むしろ、これからが難しい。

何と言ってもあのデカブツだ。デスカリオンの時のような搦め手は使えないだろう。


艦橋に入ると、皆が嬉しそうに歓迎してくれた。


「はぁ~~。本当にお前はドキドキさせてくれるよな。まさか本当に内部からデカブツを倒すとはな。でも、もう二度とやらないでほしいな。心臓がいくつあっても足りんよ」


バロックが苦笑いしながら出迎えてくれた。彼も随分と心配してくれたのだろう。しかし、デカブツの一番艦相手に正攻法では勝てない。

ここに来るまで、何か手は無いかと考えていたが、やはり良い手は思いつかなかった。


「皆、心配かけてごめんね。さあ、最後はボスのグラディオンだ。ねぇオオサカ、コンゴウから得た情報で、デカブツの弱点のような部分は無いの?」


「それな。エンジン部分は艦の中心にあるから、簡単には攻撃が通らんし、魔導タンクも同じや。しかしな対艦ミサイルの弾薬庫はイケるかも知れへん」


「それはどの辺にあるのか分かる?」


デスカリオンの場合は、既に対艦ミサイルを結構使っていたから、それほど残数は無かったが、オオサカが認識している範囲では、グラディオンは対艦ミサイルを余り使っていないようだった。

たぶん、取り巻きを多く引き連れているので、自らミサイルを発射する機会が無かったのだろう。


「発射装置の近くにあるんやけど、デカブツもグリムリーパーと同様に背中の後部付近にあるんや。そこに魚雷を当てるか主砲の直撃を浴びせれば、誘爆すると思うんや。ただ、当然やけど装甲はめちゃくちゃ厚いけどな」


「装甲が厚い上に、ピンポイントで攻撃しないと弾薬庫に当たらないのか。デスカリオンの装甲を見たけど、魚雷でも艦内まで貫通はしてなかったんだよね……でも、やるしか無いか!」



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