第七十八話
「このデカ……ゲフン。この規模の艦を動かすのは大変だね。艦長席だけじゃ見れないからコンゴウの方で管制もサポートしてもらうけど、リム=ザップの方は、射撃の制御できそう?」
流石の直美でも、コンゴウを前にしてデカブツと呼ぶのは気が引ける。
「大丈夫だ……コンゴウが……サポート……してくれる」
「はぁ、こりゃコンゴウ頼りだね。よろしくねー、コンゴウ」
「はい。お任せください! もうすぐゴルディア・セントラル付近にワープアウトします!」
艦内は、完全に無音だ。グリムリーパーの時はエンジン音や空調の音などが聞こえていたが、デスカリオンの場合はデカすぎて、艦橋からエンジンルームまでの距離もあるというのもあるだろうが、そもそもが静音性に優れており、居住性を重視した作りとなっているようだ。
ワープアウトした瞬間は、軽く眩暈を感じたが、それ以外に艦としての振動も何もない。
「ふぁー。さすが皇子の乗艦だけあるね。すっごい静かだし安定感もあるね。これに慣れてグリムリーパーに乗ったら壊れるんじゃないかと不安になるだろうね。さて戦場まで、ちょっと距離があるけど、コンゴウ戦況はどんな感じ?」
「ただいま、モニターに表示します」
「………このグラディオンって……超大型戦艦の一番艦なの?」
「はい。一番艦になります。座乗しているのは、グランツ・ノイ=ヴァルド皇帝陛下のようです」
「コンゴウ……帝国側の艦を敵、連邦軍の艦を味方とします。敵と味方の勢力を教えて」
「敵の艦体数は約百隻、味方の連邦軍は二十一隻です」
「五倍って……コンゴウ。オオサカに連絡して、グリムリーパーとグレムリンに回線を繋いでくれる?」
直美は、コンゴウからの報告を聞いて唖然としたが、このまま、まごついている場合では無いと思い直し、まずは身内と連携を取ることにした。
本来であれば、オルヴァンやアンヌたちとも連絡をとりたいところだが、デスカリオンからいきなり連絡をするのも難しいだろうという判断だ。
「回線、繋がりました!」
コンゴウの声と共に正面のメインモニターにバロックとセレナ、そしてグレムリンのカシアが映った。
「直美、大丈夫? 怪我していない??」
「へっへへ。いやー、一時はどうなるかと思ったけど大丈夫だよ。セレナも平気だった?」
「もう、無茶をして! まさか、乗り込んだま白色矮星に突入するなんて、すっごい心配しましたわ」
セレナはプリプリと怒っていたが、バロックに宥められながら、バロックに話を譲った。
「無事に帰ってくれて本当に良かった。珍しくオオサカも焦っていたぞ。それでユーグはどうした?」
「ああ、ユーグはね。えっと、リム=ザップ?」
「んー……冷凍人間?……」
「はぁ? なんだそりゃ? んーあ、まあ、何となく想像は付いたけどな。それじゃ、そっちは二人だけで動かしている感じか。それで戦闘機動は出来そうか?」
「何とかってところかな、AIのコンゴウにサポートしてもらえば出来そうだよ。そっちは、どんな感じ?」
「ああ、武装は変わらず主砲は二番と三番、魚雷発射管も三本平気だ。機関も問題はない。ただ、グレムリンが厳しいな」
「はい、直美艦長が居ない間、グリムリーパーの護衛艦として動いたのですが、何とか機関は動いていますが武装は壊滅で中破って所です」
バロックに話を振られて、カシアがグレムリンの状況を伝えてくれる。装甲もかなりダメージを受けており、盾としての役割も厳しい状態になってしまっていた。
「うん。それならグレムリンは退避ね。そっちは人員も沢山乗っているから無理しないで。それで……あの新しいデカブツが、新たな艦隊を率いてきた感じ?」
「そうやな。あれの性能は、今までのデカブツと変わらんけど、取り巻きはかなり強いで。戦艦がゴロゴロついとるし、厄介なことに空母まで持って来てるから、ちっこいのがウロウロしとってな、副砲が壊滅的なグリムリーパーやと厳しいわ」
そうだった。副砲は既に九割近くが使えなくなっていたことを思い出した。
その状況で艦載機に、たかられたら厳しかったのだろう。その艦載機から守るためにグレムリンが奮闘する羽目になったのかも知れないと直美は思い至った。
「バロック、連邦軍の艦隊に連絡して。私がデスカリオンで出撃します」
「そりゃ良いけどよ。慣れてない艦で、いきなり戦闘して大丈夫かよ」
「うん。たぶん大丈夫。それに、この艦じゃないとこの戦力差はひっくり返せないよ。じゃ、行ってくるね」
直美が操縦するデスカリオンは帝国軍の群れに向かって突進を開始した。
「全く、帝国軍も戦い方がなってないよね。これだけ強いんだから、前面に押し出して行けば楽に勝てるのにね」
「このタイプの艦は、皇族の乗艦なので、戦場の最前面に出るのは、ちょっと難しいと思いますよ?」
「えぇ? そうかな、うーん。それじゃ皇族を適当な戦艦に乗せれば良いのにね」
「ふっふ、そうですね。さあ、戦闘を開始しますよ艦長。前方に戦艦四隻! あれ? どうやら敵とは認識していなさそうです。確かに識別信号は帝国軍の信号ですが……変だとは思わないのですかね? どうします? このまま、一気に行きますか?」
「そうね。怪しいと思っていても、第二皇子が乗っているはずの艦に、いきなり発砲なんて出来ないのかもね。お、通信がきたけど、ムシムシ! リム=ザップ、主砲の範囲内にいる敵に向かって、各個射撃開始!」
直美はデスカリオンの速度を変える事なく、巡行速度のまま、堂々と敵に中へと入って行った。
そして、全方位の敵に向かって主砲を放ったのだ。
超大型戦艦の前方に設置された三基の主砲とそれぞれの側面の一基づつ、さらに後方の二基の主砲が一斉に粒子砲を放つ。
「うわー、これは圧巻だね! 流石に戦艦を一撃で沈める事は出来ないけど、一発目で大破して、二発目には撃沈かぁ。そう考えると良くグリムリーパーは耐えてくれたね」
「いえ、グリムリーパーと戦った時は、防御シールドを優先していたので、主砲出力は八割程度になっていましたよ」
コンゴウからの意外な言葉を聞いて驚いた。
「ええ、そんなに魔力不足だったの?」
「はい、帝国軍では魔導士と呼んでいますが、彼らの魔力でもこの艦の推進力と防御シールドを展開すると、主砲に回せる魔力に限りがあったのです。その点、艦長はさすがですね。たった一人の魔力で、巡航速度とはいえ移動させながらシールドも展開したうえで、全主砲の連射ですものね」
「はっはは、これが唯一の取柄なのかもね」
直美はコンゴウと話ながらも敵の順調に攻撃していった。主砲が届く範囲の艦を次々と沈めて行く。
当然敵からの反撃もあるが、防御シールと艦体自体の装甲で弾いていく。
「よーし! それじゃ全力でいくからね。リム=ザップ、撃ちまくってよー!」
直美はデスカリオンの速度を上げた。さすがにグリムリーパーのような速度は出ないが、戦速まで上げて敵の中心、超大型戦艦グラディオンを目掛けて突き進んでいく。帝国側も戦艦四隻を沈められたことで、デスカリオンを敵と判断したようで、本格的に攻撃が始まった。
デスカリオンは前面に防御シールドを集中させながら、手あたり次第に敵を沈めて行く。デスカリオンも大きな艦体なので、防御シールドでカバーしきれない部分はあるが、そこは装甲だけで凌いでいく。
辺り一面、花火大会でもやっているように火の玉が出来上がっていく。
戦艦が、デスカリオンの主砲の直撃を受けて爆散していく。重巡クラスは掠っただけで、炎を吹き出しながら戦線を離脱していく。
「お、ようやく見えて来たよ。グラディオンだ。リム=ザップ、グラディオンに前方主砲を使って一斉射撃用意! ――撃て!」
前面の主砲三基を使った一斉射撃だ。グリムリーパーよりもはるかに太い粒子砲の光が、グラディオンに向けて飛んで行った。
「もう一度、今度は左舷を向けるから前方の三基と側面一基、後方左舷の一基を使って斉射行くよ」
デスカリオンが進路を変えて、グラディオンに側面を見せる。するとグラディオンとの間に戦艦が割り込もうとしてくる。
「盾になる気か、うーん献身的だね。でも撃つけどね。リム=ザップ、なるべく戦艦では無くグラディオンを狙って撃って。タイミングは任せる」
「おう……任せておけ……」
リム=ザップはそう言うと、射撃用の操縦桿を握りトリガーを引いた。トリガーに紐付けされた合計五つの主砲から粒子砲が放たれる。その瞬間、メインモニターは自分が放った主砲の光によって真っ赤に染まる。一発は割り込んできた戦艦を掠めたが、それ以外は、邪魔されることなく、グラディオンへと
吸い込まれて行く。
いつものお願いではありますが、
ちょっと面白いかもって思ったら
ブックマークと★評価をおねがいします!




