第六十八話
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帝国軍の巨大戦艦群が、コロニー外縁を包囲するように布陣していた。
砲門はすでに解放され、第一射の命令を待つのみ。
その緊迫した艦橋に、不意に通信士が声を上げた。
「閣下、外部より緊急通信です。発信元は――グリムリーパー所属艦艇」
ユーグは、薄く笑った。
「ほう……コロニーが落ちそうなので焦ったか」
映像が切り替わり、スクリーンには直美の姿が映し出される。
凛とした表情を浮かべ、毅然とした声音で彼女は告げた。
「ユーグ・アムシェル・ノイ=ヴァルド殿。あなたが探しているセレナ皇女は、そのコロニーにはいないよ。すでに我々の艦――グリムリーパーに移乗したわ。残念だったわね」
艦橋に一瞬ざわめきが走る。
ユーグの隻眼が鋭く光り、低く笑い声を漏らした。
「……なるほど。わざわざ出てきたと思えば、コロニー襲撃をやめさせたいのだな。貴様の言葉、証拠も無しに信用すると思うのか?」
「証明ね。セレナ、こっちに来て。あなたが本当に欲しいのは、そのコロニーの瓦礫ではなく――この人でしょ。違う?」
直美の言葉は鋭く、だが静かな決意に満ちていた。そして彼女の横に立つ青い瞳の少女――セレナ・ルクシア・ヴァルディス。
ただ、その姿はユーグの想像よりも遥かに幼く感じた。
その時、ふっと部下からの報告が脳裏にチラついた。彼の報告では、今までセレナが表舞台に出てこなかったのは、おそらくコールドスリープ状態にあったと予想されるというものだった。
「ほう、確かに似ているように見えるが、所詮、偽者には変わりない」
「へぇー。それじゃ、貴方たちは偽者の少女を捕まえるために、帝国の総力を上げるのね。それで? いつまでコロニーに執着するつもり?」
背後には数十万人の住民の命がかかっている。彼女の揺るぎなさは、ユーグの胸中に僅かな苛立ちと同時に、納得を呼び起こした。
「……ふん。口の利き方を覚えた方が良いな、小娘。だがいい。確かに貴様の言う通りだ」
ユーグは椅子に深く背を預け、手を一振りする。
「全艦に通達――コロニー攻撃は中止だ。目標を切り替えろ。狙うはただ一隻――グリムリーパーだ」
通信が切れる直前、直美は短く言葉を投げた。
「私は、ただ無辜の民を守りたいだけ。貴方が皇族の矜持を忘れていないのなら……これ以上の血を流さないで」
その言葉に、ユーグは鼻で笑いながらも、どこか皮肉めいた笑みを浮かべた。
「皇族の矜持、か。……ならば見せてやろう。我が帝国艦隊の力を――貴様らの艦ごときが耐えられるかどうか」
次の瞬間、帝国艦隊は進路変更を開始した。
標的はもはやコロニーではなく、暗黒の宇宙に孤立する一隻の艦――グリムリーパー。
嵐のような火線が、今まさにその背を狙わんとしていた。
◇ ◇ ◇
「くわぁぁぁ。緊張したーー」
直美は掌で顔をパタパタと仰ぎながら、艦長席に体を沈めた。
「そうですか? 全然緊張していたようには見えませんでしたわ。私には、堂々とユーグに喧嘩を売っているように見えましたわ」
「あっはは。喧嘩を売るつもりは無かったんだけど、万が一、目的を忘れてコロニー落としに執着したらどうしようって、心配していただけなんだけどね」
「艦長! 皇族がこっちに向かって来ますよ!」
シノが直美の方を振り向きながら言った。
「おっと、ここだと流れ弾がコロニーに飛びそうだから、奴らを引き連れて、さっきの戦場に戻るよ。シノ、エルザ、短距離ワープ準備。カシアにも伝えて」
「えぇ、私、操縦なんかできないよ? リム=ザップ代わりにやって」
操縦席に座っているエルザが困った顔をしてリム=ザップを呼んでいる。直美は思わず、エルザは女医だったことを忘れていた。
前のグリムリーパーでも操縦席に座っているだけで、実際の操縦は直美が行っていたのだった。
「あー、ごめんごめん。操縦は今まで通り私がやるから良いよ。シノ、ワープ座標は大丈夫? ……了解、それじゃワープ開始!」
流石に戦闘中の宙域にワープアウトは、何が起きるか分からないので、少し離れた位置にワープアウトする。
「シノ、戦況を確認して教えて」
「ええっと、八十二隻対三十三隻ってところです。ちょっとは良くなっていますよ。あー公爵軍も参戦していますね。結局残ることになったみたいですね」
「仕方がない、出来るだけ皆には頑張ってもらって、私たちは皇族軍を相手にするよ。特にあのデカブツは私たちがどうにかしないとね」
「その皇族軍が出てきます! 前方距離二万、艦体数二十九隻、魚鱗の陣です。超大型戦艦一隻、戦艦三隻、重巡四隻、巡洋艦七隻、駆逐艦十四隻」
「へぇー流石に訓練が行き届いているね。この短時間で陣形を整えて飛んで来たんだ。それでも、戦艦や重巡を減らしたのは痛手だったね。それじゃ、突撃開始! オオサカ、チャフミサイル二発用意! バロック、主砲で蹴散らすよ。カシア後ろの防御と追撃を任せる」
――それから暫く
直美たちは、皇族軍の駆逐艦を徹底的に狩って行った。数を減らさないと、亜空間魚雷の射線が作れないという現実もあるが、一番外側に配置されている駆逐艦が叩きやすかったという単純な理由もある。
「艦長はん、グレムリンの魔力が無くなりそうや、一旦、カシアはんたちは休ませた方がエエで」
「そうね。カシア、そっちは一旦離脱して休んで良いよ。こっちは、もうひと踏ん張りしてくるから」
直美がカシアを休ませている間も各地では戦いが続いていた。ただ、他の艦隊も、グレムリンのように艦隊の一部は休憩を交えながら戦っているのだ。
ただ、男爵家のように駆逐艦二隻しか持っていないのに、一隻が既に撃沈していた場合は、他の艦隊の背後に隠れて、魔力の回復に務めるのだ。
「それでも、まだ十五隻か、しぶといな。とりあえず、駆逐艦が居なくなったので、そろそろ、亜空間魚雷で重巡を狙て行こうかな。バロックは巡洋艦を積極的に狙ってね」
そう言うと直美は皇族軍の左翼に位置する重巡四、巡洋艦二に亜空間魚雷攻撃を仕掛けた。一方バロックは巡洋艦十および重巡五に主砲を放つ。
亜空間魚雷は一撃必殺の兵器となっている。命中さえすれば、一発で重巡ぐらいは撃沈出来る。巡洋艦二はそんな攻撃を受けてしまったので一瞬で爆散してしまった。
バロックの方も巡洋艦十を仕留めて、重巡五も追い詰めたが、防御シールドに阻まれて撃沈には至らなかった。
一方皇族軍のからの攻撃も熾烈を帯びてきた。一番弱い者でも巡洋艦という構成なので、一発一発の主砲の力が強い。直美の操縦テクニックで躱せる砲撃は躱し、無理な場合は防御シールドで受け流していく。
対艦ミサイルもまだ残っているようで、ちょくちょく飛ばしてくる。飛んでくるからには迎撃なりする必要があり、何気に攻撃のタイミングをズラされてしまうのだ。
「さすがにエリートなんだろうね。かなり手堅い攻撃をしてくる。こうやって落ち着いて攻めてこられると乱戦に持ち込めないから難しいね」
「そやな、周りから削るしか手はないやろな。普通なら、これで魔力が消耗してもうて、最後のデカブツで終わるって感じやろな」
「それなら、あのデカブツをもっと前面に押し出せば、味方の犠牲が少なくて済むと思うけどな」
「うーん。ワイもそれは思ったんやけど……たぶんな、魔力が足りてないんやと思うんや。だって、アイツ、主砲の連射してけえへんやろ。斉射しても時間おかんと、次の斉射が撃てないみたいやし。一撃一撃は強いし、防御力も高いけど、連射とか素早い動きは苦手なんちゃうか」
「あぁ、なるほど。そんな物を前面に出したら盾みたいだものね。さすがに司令官が乗っている旗艦を盾代わりにするのは、カッコが付かないのか」
「たぶん、そうやな。そやから、敵が疲れた頃に前に出して、一撃で倒すって感じが理想なんやと思うで、そんなわけで頑張って周りを削らんとデカブツまで届かへんで」
オオサカのホログラムは、そう言いながらソファーに座って、呑気にお茶を飲んでいる。
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