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第六十六話


遂に、決戦の火蓋は切られた。

セレナがいるコロニー、ゴルディア・セントラルとは、宇宙規模で言うと目と鼻の先とも言える位置に戦場は展開されている。この宙域は障害物も少なく、大艦隊を動かすには、うってつけの場所だった。

艦体数で言うと九十六隻対四十一隻。乗組員で考えれば、双方合わせて数万人もの命がけの戦いが始まろうとしていた。


濃紺の虚空に、星々の光をかき消すほどの艦艇群が広がる。各艦の推進炎が流星のように尾を引き、交錯する航跡は巨大な蜘蛛の巣を描いていた。


その中で、ひときわ異彩を放つ艦隊があった。――皇族直属艦隊。

漆黒の艦体に黄金の紋章を刻み、まるで戦場そのものを支配するかのように進軍を開始する。


「……皇族が、動いたか」


バロックの言葉通り、皇族の軍勢とそれ以外の貴族の軍勢に大きく二分して、艦隊が動き出した。


「皇族を守っていた戦艦や重巡たちも残るみたいだね。そうなると、本当に皇族直属の部隊だけ、前に進んで、他はここで足止めって感じなのかな」


「艦長! 空間異常が! 皇族軍が飛びます!」


「えっ! マズい、これ絶対、ゴルディア・セントラルに向かったよね! ああ、もう。オルヴァンさんに繋いで」


最早、通信の傍受などを気にしている場合では無いと判断した直美は、オルヴァンと連絡を取ることにした。


「オルヴァンさん、皇族軍がコロニーに向けて短距離ワープを仕掛けた! 防衛線をすり抜けられたよ!」


「ああ、私も、直美と連絡を取ろうとしていたところだ。直美、セレナ様を連れて逃げろ! アンヌたちを後から向かわせる。私は、ここに残って奴らの足止めをする」


「分かった。オルヴァンさん、ご武運を!」


直美はオルヴァンに告げるとゴルディア・セントラルに向けてワープを開始した。


「まもなく、ワープアウトします。三、二、一……」シノ声と共にグリムリーパーが通常空間に出現した。


「機関、最大戦速! 防御シールド左舷展開!」


直美の声に従って、グリムリーパーの機関部が唸りを上げる。


直美の目の前に広がるのは、静かに光を放つコロニー、ゴルディア・セントラル。

しかし、その周辺に群がる漆黒の艦隊が放つ光は、決して穏やかな光では無い。


――コロニーを、焼き払うための光だ。


「このままじゃ、セレナを救出する前にコロニーが落とされる。シノ! カシアに連絡して、こっちに来てもらって。カシアが来るまで、私たちで皇族軍を抑えるよ」


皇族軍の艦体数は三十七隻。超大型戦艦一隻、戦艦四隻、重巡六隻、巡洋艦十隻、駆逐艦十六隻。


「幸い、奴らはコロニーに向けて包囲網を形成して薄く広がっている。亜空間魚雷の的にしてやる! オオサカ、亜空間魚雷六発用意!」


直美はそう言うと、コロニーの右側に展開している皇族軍から削り取ることにした。


「バロック、大型の艦は魚雷で沈めるから、周りの取り巻きは砲撃で艦体数を減らしていって。オオサカ、目標、重巡二、戦艦二、重巡三に二発づつ。チャフミサイルも適当に数発撃ち込んでおいて」


「はいよ。チャフミサイルも準備出来次第、ワイの方で適当に発射するから、まかせとき!」


オオサカのホログラムがサムズアップで応えた。


「よっしゃ! 突撃開始!」


直美は操縦桿をわずかに左に倒し、駆逐艦二、三、巡洋艦一が護衛している重巡二を目掛けて突撃を開始した。

バロックがグリムリーパーの前方に設置されている三つの主砲を使って、それぞれ異なる艦を狙う。


バロックが放つ主砲が皇族軍の駆逐艦に吸い込まれて行く。当然、駆逐艦たちも防御シールドを展開しているが、戦艦クラスの主砲を持つグリムリーパーの砲撃には耐えられない。一撃で爆散していく。

巡洋艦一は辛うじて生き残ってはいるが、大破しているのが見て取れた。


「もういっちょ! 第四主砲発射!」


バロックは、耐えていた巡洋艦一目掛けて後方の主砲、第四主砲を放った。既に巡洋艦一は防御シールドも展開出来ない状態になっていたのかノーガードで主砲の直撃を受けた。艦体の中央に大きな穴が開き、そのまま真っ二つに折れ曲がりながら爆散していく。


「オオサカ、亜空間魚雷――全弾発射!」


隙間だらけとなった艦隊目掛けて、出し惜しみなしの亜空間魚雷が発射された。


「バロック、そのまま、巡洋艦八、駆逐艦四をねらって。コロニーの右側の敵を排除するからね」


「亜空間魚雷、全弾命中! 重巡二、三が轟沈します。あ、戦艦二も撃沈します!」


重巡二隻が爆散していく。激しい炎の塊となって、暴力的な爆発エネルギーとなって、あたりにデブリをまき散らしながら消えて行く。


直美はバロックが攻撃しやすいように、左舷に敵を向けて艦を進める。


「天上方向より、対艦ミサイル八発来ます!」


「副砲、自動迎撃開始! バロック、艦を傾けるから主砲で撃ち落として。防御シールド天下に展開!」


素早くフットペダルを踏み込んで艦体を傾ける。グリムリーパーの左舷が先ほどまでの天上方向を向く。

そうなるとグリムリーパーの腹が皇族軍の方に向いてしまうため、そちらには防御シールドでカバーする。


「おう、そのまま維持してくれ! 全主砲、連射!」


バロックが射撃席素早くパネルを操作し、射撃用の操縦桿を使って飛び込んでくる対艦ミサイルを目掛けてトリガーを引く。


その間も、グリムリーパーの腹を目掛けて、巡洋艦八、九、駆逐艦四から砲撃が来る。

しかし、対艦ミサイルの迎撃を優先しているので、艦体を動かすことも出来ない。防御シールド頼みで耐える。


「よっし終わったぞ」というバロックの声と共に直美は素早くグリムリーパーの軌道を修正する。


「バロック、もう一回同じコースを通るから巡洋艦八、九、駆逐艦四を沈めて」


直美は一旦、コロニーを囲む皇族軍の横を通り過ぎると、再び大きく旋回して、先ほどと同じコースに突入を開始した。


「艦長、グレムリンが到着しました。回線繋ぎます」


「カシア、セレナたちの救出をお願いできるかな。まだコロニーは持つとは思うけど、このままだとコロニーの住民が巻き添えになる……犠牲は少ない方が良いもんね」


直美の考えとしては、このまま、コロニーにセレナが残っていたとしても、皇族軍の砲撃が続けばコロニーごと沈められる。

その場合、セレナたちだけでは無く、住民までもが犠牲となる。

しかし、セレナたちをコロニーから連れ出せば、皇族軍はコロニーを攻撃するよりもセレナを追うことに集中するからコロニーの住民が助かる可能性があるのだ。


「わ、わかりました。それではグレムリンはコロニーに突撃を掛けます」


「よろしくね。こっち方面の敵は抑えておく、でも時間が無いから急いでね」


コロニーの表面に炎が見える。巨大なコロニーは、そう簡単には落ちないだろうが、それでも大きなダメージを受けている事はわかる。


「バロック、巡洋艦八、九、駆逐艦四に砲撃。オオサカ、亜空間魚雷六発用意、目標は重巡四、五、戦艦三」


直美は敵の配置状況を確認しながら、何処を削っていくか考える。本来であればコロニー正面の超大型戦艦やその横で護衛している戦艦一を狙いたいが、こちらを刺激すると、グレムリンの脱出ルートが塞がれてしまう可能性があるのだ。

救援が必要なほどは減らさずに、それでも火力の大きな物だけは叩いておく微妙な力加減が求められる。


「艦長! デカブツから映像通信です!」


毎度のお願いではありますが、

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