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第六十四話


直美は対艦ミサイルが迫り来る中、グリムリーパーの速度を上げて、巡洋艦三隻と重巡二隻が密集している場所を目掛けて天下方向から迫って行った。

当然、迫り来るグリムリーパーを目掛けて巡洋艦も重巡も主砲を撃ちまくって来る。

グリムリーパーは前方に展開した防御シールドで敵の主砲を逸らしながら天下方向から侵入し、そのまま高速で、天上方向へと貫いて行く。


もっとも、グリムリーパーの後ろに対艦ミサイル十発を引き連れての行動だった。


グリムリーパーが重巡と巡洋艦たちの間をすり抜けたあと、グリムリーパーの後ろを追尾していた対艦ミサイルが各艦目掛けて降り注いだ。


巡洋艦や重巡もミサイルが付いて来ていることは、認識していたので副砲による迎撃を必死に試みていた。しかし、その試みは、ミサイル群の先頭に居たグリムリーパーの防御シールドによって全てが阻まれてしまったのだ。


防御シールドで守られた形となった対艦ミサイルが、次々と重巡や巡洋艦に激突し爆発し、更に、その爆発に巻き込まれ誘爆していく。

公爵軍としては、目も当てられない悲劇だった。味方が発射したミサイルによって、重巡二隻と巡洋艦三隻が轟沈してしまったのだ。


「よっし。オオサカ亜空間魚雷の目標セット仕直して、目標は戦艦一、七、八で二発づつ。対艦ミサイル四発を戦艦二にセット。バロック、主砲で戦艦一、七、八を叩けるだけ叩いておいて」


直美はグリムリーパーを反転させると、再び天上方向から、先ほどの爆発エネルギーで乱れている場所目掛けて突入を開始した。


「バロック、撃ちまくって! オオサカ、対艦ミサイル発射! 続いて亜空間魚雷も発射!」


◇ ◇ ◇


戦艦の護衛を一気に失った公爵軍は、再び陣を整えようとしていたが、直美の戦艦二に向けた対艦ミサイル発射を受けて、近くにいた戦艦七と八、および重巡十がミサイルの迎撃態勢を取った。

戦艦二から、やや離れている戦艦一が戦艦七、八の護衛役にまわる。

そんな戦艦七と八に対して、ミサイルの迎撃を邪魔するようにグリムリーパーからの主砲が撃ち込まれる。もちろん戦艦だけあって、しっかりと防御シールドで主砲を防ぐが、戦艦たちの乗組員は副砲で戦艦二を守る仕事と、防御シールドで自分たちを守る事に意識を取られていた。

迫り来るグリムリーパーに戦艦一からも、そして戦艦七、八からも砲撃が行われているが防御シールドを突破できずにいる。


そんな中、戦艦二に向かっていた対艦ミサイル以外に、それも自分たちのすぐ近くに、ミサイルの反応をレーダーが捕らえた。

現在のレーダーシステムには、既に魚雷という物の認識は無くなっていた。その為、突然ミサイルが現れたと判断したのだ。


「か、艦長! ミサイルです!!」というレーダー監視担当が叫ぶが、その声に応える間もなく、艦体は大きな衝撃を受けた。


◇ ◇ ◇


直美は、戦艦一、七、八の前を天下方向に貫けると、再び操縦桿を引いて上昇に移行していく。


「良し、一気に減らせた。オオサカ、亜空間魚雷四発用意して、目標は戦艦二と三。バロック、戦艦二に集中砲火」


天下方向から上昇し、戦艦二の腹下を狙うが、近くにいる戦艦四隻と重巡二隻からも猛攻を受ける。


「艦長! 戦艦一、七、八が轟沈します! 逃げてぇ、巻き込まれるぅー!!」


シノの危険な感じが漂う叫び声を聞いて、直美は素早く操縦桿を横にひねった。


「うわわ、流石に戦艦五隻分の砲撃を受けながら、戦艦三隻分が爆発する衝撃波は無理だ」


「だな。それに、亜空間魚雷も通常空間に出た途端、巻き添えで破壊されるぞ」


直美はバロックの言葉を聞いて戦艦二への攻撃も一旦諦め、戦艦三隻分の爆発エネルギーを回避するため、距離を取ることにした。


「あぁぁ、もう! せっかく戦艦二の周りを削って穴を開けたのに、また穴が塞がっていくじゃない」


直美が正面のモニターを見ながら嘆いた。


「なあ、それなら、外側の艦から亜空間魚雷で撃ち抜いていったらどうだ? どうせ解禁してるんなら、そっちのが楽だろ」


「え? えぇ、バロック! それを早く言ってよ!」


「いやいや、何で俺が怒られんだよ」


「まったく、バロックの言う通りね。何も、そんなに接近しなくても亜空間魚雷は迎撃されにくいんだから、遠距離から打ち込めば良いのよね。しかも公爵軍は私から攻撃を受けて足も止めてるから、ちょうど良い」


そこで直美は射撃コースを選定することにした。亜空間魚雷の発射管は六本、一艦あたりに二発づつと考えると、遠くても三艦以内に戦艦二を捕らえないといけない。


「艦同士が近すぎたりしていると駄目だから、ちょうど、さっき爆発した戦艦の辺りかな。ここ爆発したばっかりだから、密集していないし、ここからだと巡洋艦二と重巡八が手前に居るけど、その次が戦艦二だから時間差攻撃すれば、六本の亜空間魚雷で届くね。良し! 敵が変に動く前に仕掛けよう」


モニターで敵の位置関係を見て射撃コースを決めると、直美はグリムリーパーを操縦して、公爵軍から少し離れた位置についた。


「オオサカ、どう? ここから行けそう?」


「そやな、行けると思うで、後は敵さんが動かんことやな」


「うん。そうだね。それじゃさっそく時間差撃ちをやってみよう! 亜空間魚雷一番、二番で手前の巡洋艦二へ発射!」


その後、少し時間をおいてグリムリーパーから見て、巡洋艦二の向こうにいる重巡八に向けて亜空間魚雷を二発、さらに時間を開けて本命の戦艦に

に対して二発を放った。


「行けぇぇー!」直美の声が艦橋内に響き渡った。



「「「…………」」」


直美の勢いのこもった掛け声までは良かったのだが、その後、艦橋内は静寂に包まれた。


「巡洋艦十二、一発命中です!」


監視レーダを見つめるシノの声が静けさを破った。直美もバロックもシノの声に耳を澄ませる。


「続いて、重巡八も一発命中。――戦艦二、二発命中です!」


「ふぁぁ、緊張した。でも何となく、これが魚雷って感じなんだよね。さぁて、これで戦艦二が旗艦だったのかだね」


「そやな、そもそも、公爵家だけで考えたら六割も損耗しとるからな。普通なら、とっくに撤退しとるで。それでも今まで撤退せんかったちゅう事は、旗艦に乗っ取る指揮官が撤退させへんかったんやろな」


「ふーん。それじゃ、これでうまく行けば公爵軍は撤退するかも知れないね」


「公爵家っちゅうのが、部隊が全滅するまで戦うほどの戦闘狂のアホや無いと思いたいな」


直美とオオサカが話している間に、亜空間魚雷が命中した巡洋艦、重巡、戦艦が撃沈した事をシノが知らせてくれた。



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