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第六十三話


「艦長、空母二隻とも撃沈です! やりましたね。これで大型は戦艦八隻、重巡八隻になりましたよ」


シノが嬉しそうに報告してくれる。しかし、この数もあくまでも公爵家の艦隊だけの話で、進行してきた帝国軍から見ると一部とも言える。

シノの声を聞きながら、直美は次のターゲットに向けて艦を進める。


「次、同じく旋回中の戦艦八。それにしても、指揮官は実戦経験が少ないのかな? 何で、こんなにまとめて旋回指示を出しちゃったんだろうね。私なら戦艦だけ旋回させて他は護衛に回すけど」


「そりゃ、最近は大規模な戦闘なんて無いからな。完全に経験不足だよ。まっとうな艦隊戦なんて俺の生まれる前の話で、ノイ=ヴァルド銀河帝国にとっちゃ初めての経験だ。昔から居たような、経験があって、まともな軍人は政権交代のどさくさで、そそくさと退役するか俺たちのように逃げ出しちまったからな」


「ふーん。熟練の軍人を失ったんなら、ちゃんと戦闘シミュレーション受けとけば良かったのにね」


「それな、ワイも不思議に思って、アウレリア・セラフィムのAIに聞いたんやけど、あれな、使用禁止になっとるみたいなんや。なんでも廃人になる者が、ぎょうさん出てしまってな。そやから、ヴァルディス帝国時代に完全に破棄されたみたいやな」


「へ? 廃人に……ああ、何となく納得するわ。あれは、なりそうだね」


直美は遠い目をしながらも、グリムリーパーを操縦して戦艦八に近づける。


しかし、戦艦八の旋回は完了していた。更に同じく旋回の終えた重巡九も待ち構えていた。


「あら、間に合わなかったね。正対しているのは戦艦八と重巡九だけど、私たちの後ろには、重巡一隻と巡洋艦三隻、駆逐艦二隻が接近中と、ひゃー、やっぱキツイね。空母を落としたの大きいけど、公爵家の戦力は、まだ半分以上残ってるし。とにかく、このままだと囲まれるから一旦、離脱して角度変えて攻撃しよう」


直美は、そう言うと、そそくさと逃げに徹した。その間もバロックは有効範囲に入った敵艦に向かって主砲を発射していく。当然だが、逃げるグリムリーパーを追って砲撃が飛んでくる。防御シールとを後ろに展開しながら逃げまくる。しかし、逃げてはいるものの、バロックは追加で駆逐艦二隻と巡洋艦二隻を

沈めていた。



「カシア、ただいま。そっちも無事そうね」


「直美艦長、お帰りなさい。そうですね。直美さんが大暴れしてくれたので、帝国軍もたった一隻でいる揚陸艦など相手にしている場合では無かったのでしょうね。それでも向かってきた駆逐艦二隻と巡洋艦一隻は倒しておきましたよ」


「艦長、のんびり挨拶している場合じゃないようですよ。公爵家が本気になったみたいで、全艦隊がこっちに向かって来ていますよ。艦数は三十八隻です」


「はっは、そりゃあれだけ引っ掻き回して、空母も沈めちゃったから来るよね。それじゃあ、カシアは後ろに付いて左舷側の駆逐艦四をよろしくね。バロックも同じく左舷側の巡洋艦十四を潰すよ。おそらく敵は包囲網を形成するつもりだろうけど。出来上がる前に潰すよ」


直美は大雑把なコースを決めると、前方に防御シールドを張って突撃を開始した。


「艦長はん、おそらく旗艦は戦艦二や。そいつから、やけに古めかしい通信信号が出とるわ。あの戦艦ビンテージ物ちゃうか? 何か前のグリムリーパーを思い出すで」


「ええ、古めかしいなら内容は解読できる?」


「いや、やろうと思ったら出来るけど、こんな戦闘中に解析なんか間に合わんって、そんな暇があったら、戦艦二を沈めた方が早いわ」


「そっか、作戦の裏をかいたらカッコいかなぁって思たけど。しょうがないね。んで、その戦艦二は……ああ、結構中心にいるのね。これは周りを削らないと届かないな」


大型を落としたい所ではあるが、周りにいる駆逐艦や巡洋艦の所為で、なかなか近づく事も、亜空間魚雷の射線も取れない状態となっていた。

そもそも、公爵軍も空母を沈められたことで警戒を強化したらしく、密集隊形まま近づいて飲み込むように包囲網を形成しようとしている。


そこで直美たちは、一旦大型艦は放置し周辺から寄って来る駆逐艦や巡洋艦を減らす事にした。

直美はグリムリーパーを敵中深く入り込まないように周辺を回って、有効射程距離に入った敵に全主砲の斉射を放って一撃離脱を繰り返していく。

ただ、こうやって外周を回ると敵にとっては良い点がある。それは対艦ミサイルが発射しやすいのだ。味方と敵が接近しすぎていると発射出来なかった対艦ミサイルが味方の外を回っている分には気兼ねなく発射出来るのだ。


しかし、ここで役に立つのがグリムリーパーの後ろをついて来るグレムリンだ。主砲の火力は軽巡並みだが、副砲は多いのだ。本来の揚陸艦の役割として惑星に降り立つときに、航空機の迎撃や地対空ミサイルの迎撃、さらには地上設備の攻撃用と多くの副砲が設置されているのだ。


これらの副砲を使って、直美たちに向かってくる対艦ミサイルの迎撃を担ってくれた。


◇ ◇ ◇


こうしてしばらく、駆逐艦や巡洋艦を主に叩いているとシノから、待ち望んでいた味方が到着したという知らせが入った。


「ヴェルナン子爵、ドマルシェ男爵、トリスタン男爵、リュセール男爵の到着です。これで重巡一隻、巡洋艦一隻、駆逐艦八隻が味方に加わりました」


直美は、味方が到着したという知らせを聞いて期待したが、その戦力を聞くとバタリと艦長席に背中を預けた。


「少しは良くなるけど、火力がなぁ。公爵軍と比べると、ずいぶんと落ちるから厳しいな。シノ、公爵軍の残数は、どんな感じ?」


「そうですね。総数は三十三隻ですね。内訳としては戦艦八隻、重巡八隻、巡洋十隻、駆逐艦七隻ですね」


「うーん。まだ半分も減らしてないのか。特に戦艦と重巡は、ほとんど減って無いね。よーし。オオサカ、亜空間魚雷はまだ在庫ある?」


「心配せんでも、ちゃんとある。工房は常に動かしておいたんや。余っとるぐらいやから、もっと使ってもエエで」


「そっか、それじゃ、バロックには、取り巻きの巡洋艦とか駆逐艦を主砲で崩してもらって、私は重巡や戦艦を狙う感じで」


直美は、公爵軍を周回するように動いていたグリムリーパーを再び、陣の中を抉るような角度で斬り込んで行った。


「バロック、駆逐艦十三と近づいて来る巡洋艦十一をよろしくね。オオサカ、対艦ミサイル四発用意しておいて、目標は重巡七、亜空間魚雷も一発用意、目標は戦艦六。防御シールド前面に展開。それじゃ行くよ!」


直美は、口早に、それぞれに指示を出すと、グリムリーパーのコースを変えて駆逐艦十三に迫って行った。駆逐艦十三の近くには巡洋艦十、十一、並びに重巡七と戦艦六がいる。


数の上で圧倒的な有利な立場の公爵軍ではあったが、既に空母二隻を沈められた事もあり、全力でグリムリーパーを沈めにかかっていた。

駆逐艦十三に向かっていく直美たちに、巡洋艦から対艦ミサイル四発と戦艦からの主砲四発、さらには重巡からも主砲が放たれる。


「おお、大歓迎だね。副砲、対艦ミサイルの自動迎撃」


直美はグリムリーパーを横滑りさせて戦艦の主砲を躱すが、更に、その戦艦から、追加で対艦ミサイルが六発も発射された。


「アカン、艦長はん、このままやと対艦ミサイル落としきれんで」


「うーん、ちょっと、これは熱烈すぎだね。一旦、出直そうかな。機関、最大戦速!」


直美は対艦ミサイル十発を引き連れながら、操縦桿を引き挙げて、天下方向へと最高速度で逃げ出した。



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