第六十話
いよいよ、艦隊決戦の時がやって来ました!
何とか、帝国軍の先遣隊を殲滅できたと喜んでいると、コロニーから緊急通信が入った。
「オオサカ、繋いで!」
直美の中で、セレナの身に何かあったのではという焦りが湧いて来る。
「直美、カストリーヌ軍も裏切ったわ。今、サルモワール軍と共謀してコロニーに攻めに来ていて、コロニー防衛の艦隊と戦闘中みたい。あ! 更に帝国軍の艦隊も来たって言ってるわよ――えぇ! これ帝国軍の本陣みたいよ! とんでもない数が出てきたわ!」
通信相手はエルザだった。セレナの身に直接的な危機という訳では無かったが、戦況は極めて良くない状況のようだ。
コロニー防衛に残された艦隊というのは、銀翼の艦隊で前回の戦闘で傷ついた艦を集めて作られた艦隊のことだ。
その内訳は重巡一隻、駆逐艦二隻だ。一方攻めてきたサルモワール軍は揚陸艦一隻、駆逐艦二隻。元カストリーヌ子爵の軍は重巡一隻、駆逐艦二隻だ。
これだけでも、数の面でも火力の面でも不利な状況だと言うのに、さらに、そこに帝国の主力艦隊、所謂、本陣が来たと言う。
「帝国軍の本陣って何よ! 何処から来たの?」
「これはマズイ。カストリーヌ子爵が裏切ったという事は、この周辺のルミナスチャートが帝国に渡っていたと見るべきだな。そうなると、先ほどの先遣隊は陽動という事か?」
オルヴァンがモニターの向こうでつぶやくのが聞こえた。
オルヴァンと会話中に緊急通信が入ったので繋ぎっぱなしにしていたので、こちらの会話もオルヴァンに伝わっている。
「オルヴァンさん、そっちの艦隊は直ぐにコロニーに戻せる?」
「いや、それが先ほどの戦いで、魔力の消耗が激しく、今すぐに長距離ワープは難しい。しかも残っているのは戦艦四隻と重巡一隻、空母一隻だ。どれも足が遅い。一番早いのは重巡だが、これは大破寸前の状態で、これを向かわせても……」
「オルヴァンはん、空母の艦載機は残ってる?」とオオサカが珍しく私たちの会話に加わった。
「そうだな。残っているが、あれは空母の傍でないと使えんし、その肝心の空母が、一番足が遅いうえに魔力の残量を考えると使えないと思うが」
「かまへん。ちょっとワイに貸してくれへんか?」
「ちょっと、オオサカ、使えない艦載機を借りてどうするのよ。グリムリーパーに縛り付けて持って行っても、使えないんじゃ意味がないよ?」
オオサカが艦載機に拘る意味が分からず、直美は困惑していた。しかし、そんな直美を見ながら、オオサカのホログラムはチッチッチと指を振った。
「まあ、まあ、艦長はん。自分で言うのもナンやけど、ワイは超優秀なAIやで。今さっき、アウレリア・セラフィムから戦闘機の運用方法を教えてもろたわ」
「はぁ? それって大事な軍事機密って奴じゃないの? 何でアウレリア・セラフィムのAIも簡単に教えちゃうのよ。そんなセキュリティで良いの?」
直美は呆れながらも、オオサカが艦載機を使えるなら戦力なると考えていた。帝国の本陣が来たのなら、少しでも戦力を連れて行きたい。
「ええい! もう、四の五の言ってても始まらない。オルヴァンさん、艦載機を貸してください。後はこっちで何とかします」
「わ、分かった。そちらに渡そう。しかし、一機づつグリムリーパーに縛り付けている時間がない気がするが?」
「それは大丈夫や! シノはん、カシアはんに繋いでくれるか?」
急に話を振られたシノが慌ててカシアを呼び出す。通信がややこしい事態となっているが、それもお構いなしだ。
「カシアはん、そっちの魔力は回復できたか?」
「あれ、オオサカですか? はい、待機させてもらっている間に、担当者たちを休ませておいたので大丈夫ですが? 戦闘は終わったのですよね?」
カシアは話に着いて行けていないようだったが、ゆっくり説明している暇はない。そのままオオサカに会話の主導権を預けておくことにした。
「カシアはん、アウレリア・セラフィムの艦載機を収容してもらうで、そやな、……その格納庫の状態やったら、十機が限度やな。それでも無いよりマシや。大至急こっちに来てくれるか?」
オオサカがグレムリンのAIに問い合わせて格納庫の状況を確認して、さらにアウレリア・セラフィムからも艦載機のサイズを聞き出して収容数を決めたようだ。
「オルヴァンさん、聞いていたと思うけど、艦載機を十機貸してください。こっちに向けて射出できますか?」
「良し、分かった。これから出すから、その後のコントロールは任せるぞ」
オルヴァンは、モニター越しにそう言うと、後ろにいた人たちに指示を出し始めた。
グレムリンに艦載機を収容すると、直美たちは、その足で長距離ワープを使ってコロニーに戻ることにした。
「あー、ワープする前に敵の戦力を聞いておけばよかった。まあ、着いたらわかるけど、心づもりがね」
「んなもん、今更知っても仕方がないだろ。それに本陣ってぐらいだからかなりの数になっているだろうな。あのデカブツは確実に来ているだろうし、少なくとも、さっきの先遣隊よりも多いだろうよ。それよりコロニーが耐えているかが心配だな。本格的に攻められたら、さすがのコロニーでも落ちかねんぞ」
バロックもそう言いながらも、落ち着かないようだった。ソワソワと座ったり、立ったりを繰り返している。
「ええ? あのコロニーって数十万人も住んでるのよね。いくら何でも、それを落とすって、そんなの事するかな?」
「いや、帝国軍に盾突いたんだ。やってもおかしくはないぞ。過去に反乱を起こした伯爵家がコロニーごと沈められたこともあるからな。侯爵家のコロニーはデカいが、今回はただの反乱じゃない。国家転覆の可能性もある規模だ。帝国は威信をかけて潰しにかかるはずだ」
直美は、まだまだ自分の認識が甘い事を知った。国家権力というのはバロックが言う様に、時として数十万人の国民の命と皇族の威信を天秤にかけると、容易く威信の方に傾くことがあるのだ。
「まもなくワープアウトします!」シノは、そう言うとワープアウトのカウントダウンを始めた。
軽い眩暈にも似た感覚のあと、通常空間に出現すると、オオサカが素早く正面のモニターに帝国軍の勢力を表示していく。
「な、何だこれは!」
バロックが驚きの声を上げる。それもそのはず。モニターに表示された数は、直美がこれまで見た数とは桁が違っていた。
超大型戦艦一隻、これは分かっていたことなので、まだ良いが、それ以外が問題だった。
戦艦十八隻、空母二隻、重巡二十五隻、巡洋二十七隻、揚陸一隻、駆逐六十四隻を合わせると合計百三十八隻だ。
「クッソ! 公爵家まで出てきているのかよ。オルヴァンさんが来て、更に集まっている最中の全艦隊を合わせても三十六隻だ。四倍近い戦力差があるぞ」
「ふゎー。これは、凄いね。ただ、向こうもさっき集まったばっかりのようだね。囲まれてもいないし、間に合って良かった」
直美は戦況を見て、少し安心した。到着したら既にコロニーが沈んでいるのでは無いかと心配していたのだ。その状況に比べたら、まだマシとも言える。
「いやいや、ちっとも良かぁねぇよ。向こうは集まったばかりでも、こっちは、まだ集まってもいないぞ。これはセレナ殿下を連れて逃げるのも難しいぞ」
「バロックはん、大丈夫や! 艦長はんは、このぐらいの戦力差で戦ったこともあるんやで、シミュレーションやけどな」
「えぇ! マジかよ。それ、勝てたのか?」
「当たり前やん。艦長はんやで! 一勝百八十三敗やけどな」
「大きく負け越してるじゃねぇかよ、おい!」
オオサカとバロックが変な漫才をしている間も直美は考えていた。散々考えに考え抜いた――しかし、勝筋は見えない。
「やるしかない! やるしかないなら、勝たないといけないんだよ! オオサカ、亜空間魚雷用意しておいてよ」
直美が強く操縦桿を握りしめた。
その時――
「空間異常発生! 多数!」 シノの叫び声にも似た報告か艦内を揺るがした。
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