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第四十話

うーん。ちょっと、今日も二回に分割させてもらいます


直美たちの艦隊は、アビスを真ん中に挟んで長蛇の陣のまま、帝国軍の戦艦四と戦艦三の間をすり抜けて行く、その間も帝国軍からの砲撃は無い。

いつ、戦艦からの砲撃が来るかとヒヤヒヤとしながらも、何とも不気味な静寂の中を進んでいく。


「ふぁぁ、なんとも緊張するね。今、どういう状況なんだろうね」


直美は緊張のあまり、独り言のようにつぶやく。


「うーん。あれなんじゃない。フェルマント侯爵閣下とヴァルクライネ辺境伯との間で何か話し合いでもしているとか?」


エルザが珍しく答えた。戦闘に関しては、専門外だと言わんばかりに口を閉ざしていたが、エルザも緊張しているからか、何か話をしたかったのかもしれない。


「でも、ヴァルクライネ辺境伯の旗艦は撃沈したと思ったんだけどなぁ……ひょっとして、旗艦って戦艦一じゃなかったのかな。普通、あの陣形なら、戦艦一の場所が旗艦だと思ったんだけど」


「まぁ、艦隊の陣形で考えると普通はそうやけど、それも艦隊を率いている隊長しだいやからな。ワイら、戦闘が始まっている最中に飛び込み参加したから、その辺がよぉー分からんもんな」


「ふーむ。それもそうだね。旗艦が自分で、私が旗艦ですよって、わざわざ名乗る必要は無いもんね。フェルマント侯爵閣下の艦隊の場合は、セレナがいるから分かるけど」


「ふっふふ、おじい様の艦隊は有名ですから、知っている人は知っていますわ。シノだって空母アウレリア・セラフィムがおじい様の座乗している旗艦だって知っていましたから」


セレナが自分の名前が出て来たからか、フェルマント侯爵家について話してくれた。フェルマント侯爵家は帝国成立以前から続く名門で、代々帝国西方辺境の要地を治める一族だったそうだ。その中でも銀翼の艦隊は、ヴァルディス銀河帝国の要を担っていた。


「おじい様は、昔、銀河帝国軍の将軍を務めていたこともあったそうですの。しかし、母が父と結婚したことで、役職を退いてゴルディア・セントラルを含むいくつかのコロニーの統治だけに収まったのですわ」


貴族社会の複雑な事情があったようだが、簡単に言うと、皇妃の実家で、なおかつ将軍というのは権力が偏りすぎるため、将軍の職を辞したという事らしい。

そして、その将軍の地位に就いたのが、今の帝国軍の皇帝、ノイ=ヴァルド家だったそうだ。



直美は、自分の置かれている状況を周りから教えてもらいながら、艦隊を進めて行く。その動きは、周りを刺激しないように急ぎすぎず、遅すぎず。まるで寝ている猛獣の側を通るように静かに進んでいく。


「両軍に動きが! 銀翼の艦隊から高エネルギー反応! 鋼の獅子艦隊は集結するようです!」


静かな時間は突如として破られた。今まで戦っていたヴァルクライネ辺境伯の鋼の獅子艦隊は直美たちを置き去りにして、後退、いや、戦艦二を頂点とした逆三角形、その様は魚鱗の陣の前後をひっくり返した状態となって行く。


「なんだろう、変わった形だね。こんな形、戦闘シミュレーションには無かったけどなぁ」


直美は自分たちが、火中から抜け出すことに成功したことで、心にゆとりが生まれ、状況を客観的に眺める事が出来ていた。


「そやな。これは……まだ鶴翼の陣に移行している途中なんかもしれへんけど。両者の戦力から考えると、そんな事は、せぇへんと思うしな。それにしては……あん? これ、まさかと思うけど、単純に戦艦二を守るために前方に密集陣形をとっただけとか??」


天上方向から見ると一番左端に駆逐艦六、その横に重巡四、さらに横には戦艦四、一番右端に駆逐艦七が並んでいる。その並びの後ろには戦艦三と重巡三が、これも横一列に並んでいる。そして最後の段には戦艦二と駆逐艦一がいる。

まるで、戦艦二を守るために二重の盾として艦体を並べたような陣形を作りだした。


「うん。そうだね。これは臆病者の陣だね。正面突破を図るなら魚鱗をとるだろうけど、突破出来そうに無いから、前面に盾となる艦体を並べて自分だけ逃げるつもりかも。ここまでしておいて、逃げられると思って居るんだね。」


今、この瞬間、猛獣の立場が変わった。先ほどまで、怯えながら移動してきた直美たちであったが、危険地帯を抜け出した今では話が違ってくる。もはや、奴らを逃すつもりは無い。



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