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第三十二話

いつもよりも、短いですが、金曜の夜なので追加投稿!


直美は、無言のままマイクを握りしめていた。

アンヌと会話していたモニターの画面は既に黒く、アンヌの顔も声ももう映っていない。それなのに、胸の奥には彼女の言葉がいつまでも残響のように響き続けていた。


「……行けって言われたけど、行けるわけないじゃない……」


ぎゅっと拳を握る。

その手には、ほんの数分前まで震えがあった。しかし今は違う。怒りでも、悲しみでもない。強い決意が直美の全身を満たしていた。


「バロック。私……アンヌさんを助けに行く」


バロックを映し出している画面に向かって直美は言った。


『はぁ……やっぱり、そうなるか』


バロックは苦笑して肩をすくめた。アビス艦内の照明が非常灯に切り替わり、赤い光が彼の横顔を照らす。

その眼差しには、あきらめでも呆れでもない。むしろ、どこか誇らしげな光が宿っていた。


「俺も行くさ。アンヌはともかく……お前が無事で帰ってこないと困るからな」


「……ありがと」


短く返した直美は、すぐに指示を飛ばした。


「オオサカ、グリムリーパーの発進準備を。全武装起動、機関全開。あと、回避重視の航路を最短ルートで出して!」


「了解や、艦長はん。……ええ根性やで。けど、明らかに敵がおるところに、わざわざ突っ込むのは阿呆のやることやけどなぁ」


「うん、その阿呆をやってやんよ。だって、見捨てられないじゃない。そうだ! ヴァルディス銀河帝国の第三のルートだよ。今の帝国軍はこのルートを知らないから、警戒が薄いはず、そこを突いて逆襲出来ないかな?」


「そやな。それが一番効果があると思うわ。ほな、グレムリンとアビスに共有しとくわ」


「お前ら、ほんと怖いもの知らずだよな」


バロックは、直美とオオサカの会話をモニター越しに聞きながら笑っていた。



グリムリーパーの艦内を総員戦闘配備の警告音が流れた。

リム=ザップも艦橋に戻ってきて、射撃席につく。シノは管制席。セレナとエルザには特に役割があるわけでは無かったので、最寄りの席、セレナは副官席に、エルザが操縦席に座った。


宇宙の闇を裂いて、グリムリーパーが動き出す。


「バロック、カシア。先ほどオオサカからデータが届いたと思うけど、帝国軍が知らないルートで奴らに逆襲をかけるよ。やつらの位置は不明だから出たとこ勝負になるのは否めない。しっかりと敵味方を識別して、手あたり次第ぶっ潰すよ!」


敵の規模も分からないし、味方がどれだけ残っているのかもわからない。だが直美は、恐れてはいなかった。頭の中には、アンヌの不器用な笑顔。そして、あの時の言葉——


「ちびっこ海賊、か……だったら、その名に恥じない戦いをしてやる!」


「はっは……直美さんが本当の海賊に見えてきましたね。意外と適正があるのかも知れませんよ。ただ、グレムリンは戦闘機動に耐えれないなので、牽制役に徹しますね」


カシアが、相変わらず胃が痛そうな顔をしながら言った。グレムリンは艦橋のスタッフを総入れ替えしたので、まだ慣熟訓練も出来ておらず、今の時点で戦闘機動は無理があった。そういった意味では敵の牽制などに徹し、自分が撃沈されない事を優先した方が良いのだ。


「シノ、第三ルートを使ってベストホロウの近くにワープアウト。リム=ザップ、ワープアウト直後一気に牽制砲撃! バロック、主砲を撃てるだけ撃って! さぁて、海賊どもを助けに行くよ!」


「はい!」「「おう!」」


「まもなくワープアウトします! 三、二、一!」


シノのカウントダウンが終わると共にグリムリーパーの艦体が、燃え上がるような光を帯びて空間を歪ませながらワープアウトし、まさにその瞬間、戦場が始まった――


「帝国軍の艦隊識別番号は……あ! “鋼の獅子”ヴァルクライネ辺境伯の艦隊です」


艦隊識別番号は、直美が撃沈した戦艦セントリオンに乗っていたとされるエリシア・ヴァルクライネ辺境伯令嬢の実家、ヴァルクライネ辺境伯の所有する艦隊という事だった。


「艦隊規模は戦艦四隻、重巡五隻、駆逐艦八隻。鋒矢ほうしの陣形です」


管制席のシノが素早く監視レーダーでとらえた敵の艦種を伝えてくる。


「オオサカ、敵艦にナンバリングしておいて!」


「はいよ。番号付け終わったからモニターに反映しとくで」


オオサカが次々と敵艦に番号を割り当てていく。


「シノ、味方の状況は?」と直美が聞くとシノは既に確認を始めていたようで、すぐに答えが返って来た。


「戦艦一隻、軽巡一隻、駆逐艦一隻、フリゲート艦が一隻です……ルクレールさんのバッド・ドーラが見当たりません」


シノが海賊たちの艦種を伝えてくれたのは良かったのだが、直美は、誰が、どのような船に乗っているか知らなかったことを思い出した。ただ、少なくとも軽巡のアンヌが生き残ている事だけは理解できた。


「バッド・ドーラは、豪華客船を改造して武装しただけの船だからね。艦長のルクレールと同じで、見た目だけはキザなんだけどね、防御力は紙同然なのさ。だから、だまし討ちには使えるけど、こんな艦隊戦では役に立たんさ。既に撃沈されたか、とっとと逃げたかだね」


ちょっと辛辣な評価も入っていたが、操縦席からエルザさんがバッド・ドーラの情報を教えてくれた。


「あ、あの軽巡、アンヌさんのブラッディ・ローレライだよね。マズイ! 追われている。機関最大戦速! リム=ザップ牽制射撃始め! オオサカ、対艦ミサイル四発発射準備! 防御シールドは後方に展開」


直美はそう言うと、グリムリーパーの最大速度で帝国軍の最後尾にいた戦艦を目掛けて突撃を開始した。

体制的には、逃げるブラッディ・ローレライを鋒矢陣形の帝国軍が追いかける形となっていた。そこにグリムリーパーが出現したのだが、その場所は、鋒矢の陣形では一番の弱点である後ろ、ようするに旗艦の背後を取った事になる。


「バロック、カシア! 帝国艦隊の最後尾にいる戦艦に攻撃をかけます! 全艦で集中砲火を!」


「はいよ!!」「了解です」



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