表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/83

第十七話


直美はユーグと話しながら、手は忙しなく動いて、オオサカに文字で指示を出していた。


「それで、その偽者とやらを引き渡した後は、私たちも始末するって訳ね」


『なあーに、そんな事はしないさ、こちらから救命艇と操縦士を出すので、それに乗せて放り出してくれれば良い。その場で指定の口座に報奨金を振り込むよ。救助艇がこちらに着く前に、君たちは逃げる事も可能だろう』


――艦隊がゆっくりと包囲網を形成中。デブリ帯まで待てないみたいやな。高エネルギー反応あり


オオサカからのメッセージが正面のモニターに表示される。


「ふっふふ。どうやら、時間稼ぎはお互いに難しみたいですね!」


直美はそう言うと、マイクのスイッチを切った。


「オオサカ、最大戦速! 小惑星一番の陰に左から滑り込むよ! 第一、第二主砲は左旋回、第三主砲は右旋回」


セレナが選定して番号を振ってくれた小惑星に向かって、猛スピードで突っ込んでいく。


監視レーダーに映っている超大型戦艦一隻、巡洋艦三隻、駆逐艦七隻の速度も上がった。

駆逐艦はⅤ字型に広がりながら迫って来る。


「防御シールド、最大展開!」


「本艦七時の方角から対艦ミサイル四! 巡洋艦二隻が発射したわ」


直美の声のすぐ後に、セレナからも声が上がった。


「副砲、自動迎撃開始。デコイ発射準備!」


直美の声に従って、副砲のパルスレーザーの発射音が艦内に鳴り響く。


ドォォン! ドォォン! というミサイルの爆発が衝撃波となって、グリムリーパーに届く。

直美は操縦桿を握りながら、目は進行方向に設置されたモニターを睨みつけて、音だけで対艦ミサイル二発が副砲から発射されるパルスレーザーによって迎撃出来たと判断した。

正面モニターには前方の一番と命名された小惑星が迫って来る。


「ミサイル残り二、追ってきますわ。さらに駆逐艦三隻から高エネルギー反応!!」


「デコイ発射! ドリフトして小惑星に回り込みかけます。セレナ、しっかり掴まってよ。三、二、一、ハイ!」


ドンというデコイが発射される音がしたかと思うと、体が急に横ブレるような感覚に襲われる。Gキャンセラーでも対応できない慣性が働き、体をシートに押し付けてくる。

グリムリーパーはメインエンジンと補助エンジンをふかせながら、艦尾を横滑りさせながら小惑星の陰に回り込むと、その後ろを、グリムリーパーを狙っていた高粒子のビームが、機動をとらえきれずに宇宙のかなたに消えていく。

また、グリムリーパーを追っていたミサイルの内一発はデコイにつられて何処かに向かって飛んで行き、残り一発は追尾に失敗して小惑星に当たって爆発する。


「はぁぁ、助かりましたわ……」


セレナがため息をつく。正面モニターには小惑星一番の表面が大きく映し出されている。その距離感は目と鼻の先のように見える。


「まだまだ! 駆逐艦が来るよ! 五、四、三、二……左舷第一、第二主砲発射! 右舷第三主砲発射! 全速後退、仰角マイナ二十!!」


直美の声に従って、主砲が高密度の粒子を放ち、そのまま艦尾から滑り落ちるように後退する。


「左舷の駆逐艦一番艦、爆散! 同じく二番艦大破! 右舷の三番艦小破! わぁ! デスカリオンから高エネルギー反応!」


直美は、セレナの声を聞きながら、操縦桿をひねり込むと、足元のペダルを目一杯踏み込んだ。


「正面! 小惑星一番から熱源反応ぉぉ!!!!」


セレナから悲鳴のような声が上がる。


「くぅぅ!! 避けきれ!! 正面、最大防御!!」


船体は直美の操縦に従って後退しつつも、戦闘機さながら半ひねりをうつ。


ドガァァン!!


直美たちの目の前で小惑星一番が爆散する。惑星の破片が質量兵器となって防御シールドを叩く。

ガガガという大きな嫌な音と共に、警告音が鳴り響く。


「オオサカ、船体のダメージは?」


素早く警告音を止めながら聞く。


「船体腹部の装甲が一部剥がれただけや。戦闘および航行に問題無しや。さすが、超大型戦艦やな小惑星を主砲の斉射で吹っ飛ばしよったわ」


「了解! デブリ三番に逃げ込むよ」


直美の判断は早い。だてに、百六十八時間ぶっ通しで戦闘訓練を受けていない。


「駆逐艦二番艦、小惑星の爆発に呑まれて爆散。デスカリオンが巡洋艦を引き連れて向かってきますわ」


「はぁ、味方を巻き込んでも気にしないのか。ほんと、良い性格しているよね」


再び、後退してデブリ三番の陰に逃げ込みながら、死なないための戦略を考える。直美から見て、戦略シミュレーションが出している最適ルートでも生存率は低そうに思えた。


直美たちが脱出方法を考えている間も、巡洋艦を引き連れたデスカリオンは巨大戦艦特有の高出力の防御シールドでデブリを押しのけながら向かってくる。

完全に力業であったが、だからこそ、対抗手段が無い。グリムリーパーの全主砲を使って一斉射撃を行っても、デスカリオンの防御シールドを突破することは出来ない。お互いにその事を分かっているだけに、デスカリオンは安心して突撃してくるし、グリムリーパーは逃げる事を優先する。


「そうだ! オオサカ、ビリヤードってわかる?」


突然、直美は今の状況とは関係が無いような話をオオサカに振った。


「ん? なんやそれは、何かの単位か? それとも技の名前なんか?」


「あぁ、通じないか! えっぇーとね。無重力で修理していた時に、私がすっ飛ばした鉄パイプが後ろで跳ね返って戻ってきたことがあったでしょ。あれと似たような事を、このデブリ帯で出来ないかな。それで、あのデカブツの横からぶっつけたいんだよ。でもさすがに一度や二度の跳ね返りぐらいなら、すぐにバレるから、いくつかのデブリを連鎖的にぶつけ合いながら最終的にあのデカブツに当てたいんだよ。デブリの進行予測などを駆使して何とか出来ない?」


「はぁ~。めちゃくちゃな事を言うてくれるな。そんなもん…………出来るに決まっとるやろ!! ちょっと待っとき…………よっしゃ。出来た! 正面モニターに出すで」


正面モニターには、直美の無茶ぶりを実現するために出された最適コースと敵の予想行動が表示された。しかし、実際にこのコースを飛びながら、自分たちは致命傷を受けずに。それでいて場合によっては、囮となりながらも、敵の攻撃を避けて、敵の攻撃を目的のデブリに命中させる必要がある。

ここで大事なのは、なるべく自分でデブリを攻撃しないことだ。そんな不自然な事をすると、企みに気づかれる恐れが出てくるのだ。

だからこそ、グリムリーパーはなるべく逃げ回っているように見せないといけない。


直美の艦長席に付いているモニターには、この作戦の成功率が三パーセントであると表示されていた。


「うっわぁー自分で言っておきながら、すんごい難しそうだわ。だけど、諦める訳にはいかないよ! じゃあ、行きますか!!」



ぜひ、ログインしてブックマークと下の★★★★★から評価をお願いします!

つまらないと思った方は、★一つでも評価つけてくれると勉強になりますので、

よろしくお願いします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ