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ぼっちなヒロインの育て方 ~傷ついて孤独な女子のために俺なら出来ること~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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淡浜フェスの準備が始まる

「わああああ……本物マジで可愛い!」

「橋下にある服飾メーカーさんが特殊レース取り扱ってて、それを使ってるみたい」

「薄いのに柔らかくて可愛い~!」


 俺の横で明日海と芝崎さんは、淡浜岬神社で取り扱いはじめたお守りを見て目を輝かせている。

 今日は岬ホテルで行われる淡浜フェスの合同説明会に来ている。

 毎年淡浜フェスの二週間前に行われるもので、淡浜周辺に住んでいる高校生は全員参加するものだ。

 話していると巨大な部活リュックを背負った有坂がきた。

 

「ういーす。はじまるな~」

「ういっす、部活終わりか」

「今日はみんなここだから、ここまで走ってくるのが練習になった」


 部活のジャージを着た有坂は「あちいー」と水を飲んだ。

 うちの高校は夏休みの登校日がなくて、この淡浜フェスの手伝いが登校日みたいなもんだ。

 夏休みがはじまって二週間以上経っていて、会ってないヤツには全く会ってないので「おお」と軽く話す。

 話していると横にスススと田見さんが来た。


「おはようございますっ……!」

「おはよう。重そうだね。パソコン持って来たの?」

「はいっ……! 音楽ラインの説明にはもうソフトの画面を見せるのが一番はやいと思いまして……!」

「かなり古いノートパソコンぽくない? 大変だ」

「そうなんです、私デスクトップで、古いのしかなくて……急遽昔お父さんが使っていたのを借りました。重いですっ……!」


 田見さんはかなり大きなノートパソコンを抱えていた。

 そして学校モードの少し高音で小声で、俺たちの前だけで地声なんだな……と少し嬉しく思う。

 ホテルの大広間の前にマイクを持った子が立って、


「じゃあすいません、はじめますー」


 と言った。それは大波で、俺たちは「おお……」と少し驚く。

 高校生の仕切りも大波がするのか……と思ったら、横には大波のお父さんが見えた。

 観光協会の偉い人だから俺も顔は知っている。

 大波はマイクを持って、


「まずは全体説明から始めます。事前にいただいたアンケートで外せない時間帯とお仕事内容は確認しているので、その他の時間で何をお願いしたのか……は総合サイトのほうにあるので、確認しながら進めていこうと思います。総合サイトの責任者渋谷さんから説明がありますので、よろしくお願いします」

「はい渋谷です。ではログインIDとパスワードは学校から貰ってると思うので、内容の説明に入って行きます。IDで入れなかった人そこのQR読んでください。そこからメールアドレスでログインも可能です」


 俺たちは淡浜フェスのサイトにある総合サイトにログインして説明を聞いた。

 淡浜フェスは数年間からIT化していて、淡浜フェスに関係することはすべてこの総合サイトにアップされている。

 ここを見れば全部の書類があり、個々のIDがあるので連絡もここにくるし、連絡が入ったらメールが届く便利システムだ。

 これも観光協会がITに強い所と組んで始めたみたいで、正直めっちゃ便利だと思う。

 俺たち高校生の主な仕事はとにかく体力勝負の会場の設営と、めちゃくちゃ人がくる花火大会の案内がメインだ。

 でもまあ日給7,000円出るから、ここら辺りではかなり高額なバイトに入る。だからみんな文句言わずに手伝うけど!

 でも……有坂はファイルを見ながら、


「出た……体育館からの椅子運び……数500って去年より多いだろ、どーなってんだ、マジで」

「今年は有料席増やしたんだろ? あの砂浜の上に台作ってたぜ。あそこに運ぶんだろ」

「坂の上?! グロ……。椅子もって砂浜から歩くのマジでグロい……これだけでお腹いっぱいだろ」


 俺と有坂はため息をついた。

 春岡中学と高校の男子の7割は、とにかくパイプ椅子を運んで有料席を作る仕事をさせられる。

 これは兄貴が春岡にいた時から変わらない仕事だ。

 俺の横で明日海がファイルを見て目を輝かせた。


「わ。すごい、この作務衣販売決まったんだ」

 芝崎さんはファイルをのぞき込み、

「淡浜グランドホテルの作務衣を、淡浜フェス用にして売り出すみたい。可愛いよねー!」

 田見さんはそれを見て、

「裾に波が入ってるパンツ形状なのに、後ろがリボン……! 可愛いのに機能的ですごい……!」

 明日海は見ながら、

「えっ、私たち三人、最終日の花火大会は、これ着て案内係だって」

「やったーーー!」


 三人は嬉しそうに話している。

 え、俺たちは……? と有坂とファイルを見たら、裏でビール運びらしい。

 今どきのコンプラに引っかかるだろ、女子だけ! と思ったら、俺たちのクラスのイケメンも案内枠だった。

 コンプラじゃねえ、差別だ! と有坂とぶーぶー文句を言った。噂によると春の体力測定で割り振られているらしい。

 来年から手を抜こうと有坂と誓った。

 全体の話が済んで、俺たちはそれぞれの打ち合わせに向かう。

 田見さんは俺の横にタタタッ……と来て、


「すごいですね、学生とか、地元の人たちがメインで動かすんですね」

「俺は親が道の駅で仕事してるから、小さい頃から淡浜フェスは手伝うもの……みたいのがあるけど、他からくるとびっくりするよな」

「はいっ……でもこういうお祭りみたいなのに参加するの夢だったので、嬉しいですっ……!」


 そう言って田見さんさんは笑顔を見せた。

 俺と田見さんは急遽足された音楽スタンプラリーの打ち合わせに向かう。

 淡浜フェスの打ち合わせは、今年のが終わったら来年のがすぐに始まると聞いているので、こんな突然思いつきで言って通るのか……? と思ったけど、かなり柔軟性が高くて、とりあえずやってみて、良かったら来年もっと良くしていく……という方向性らしい。

 ホテルの会議室に入ると、中にさっきシステム関係で説明していた渋谷さんが居た。

 俺は頭を下げて、


「失礼します。蜂谷優真です」

「はじめまして渋谷です。東京から引退してのんびりしようと思ったら大波さんに仕事ぶち込まれてる、じじいSEです。君が春岡高校アニメ研究部∞の部長だ。いや~~見たよ、アニメ」

「あっ……ありがとうございます。総合サイト、めちゃくちゃ使いやすいです」

「それは良かった」


 そう言って渋谷さんは笑顔を見せた。

 総合サイトがなかったころは、なんかお手伝いのお願い……みたいな紙が配られていた。

 そんなのみんな無視して、当日声をかけられたところで適当に手伝う……みたいな感じで、バイト代金なんて出なかったし、町は結構な量のバイトを雇っていたらしい。

 サイトを作って効率的に動き始めたのは去年くらいからで、俺たちはこういうのに慣れているから分かりやすくて良いと思う。

 渋谷さんは音楽も好きみたいで、


「田見さん! ネイロ聞いたよ。すごいね。いや、音楽のスタンプラリーって聞いた事ないよ。これ成功したらシステムとして売れる良い試みだと思うんだよね。この規模なら失敗しても怒られないし、良いテストができる。今どんな感じ?」

「あっ……はいっ……説明難しいと思ったのでファイルを持ってきましたっ……」


 田見さんはパソコンを開いてアプリ画面を見せた。

 そこには俺も少し見慣れてきたDTMの画面があり、田見さんはそれぞれのラインだけを再生しながら説明を始める。


「ネイロ曲というのは、ネイロの音声は一本じゃないんです」

「へえ。人間の声だと……合唱が基本みたいな?」

「そうです。まずこれがメインライン。これで普通に歌っているんですけど……これがメイン裏。少し……抑揚がついてます。これがメイン右……ヘッドホンで聞くと……あっ、どうぞ……はい、右側だけに鳴るものでダブラーという音が重なるものを大量にかけてます。そしてこっちがメイン左、こっちもダブラーを使いますが、低めにダブルのを入れてます。これはハモリラインです。これがあるかないかでかなり違います。必須です。これがオク下、オクターブの下を走る音です、かなり音を歪ませると深みが出ます。これを全部一気に再生すると……」

「……おおおおおお。すごい。めっちゃ深みがある、声で音楽になるね」

「! そうなんです。声で作る音楽……それがネイロなんです」


 渋谷さんは白髪が目立つかなり年配の人に見えるのに結構なオタクらしく、楽しそうに田見さんの話を聞いた。

 ひとつの歌声に聞こえるのに、最低6つもラインがあるのか……と俺は横で聞きながら驚いていたけれど。

 渋谷さんはファイルを見ながら、


「読み込んで音を追加していくと、さすがにファイル量がえげつないから、スタンプラリーで回った数で、開放される音楽を決めるのが良いと思うんだ」

「なるほど」

「スタンプ一つだと、この曲。スタンプふたつ集めるとこの曲……みたいにスタンプの数で開ける音楽を決めて、全部集めると最後の曲が出てくる……みたいなフォーマットを考えてる」

「良いと思います!」


 田見さんは笑顔を見せた。

 渋谷さんは、


「スタンプひとつで終わる人もいると思うから、それは想定して作ってもらったほうが良いと思うけど」

「はい。さっきお話したようにネイロは音声ファイルが多いので、全てのラインにネイロをいれる……言うなれば輪唱にするので、ひとつでも声をいれるようにしてます」

「じゃあこのアイデアは、スタンプラリー向きだったね。面白いな~~。こっちとしてはURLに飛べるコードを作って、内容の説明くらいなんだけど、動画って音だけ? 映像はどうするの?」

「え?」


 田見さんはキョトとした顔で俺を見た。

 映像……確かに……。

 俺は渋谷さんの横に座って、


「映像……作れそうな場所なのかな。現在スタンプラリーを置くと決まっているのはどこなんですか?」

「一覧URL……ほい送った」

「ありがとうございます。なるほど……淡浜と橋下の間にある観光名所30カ所……30! すごいですね」

「ね。絶対そんなに誰も回らないと思うけど、全部回ると金城酒造のオリジナルビールが貰えるみたいよ、今回から」

「浮遊0さんが回りそうですっ……!」


 そう言って田見さんはクスリと笑った。

 金城酒造は自分の所の名前でビールを出して無い。

 雪見さんの旦那さんは金城酒造の人だけど、まだ大ボスになるには遠くて(なんと上に3人もボスがいる)、オリジナル商品を作る権利はない。

 でも雪見さんと一緒に若い人が飲める日本酒入りのビールを開発している……とは聞いてたけど、その中の実験作が出てくるみたいだ。

 りんごのフレーバーの日本酒でありビール……。確かに若い人向けって感じがする。

 回る場所は、淡浜動物園、金城酒造、岬公園、足湯、夕日が見える淡浜など、有名な観光地ばかりだ。

 田見さんはパソコンをいじりながら、


「全部で10個くらいの音楽ファイルを作ろうと思ってます」

「じゃあ10で。もう決めてくれると助かる」

「そうします」


 俺はそれを横で聞きながら、


「なんか簡単に撮影して作ります。俺も行ったことある場所ばかりだし」

「助かる。撮りっぱなしの景色とかで全然良いと思うよ。いや、楽しみだな、音楽のスタンプラリー。同時演奏とかもしてみたいね。Bluetoothで連動するライトあるじゃん。あのシステム使ったら色々可能だと思うんだよね。大きめのロックフェスで買って貰えたらデカい技術だと思うんだけどな」

 田見さんは手をふりふりさせて、

「ライブのライトとかも、最近はBluetooth連動ですよね」

「そう。あの音楽バージョンみたいなの、システム上は可能なんだよね」

「ほおお……」


 田見さんは目を輝かせた。

 もしこれが成功したら来年やりたいな~と渋谷さんは楽しそうに言った。

 来年も再来年も、ずっとここで一緒になにか出来たら最高に楽しいけど、とりあえず今回色々やってみようと打ち合わせを終えた。

 すげー楽しそうだけど、撮影はiPhoneで、少しは絵があったほうが良いか。

 イラストを清乃にどれだけ頼めるか……。

 その後大波も来たので、詳しい打ち合わせをした。色々楽しみだ!

 


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― 新着の感想 ―
おお、システムの人出てきた。昔はプログラマー30歳定年説とかありましたが、コーダーならともかくどんどん定年は延長されているんですよねw AIコーディングとかも出てきていますが、明確に要件定義と指示を出…
 定年過ぎても一線級のエンジニアとかすごいなぁ~  頭柔らかいし。
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