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ぼっちなヒロインの育て方 ~傷ついて孤独な女子のために俺なら出来ること~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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コーラはもう無いけれど


「道の時点で、もう懐かしい~」

「半年前まで普通に通ってただろ」

「いや、激動の半年すぎて、もうすっごい前みたい。やっぱ自転車で行けるのって最高に楽だよねー」


 そう言って大波は自転車を立って漕いだ。

 大波に本部で「音楽のスタンプラリーはどうだろう」と提案した結果、そもそもスタンプラリーはもともとあるんだし、そこに音楽を足すのはOK。

 なにより地元の高校生と、ライブ関係者が作る曲なら、企画自体が面白いし、もっと早く言ってくれたら大きく宣伝できたのに……という感じで即OKが出た。

 観光協会の娘である大波が提案したのも大きい気がする。大波の親父さんは淡浜フェスの責任者のひとりだし。

 曲を作るのは田見さんたちだけど、YouTubeにUPするなら映像が必要になる。

 話している最中に、うちの春岡高校のパンフレットが去年のものだと気がついた。

 学校近いし、新しいのを持って来ようかと提案したら、大波が「私も行きたい!」と言い出したので、一緒に行くことにした。

 大波は半年前まで同じ建物にあった春岡中学に通っていたのに、もう懐かしいみたいで、大騒ぎしながら自転車に乗っている。

 グイと漕いで、


「ていうか、電動自転車だと学校行くの楽すぎる」

「そっか、それレンタルのやつか。引っ越したんだもんな。橋下、駅がでかいな-」

「駅ビルでおしゃべりできるの、マジでデカいよ。マックあるの最高~」

「マックはマジで羨ましいな、あとミスド」

「それ!」


 そう言って大波は笑顔を見せた。

 大波は再婚のタイミングで橋下に引っ越した。

 この前制服を借りに行ったところで、電車だと45分くらいかかる。

 海から離れるけど、駅はデカくて、淡浜で生活している俺からしたら巨大都市だ。

 大波のお母さんと大波は、高校からそっちに引っ越した。

 俺は自転車を漕ぎながら、


「高校は家から近いの?」」

「バス。これが結構混むんだよ。自転車のが楽なのにーと思ってるけど、お母さんとお父さんが『道が細いからヘルメットするなら』って。高校生女子に通学時にヘルメットさせるの、さすがに鬼畜じゃない? 髪の毛がぺたんこになるよ」

「春岡も中学生はヘルメットしないとダメになったぞ」

「え~~~やだ~~、みんな守ってる~~?」

「守ってない」

「だよねえ」


 そう言って大波は笑った。俺たちが高校生になった今年から、春岡中学校は自転車で登校するならヘルメット必須になった。

 あ、二学期から清乃が学校に通うならヘルメット買っておいたほうがいいかな。母さんに聞いてみよう。

 考えながら走っていたら学校に到着した。大波は「前と同じところに止めちゃおう~っと」と楽しそうに中学生の所に自転車をとめた。

 今は夏休み中で、学校に来ているのは部活の子だけなので、自転車置き場はガランとしている。

 大波は俺のほうにきて、


「喉渇いちゃった。自販機でコーラ買っても良い?」

「そういえばコーラなくなったな」

「えっ、何になったの?!」

「三ツ矢サイダー」

「え~~~、まあいっかあ……」


 そういえば大波はいつも自販機でコーラを買っていたな……と思い出す。

 あまりの暑さに俺たちは冷たい飲み物を買って、汗をかきながら学校内に移動した。

 春岡高校もスタンプラリーには協力的で、学校入ってすぐの所にある事務局に大々的なコーナーが設置してあった。

 これは毎年生徒会の人たちがやっていることは知っている。

 俺はそのコーナーにあるパンフレットを確認すると、そこにあるのは今年のものだった。

 俺は事務所の人に声をかけて、束で持って行きたい……と思って顔をあげたら、


「えっ、大波さん? あ、蜂谷くん、おつかれー!」

「中田先生~~。わああ~~中田先生だ~~。お久しぶりです!」

「わーー、どう? 生田は。あ、そっかお父さん淡浜フェスの人だ!」

「そうですー。だから優真についてきちゃいました。わあ、中田先生~~」


 大波は嬉しそうに中田先生に向かって叫んだ。

 夏休みの間は当番で学校に来るらしく、今日は偶然中田先生が事務局にいた。

 俺と大波は事情を説明して、新しい学校のパンフレットを貰った。

 パンフレットの写真が数年ぶりに変わって、学校から海が見える写真になった。

 俺はその写真すげー良いなと思ってたから、変わって無いことに気がついた。やっぱ淡浜の高校きたら「海が見えるんだ-」のが良いだろう。

 中田先生は事務局から自販機があるコーナーに出て、


「久しぶりだね、大波さん」

「中田先生~。映像をありがとうございました。助かりました」

「いえいえ。実は蜂谷くんも手伝ってくれたんだよ」

「聞きました! 私、春岡の通信、すっごく推してて、それもコーナーにPOP出してます」

「嬉しいなー。結構生徒数増えてて、来年から先生がもうひとり増えるかも知れないの。あー、映像作れる人でありますように、カメラ前に出られる人で、口が回って台本読めて、ネット環境の設定に強い人でありますように、Adobe全部出来る人でありますように~~」

 そう言ってる中田先生を見て俺は、

「求める人材のレベルが高すぎるんじゃないですか」

「通信部だよ?! ネットで配信してるんだからそこら辺りの技術は必須でしょう。家庭科というか、法律系に詳しい人も欲しい……!」

 中田先生は楽しそうに話した。

 大波は三ツ矢サイダーを飲み、

「やっぱいいなあ……春岡……。生田は進学校だから、テストと模試ばかりです。私もお父さんの立場上淡浜フェスの間はこうやって自由にできますけど、終わったらその足で夏期講習です。まだ高一なのに……と思うけど、私の偏差値だと高一で上げて行かないと厳しいみたいで。まあまだ部活させて貰ってるから良いほうなのかな……」


 そう言って大波は目を伏せた。

 大波は俺たちの中で一番勉強が出来たけど、進学校だとそう甘くもないみたいだ。

 中田先生は大波の背中を撫でて「いつでも気分転換にきてね」と声をかけて事務局に戻った。

 俺は少し元気がなくなった大波とこのまま別れるのは少し違う気がして、


「さっき有坂の自転車あったぜ。バスケ部いるかも」

「!! でも私、生田の女バスだよ~? 覗いて怒られないかな~~? もうすぐ夏季大会だけど」

「女バスはいないっぽいけど」

「じゃあいくー!」

 

 そう言って大波は笑顔を見せた。大波は春岡中学でずっとバスケをしていて、有坂とも仲が良かった。

 体育館に行くと、ちょうど休憩時間みたいで、水飲み場に有坂がいた。

 大波と俺を見て、


「おおおお~~。大波じゃん。うお、久しぶり。夏季出る?」

「出る出る。だから女バス居なくて良かった。淡浜フェスの本部にいるから顔出したの」

「おー、俺もいなり寿司無限売りするよ」

「有坂寿司大人気だから、私も楽しみにしてるよー。本部のお弁当も全部有坂寿司なんだから!」

「え? 大波じゃん」

「今井先輩~~。お久しぶりですー。え、焦げましたね?」

「いやちょっと俺白すぎたかなって」

「良いと思います~」


 大波を男バスに連れて行ったら、すぐに囲まれた。

 大波はさっき「模試ばかり……」と呟いていた時とは全然違う表情で、楽しそうに話題の中心で笑顔を見せていた。

 有坂が横にきて、


「ういーす。淡浜フェスで再会したの?」

「そうそう。道の駅にポスター貼りに来てた」

「そうだよな。観光協会のお偉いさんと、お母さんが再婚したんだっけ。いや、橋下の観光協会でっかいもんなー。うち月イチで黒塗りの車が大集合するんだけど、あの会合は観光協会と商工会議所の人たちらしいから。なんかすげーよ。「龍が如く」みたい」

「それはヤクザじゃねーか」

「眼光が俺たちとは違うんだよ。その時は親父も朝から魚見に行って店に立つし、レベチっぽい」

「へえー。なんか大変そうだな」

「大波は中学の時、優真のこと好きだったから、引っ越し無念だったろうな~~」

「てめえ」

「まあまあ、過去の話ってことで。じゃあ練習始まるわ」


 そう言って有坂はコートの真ん中に戻っていった。

 中学の時から有坂はずっと「北里は優真好きじゃん?」と言っていた。

 告白されたことは言ってないけど、間違ってなかったことも伝えていない。言う必要ないだろ。

 大波は高校のコーチや監督たちにも軽く挨拶して、俺と春岡を出た。

 大波は自転車の鍵を開けながら、


「いやーー、ありがとう、楽しかった。行きたいなーと思ったけど、やっぱ高校違う所いくと顔出しにくいよ。夏季大会前に話せて良かった! 今度練習試合でも……って言われたから楽しみ。みんなと試合したい~。生田も春岡ほどじゃないけど強いんだから」

「冷房付き体育館三つだっけ? それは熱いな」

「ね。春岡中学校と一緒に使うから、予約大変だったの覚えてる。でもうん、やっぱ空気が好き。なにより海が見えるのもいいなー。でもね、淡浜はもっと観光地として伸びるし、お金入ってきたら道路とか整備できるし! 私結構楽しくて。ほらもう淡浜道が酷いよー、あははは!」


 大波は自転車を漕ぎながら、でこぼこした道にタイヤを取られて笑いながら言った。

 俺と大波は話しながら駅まで行った。そして大波はスマホを取りだして電車の時間を確認しつつ、


「じゃあまたすぐ連絡する。スタンプラリーの設置場所とか方法とか曲とか。お父さんに今日ちゃんと話聞いてくるね。チケットの状態とかも」

「おう。頼む」


 大波はスマホをふりふりしながら、


「また優真とこうして一緒に動けてすごく嬉しい。やっぱ淡浜いいなーって思うし、なにより優真と一緒にいると楽しい。話してて一番気楽だよ。私が大変そうだったからバスケ部連れてってくれたんでしょ。ありがとう、やっぱ優しいね」


 俺はここでちゃんと言おうと思い、


「いや、謝りたくて。LINEが消えたのに、そのままでごめん。いや……バレンタインのこともあったし、期待させるかも……とか考えた、ごめん」

「バレンタインなっつ! でも今もあのとき告白して良かったと思ってるよ。すっきりしたもん。LINEのことも謝ってくれるのも優真って感じ。普通は無視だよ」

「いやなんか、しっかり言わないと居心地悪くて。これから何度か会うだろうし」

「うん。また、すぐに来る。それに! テトラポッドくんのキーホルダーは、ここにあるんだよ」

「おおーー。付いている。良かった……のか? これで」

「テトラポッドくん、すごく人気あるんだから」


 大波はそう言ってテトラポッドくんのキーホルダーが付いているポーチを見せてくれた。

 今見ても、テトラポッドに顔がくっ付いているだけの分かりにくいデザインで、ゆるキャラ! という感じで俺には正直意味が分からない。

 大波は俺に手を振って駅に入って行った。

 俺は新しくなったパンフレットを持って淡浜フェス本部に行き、パンフレットを新しいものに変更した。

 そしてもう暗くなりはじめた淡浜を歩いて離れた。今時期は淡浜フェスの準備が始まって、いつもみたいに静かじゃないから、少し居心地が悪い。

 俺はなんとなく田見さんのスタジオがあるほうに歩き出した。

 こっちは別荘地だけど、淡浜フェスのタイミングくらいから別荘に来る人たちが多くて、ほぼ全ての別荘に電気が点いている感じがする。

 今はスタジオが使えない時期だから、行っても入れないんだけど……と歩く。

 たった一週間使えない……それだけだ。あと二日もしたら元通り。

 それでも「やっぱりみんなで集まれないのは淋しいな」と思うほどに、俺はスタジオが好きみたいだ。

 歩いていたら、別荘地に繋がる砂浜のところに田見さんがいた。

 そして、


「っ……あはははっ! 穴掘ってるっ……!」

「蜂谷さん、おつかれさまですっ……!」

 

 あまりに通常営業の田見さんに俺は吹き出してしまって、横に座った。

 


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― 新着の感想 ―
 優真の優しさが出てるなぁ。  で、通常営業の田見さん(^^)
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