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ぼっちなヒロインの育て方 ~傷ついて孤独な女子のために俺なら出来ること~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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君がいるから

「雑談用のBGM……ですか」

「ほら私、授業の配信してるでしょ? お昼休みに毎日お弁当配信してるの」

「えー……すごいです。こういうの見ちゃいます」

「これが授業より人気なんだよね。これに合わせて起きてくる生徒もいるんだから」


 そう言って中田先生は配信動画を付けた。

 それはこの教室で中田先生がお弁当を食べている配信動画だった。

 色とりどりのお弁当の時もあるし、おそばを持って来て、温かいスープが入るものにそばつゆを入れたものを持って来たり、お弁当の種類も色々あって見ているだけで楽しい。基本的に先生とお弁当が写っていて、生徒たちの声が響いている。

 まるで一緒にお弁当を食べているかのような動画で、私はそれを見て、


「ひとりで家で食べている人も、これだとひとりじゃないですね」

「そうなの! なんか『明日のお弁当はうどんにしようかな』っていうと、それに合わせて家で作ってくれる人もいて」

「ええー、楽しいですね。こういうの、すっごく楽しいです」


 私は動画を見ながらふんふんと頷いた。

 今日は蜂谷さんが作文で賞を取ったということではじめて通信部の教室にお邪魔した。

 パソコンがたくさんあって、机の数は少なめ。でも制作物がたくさん飾ってあって、あまり教室っぽくない感じが心地良いなあと思う。

 この前清乃ちゃんが「実は学校に行きたいの」と私だけに! ぽろりと話してくれたのもあり! サーチな気持ちで付いてきた。

 でも私ごときに何かできることはなく……と明日海さんと黒板にラーメンを描いたけれど、明日海さんが描く絵が上手すぎて出番なし。

 パソコンを見ていたら「雑談用のBGMを依頼出来ないかな。ちゃんとお金払うよ」と中田先生に言われた。

 私は首をふって、


「すいません……お仕事として作曲は受けてないんです」

「えーー、依頼たくさんあるでしょう?!」

「依頼はいただくんですけど……私わりと……好きに作りたい人で、人の依頼を受けるの、向いてないんです……」

「あー、なるほど。アーティストだ」

「いえ……たぶんコミュニケーション力に問題があり……」


 私は言いながら自ら沈んでいった。

 正直作曲の依頼はかなりある。作曲作詞アレンジRMIX……毎日何かしらのメールは来ている。

 でも私は依頼で曲を作らない。一度かなり好きなVTuberさんに依頼されて「やりたいっ!!」と思ったんだけど、そう思った瞬間にフォロワーの多さに怖くなって一瞬で断った。50万人とかフォロワーがいる人が歌う曲とか……どういう曲にしたらよいのか想像も出来ない。

 私の曲を聴いているのは、私の曲を気に入っている人たちだけだ。

 私が作った曲を聞きたいと思ってフォローしてくれている。

 だから私の曲をお出しできる。でも依頼者は違う。依頼者の曲を聞くためにフォローしている人たちだ。

 つまり私が依頼者にマッチした曲を……50万人が認める曲をっ……なんだそれそんな曲存在するのか、ワケがわからないっ……!!

 別の顔を見せたくて私に依頼してくる人もいるだろうから、話し合えば良いかも知れないけれど、それはコミュニケーションの塊で……、


「つまり私には無理なんです」

「なるほど。じゃあ作曲の授業をするのはどうかな」

「ええっ?!?! 私が、授業?!? いえいえいえいえいえいえいえいえ」


 首をぶんぶんと振ったら三つ編みが顔にビタビタと当たった。

 私の横に明日海さんが来て、

「えーー。田見ちゃんがどういう風に曲作っていくのか、めっちゃ興味ある」

 反対側に蜂谷さんも来て、

「需要しかないけど、そういうの無料で教えていいものなの?」

 私は首を振って、

「簡単ですよ。特にBGMは」

 そう言って通信部のパソコンに入っていたDTMソフトを立ち上げて、

「まずはテンポ。雑談だと100。そこにフット入れて……これくらい。そこに軽くピアノを入れましょう。それをリピートさせて……」

 私がサラサラ……とベースを作ると、中田先生と明日海さんと蜂谷さんは同時に、

「いやいやいやいや」

 と首を振った。コントみたいで思わず笑ってしまう。

 私はチャッチャと作業しながら、

「雑談用BGMくらいだったら、一時間で作れます」

「いやいやいやいや」

 と再び三人が首を振った。息が合いすぎている。



「えーーー。そんなのめっちゃ受けたい授業だよー。受講したい~~」

「え……だったら今から教えますよ」

「いやいや田見ちゃん。違うんだよ。こう田見ちゃんがひとつ動作して、それをみんなで見てさ、こうかなって、こうしたらああなるのかなって、みんなで一緒に作っていくのが楽しいんだよ」

「そんな……私に人の意見を聞きながら何かを進めていくような超能力はありません……」

「超能力!! うける!!」

 

 学校を終えてスタジオに入り、中田先生にDTMの授業を……と言われたことを清乃ちゃんに話したら爆笑されてしまった。

 そんな依頼も受けられない私が人とコミュニケーションを取りながら進めていくなんて夢のまた夢だ。

 私がそう言うと横で蜂谷さんが、


「……いや。だから中田先生は提案したのかも」

「え?」

「依頼って、お金が挟まったやり取りじゃん。コミュニケーションの最大値が必要になると思うんだよね」

「はい」

「授業は田見さんが先生で、指示を聞いて皆が作業して、聞いてくる。コミュニケーションの基礎というか、こうしたら、こういうことを聞いてくる……っていう原点的な部分ではある気がする。あのクラスの最大人数は20人程度。田見さんがこれから先仕事として作曲も受ける練習として先生は提案してくれたのかも」

「そうですかね……そうでしょうか? 教師がコミュニケーションの基礎……? そんなの、本当です……? 適当なこと言ってません……?」


 私はじと……蜂谷さんを見てしまった。

 そんなのコミュニケーション上位の人がすることで、私みたいな雑魚には絶対無理な気がする。

 じとー……と蜂谷さんを見ると、蜂谷さんはケラケラと笑って、


「田見さん意外と、俺が言うこと『そうですかね』って受け入れてくれたのに、ここにきて疑った、笑う」

「これはちょっと信じられないですね……蜂谷さんが見てみたい……それだけの欲で言ってませんか」

「そうだよ、俺が聞きたい、興味ある。だから上手に言ってみたんだけど、ダメ?」

「ダメですね、ダメダメ。もうそう簡単に私を騙せません」

「あははは!!」

 

 蜂谷さんは爆笑してるけど、こればかりは鵜呑みにできない……。

 それに本当に私は自分勝手にはできるけど、人に教える才能なんて皆無だと思う。

 清乃ちゃんはレンダリング画面をチラリとみてから私のほうにきて、


「え? どんな風に作ったの? 私も中田先生のお弁当配信毎日見てるの。私は朝ご飯だけど。だから田見ちゃんの音楽流れたら嬉しいな」

「えへ、えへ、えへへ……。まずここでテンポを決めるんですけど……」

「テンポって曲の速さってこと?」

「そうです。ネイロ曲は150~180,はやいものだと250もあります。これが曲のベースになります」

「それって、まずどんな曲を作りたいか……って考えてから決めるの? どっちが先?」

「最初に決めます。180がベースですね。BGMなら100。これはそう決まっている……に近いものだと思います。人が心地良く感じるテンポというのは昔から変わってないんです。バロック時代にはまだメトロノームはなく脈拍や歩く速度からテンポを決めていたんです。つまり心地よさ=テンポなんですね。その頃から長くみんなで決めてきたルールみたいなものがテンポです」

「ほら。田見ちゃんは聞かれたらできるんだよ。聞かれないから自分のペースで進めるだけ」

「……なるほど」


 私は頷いた。

 そもそも人が何を疑問に思っているか……が分からないから、パーーッとやってしまうのだ。

 聞かれるとわりと答えられる。清乃ちゃんは私の顔を見て、


「田見ちゃんは言葉をたくさん知ってるから、考えてることを言葉にするの苦手じゃないよ。本読んでるから知識もある」

「えへへへ……清乃ちゃんが一緒ならやります、えへへ……」

 

 私はもじもじと指先をいじった。

 清乃ちゃんに簡単に教えていたら、明日海さんが、


「レンダリング終わったよー!」


 とこっちに向かって叫んだ。

 明日が交換RMIXの提出日で、今日中に終わらせよう……! と決めて、夜遅く、この時間まで作業していた。

 今日終業式で、明日から夏休みだからちょっと遅くなってもアリかな……なんて思いながら。

 できあがった交換RMIXの動画をワクワクしながら再生すると、ちゃんとカルマさんの曲に私のポエトリーが足された曲が流れてきた。 

 そして歌詞のノイズに合わせてさくらちゃんが出てくる。この歌詞に合わせたノイズというのがかなり良いと私は思っている。

 私はやっぱりカルマさんの曲にお邪魔している……という感覚がものすごく強くて、自分自身のノイズという歌詞を持ってお邪魔する……すごく私らしいと思う。

 そして現れたさくらちゃんは付かず離れずカルマさんの横にたち、煽り、歌う。

 ただ空虚に向かって叫んでいたカルマさんの横に寄り添っているようにも、一緒に戦っているようにも見える作品になった。

 そして何より……前は別の空間で仕上がりを見ていた清乃ちゃんが横にいる。

 清乃ちゃんは今まで見たことないような厳しい表情で動画をチェックしていた。

 カッコイイ可愛い……。私はこっそりと清乃ちゃんを見て「ほええ……」と思った。

 なにしろ私の曲は結構前に完成していたので、今回は余裕がある。

 それもこれもネイロ組の時に大失敗したので、もう今回は早めに動いた。私は学ぶ女、えへへ。

 何度も見ていた清乃ちゃんは頷いて、


「うん。これでいい。完成だと思う」


 私はパチパチと拍手した。


「すごい、すごく良いと思います、かっこいい、かっこよすぎる!」

「田見ちゃんのポエトリーが良かったからだよー。そうじゃなかったらこんな絵にしようって思いつかなかった。それに明日海ちゃんデザイン完璧すぎたーー。まじでカッコイイよ。お兄ちゃんも3Dありがとう。前よりすっごく上手になってると思うんだけど!!」

「いやマジで清乃が喜んでくれるからさ……お兄ちゃんめっちゃ頑張ったよ……少し慣れてきたかも……いやごめんかなり無理した……」


 と白目を剥きながら言っている姿が面白くて笑ってしまう。

 さっそく私はできあがったデータを運営に送る。これで明日にはサイトに公開される。

 はあ……楽しかった……。そして明日見えるカルマさんが仕上げてくる私の曲も楽しみだーと思っていたら、私の横でタン……と清乃ちゃんが立ち上がって、


「お兄ちゃん。通信の終業式って明日じゃん。私、学校行こうかな」


 と言った。

 


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― 新着の感想 ―
清乃ちゃん、うまく学校に行けますかね。 この成功体験が、背中を押してくれますか。
聞かれたことに端的でない答え方ができるってことは、コミュ症そんなにひどくないんだと思います。 きっと自信と経験値と度胸が足りないだけ。 一皮剥けると化けそう。
感想一覧
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