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ぼっちなヒロインの育て方 ~傷ついて孤独な女子のために俺なら出来ること~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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37/85

色んな田見さんが見えてきて

「お兄ちゃん、おはよう」

「清乃。起きてきたのか」


 朝ご飯を食べて玄関で靴を履いていたら、二階から清乃が起きてきた。

 清乃は髪の毛を耳にかけながら、 


「田見さんに淡浜から少し行った所にピアノが置いてあるカフェ教えてもらったの。ノンカフェインの紅茶がテイクアウトできるみたいだから、お昼に行こうかなって」

「良いな」

「生活時間帯ちゃんとしないと、夜田見さんがスタジオいるタイミングで会えないし」

「そっか。じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい」


 そう言って清乃は玄関で俺に手を振ってくれた。

 田見さんのスタジオに行ってから二日。清乃はすごく楽しかったみたいで「田見さん、これが好きなんだって」「夜のお散歩はやめたけど、まだ淡浜にはいるみたい。夜大丈夫なのかな?」と、毎日ポロポロと田見さんの話をしてくれる。

 俺が知らないことを話しているみたいで、なんだかそれが『清乃にも俺が知らない世界がある』のがハッキリ見えて嬉しい。

 


 学校に到着すると、もう席に田見さんが座っていた。

 そして俺を見つけて何度も小さく頭を下げる。

 実はこれも清乃から聞いていた。「田見さん、声出して挨拶出来ないから、何度もひょこひょこ頭下げちゃうんだって。私もしちゃうからわかるー」と。

 俺はそれを思い出して小さく手を振って挨拶すると「!」となり、机の上から三センチくらい手を持ち上げて、机を撫でるように手を左右にふりふりしている。なんだろうあれは。

 舞台裏を清乃から聞いていると、田見さんの理解度が上がって楽しい。

 


「では、グループワークをはじめていきます。本日の議題は、自分が考えてきた竹取物語の続きを語って、褒めてもらう……、そして人を褒める……です」


 1.2時間目はグループワークだ。

 どうやら自分で竹取物語の続きを考えて、それをセッションするのがグループワークみたいだ。

 先生は前に立って、


「まだ形になってなくてもいいよ、こんな感じーで。それに対してみんなが意見を言おう。そしてなるべく否定しない。広げる、褒める、認める。絶対否定されないと分かってるのが最初の一歩に大切なの」


 それはすげー分かる。

 中1の時にはじめてグループワークでセッションしたんだけど、否定されるのが怖くて言えなかった。

 でも否定されないと分かっているなら、わりと安心して「自分」を口に出せる。

 じゃあ始めるか……と今回も司会の俺は周りを見て、


「じゃあ誰かから……と言っても誰も最初に言いたくないと思うから、俺から」

 そう言うと、横で芝崎が小さく拍手して、

「偉い。こういう時に先陣きれるのすごい」

 同時に田見さんも顔の前で小さく手をトントンして、

「すごいですっ……怖いのにっ……!」


 褒められて嬉しいけど、むしろこういう会をスムーズに進めるための常套手段な気がする。

 司会だし、こういう時「誰が先にする……?」という空気になるのを知っているから先に言うだけだ。

 俺はiPadに触れながら、


「俺は竹取物語の手紙を天に近い場所で燃やしたのが気になってさ。そこを繋げてみたいなと思った」


 教室内を歩いていた先生が俺たちの班にきて横に立ち、


「なるほど。途中まで使うけど、そこの理由を掘り下げるんだ」

「はい。わざわざ天に一番近い所で燃やしたのはなぜだろうって」

 俺の言葉に生駒は、

「わかる~~。どうせ燃やすなら、適当に庭でいいじゃん~って思っちゃう」

 俺は頷いて、

「そう、なんで移動するんだろ……って考えて、じゃあ手紙に何か書いてあったのかな……って想像するのはどうだろう。たとえば『薬と一緒に天に一番近いところで手紙を燃やしたら、私と空で繋がって話せる』……って書いてあったとか」


 生駒と芝崎と田見さんが目を輝かせて、


「ロマンチック~~~~!!」

 有坂が俺の横で目を平らにして、

「少女漫画かよ……うわ、ダメだ、批判しちゃった。えっと褒める……少女漫画だ~~~」

 それを聞いて生駒と芝崎と田見さんがギロリと有坂を見る。

 有坂は慌てて、

「『少女漫画かよ』をディスったと思うお前らが変だろ! その場合お前らも少女漫画ディスってるぞ」

 芝崎さんは「確かに」と小さく微笑んだ。

 俺は続ける。


「そう書いてあったら、高い場所で燃やすのも理解できるかなって。不治の薬と共に焼いたんだからさあ、きっと地球と月にホットラインが開いてさ、やり取りができるようになった……みたいな。会える会えないじゃなくて、他のラインを開くために焼いた……みたいなハッピーエンド」


 俺がそう言い切ると田見さんはさっきより大きな拍手をパチパチとして、


「素晴らしいと思いますっ……!」

 芝崎さんも頷きながら、

「もう会えないかもしれないけれど、もう一度繋がるために燃やした……ってするのがすごくロマンチック」


 芝崎のその言葉に有坂は手をあげて、


「はいはい! 次俺、俺が考えたのは、山頂で薬を自分の身体にかけて、焼身自殺!」


 生駒と芝崎と田見さんは、俺の話を聞いて目を輝かせていたが、ぴた……と動きを止めた。

 そして田見さんは何度かまばたきをしながら、


「メリーバッドエンド……という枠は一定層に人気があるので、良いと思います」

 芝崎さんは、

「それはそれで……なんかこう、派手な終わり方……にはなりそうだね」

「だろ?! やっぱ物語の最後はさ、意味が分からないじゃなくて、ド派手な爆発炎上が良いと思って!」


 有坂は目を輝かせた。

 山頂で帝の焼身自殺エンドはなかなかド派手だけど……俺は有坂を見て、


「だったら、かぐや姫を迎えに来た乗り物……? がガス欠で途中で落下するとか?」

 有坂は手を叩いて笑って、

「ガソリンなのか?! あの乗り物」

 横で芝崎さんが目を輝かせて、

「あ、じゃあ薬がガソリンだっていうのはどう? 帝が焼身自殺したと思ったら、自身が乗り物になって月に飛んで行っちゃうとか」

「意外性があって派手で良いな」

「でしょう」


 有坂と芝崎さんは楽しそうに笑った。

 それを見ていた生駒は少し面白くなさそうに唇を尖らせて、


「なんかふたりだけで楽しそう! 私のを聞いて! 私は月で手紙が捨てられたことを知ったかぐや姫が、クソ帝のことをすぐに忘れて月でハーレムエンド!」


 それを聞いた田見さんは目を細めて、


「正直あの色々な贈り物は、地球の人間をからかってるみたいに見えるので、実はそういうさっぱりした性格だという考え方も、ありだと思います」

 生駒は目を輝かせて、

「え~~。絶対ビッチって言われると思ったのに、田見さん優しいねえ~~。だってもう帰れないっぽいし、もう良くない?」

 それを聞いた有坂は、

「いやでも、不死の薬を置いていったんだから、心を残してるじゃん、ちゃんとしてるよかぐや姫は」

「それを捨てたのは帝じゃん。やっぱクソだよ。せっかく置いていったものを捨てるとかさあ」

「じゃあ生駒は俺が前にあげた手袋、まだ持ってるのかよ」

「え? そんなの貰ったっけ? え、覚えてない、貰ってないよ、そんなの~~絶対貰ってない~~」

「はい自己紹介オツ」

 有坂は生駒に向かって何度も首を振った。

 そういや去年の冬あたりにふたりは付き合ってた気がする……有坂……お前は悪く無いよ。

 俺は田見さんに向かって、


「田見さんは?」

「はい私は、実はかぐや姫は月を脱出するのは100回目で、次の脱出を考えている月脱出RTAみたいな感じだと面白いなって思います」

 

 その言葉にそこにいた全員と横に立っていた先生も同時に「はあ?」と首を傾げた。

 やっぱり断トツで意味が分からないのは田見さんだ。

 田見さんはせっせと、


「あの贈り物が変だなって昔から思っていて。だって変なものばかり。はじめて地球に来たならもっと普通のものを要求すると思うんです。富とか名声とか、美味しいものとか。だからはじめて地球に来た人じゃないんじゃないかって。何度も何度も来て、何か試しているんじゃないかって」


 芝崎さんは手を叩いて、


「やっぱ田見さん面白い。何度も試した結果があれじゃないかと」

「次こそ成功させたいと月で作戦を練っているんですけど、それは帝に残した手紙にヒントが隠されてるですっ」

「なにそれ、面白そうすぎる。単純に続き読みたい」


 そう言って芝崎さんはケラケラと笑った。

 田見さんは俺と話すようになった今も図書館通いを続けていて、今は『か』の行に到達。

 最近かぐや姫も読み直したらしく、非常に意味が分からない……いや、熱が籠もった話をしていて、やっぱり面白い。

 グループワークが終わり俺がトイレに行こうとすると、俺の腕をググッ……と生駒が引っ張った。

 その目はじとー……としている。


「生駒。どうした」

「ねーえー。なんか有坂と芝崎さん、怪しくない?」

「怪しいって? 何が?」

「仲が良いってこと! ちょっと前から芝崎さんの席に有坂が行ってるんだよね。ほら、今も、ほらほらほら!」


 生駒はそう言って俺の腕をグイグイと引っ張って窓の隙間に連れて行った。

 見ると芝崎の席の横に立って話している有坂が見えた。

 図書系女子の芝崎と、バスケ部陽キャの有坂……? 俺は生駒さんを見て、


「芝崎さんは有坂みたいな男に興味ないだろ。前のグループワークで仲良くなったんだろ?」

「私、触角生えてるの」


 そう言って生駒は自分の頭に指を2本、ピンと立てた。


「は?」

「恋愛触覚。恋を始めようとしている男を見ると触角がピコピコ動くの」

「じゃあ自分に向かってずっとピコピコ動いてるだろ」

「他の人がしようとしてると分かるの! 有坂、芝崎さんのこと気に入ってる」

 

 そう言って生駒さんは窓の隙間からじっと有坂を見た。

 生駒さんが有坂にまだ未練を持ってるのは、触角がない俺にもなんとなく分かる。

 でもそれが有坂だけに対してなのか、自分から離れそうな男に対してなのか分からないから……なんとも言えない。

 俺は、


「有坂が好きなら、もう一回告ってみればいいじゃん」

「まともに聞いてくれないよ。スるだけの女だと思われてるし」

「……違うの?」

「有坂は私を好きなの! 好きでいてほしいの!」


 よく分からん。その程度で有坂がもし芝崎さんを少し気に入ってるなら見守ってやれよ……と思う。

 俺は生駒の方を見て、


「あれを帝だと思え。もう見捨てろ」

「ばーーーーーか」

 

 そう言って生駒さんは俺に向かって舌を出して去って行った。

 俺言ってること、絶対間違ってないと思うんだけど?!



 

 


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― 新着の感想 ―
 脱走したかぐや姫を連れ戻しに来る月の車…  いいかも。
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