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ぼっちなヒロインの育て方 ~傷ついて孤独な女子のために俺なら出来ること~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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28/85

顔を上げて

「見た?! 130票入って45位スタート。初参加組のランキングでは5位じゃん!」

「見ましたっ……! すごく嬉しいですっ……!」


 朝の部室。今日も靴があるけど鞄がないので「部室にいるんだ」と来たら、やはり田見さんが居た。

 先日応募したネイロ組は200組以上が応募していて大盛況。

 俺たちみたいに高校生が部活で応募している所もあって、見てて楽しい。

 昨日から投票が始まり、俺たちのネイロは順調に再生されていて、初参加者のみで作られるランキング内では5位スタートという高順位だ。

 なんといっても再生数がもう2000を越えていて……! 

 そんなこと今まで一度もなかったからすげー嬉しい。

 その喜びを一緒に分かち合いたい……と思って部室に来たら、田見さんはせっせと作業していた。

 俺はiPadをのぞき込む。


「……もう作業終わったのに、何してるの?」

「グループワークです。今日の発表だから、ラストスパートですっ!」

「え? もう終わって……うっわ……すっご、なにこれ」

「楽しくなってしまいました」


 そう言って田見さんが見せてくれたのは、お地蔵さんを置くことで、ゴミが軽減された場所一覧だった。

 ここら辺は観光地なので、とにかくゴミが勝手に捨てられる。

 観光客がくる=ゴミが増える……は地域でもいつも問題になっていて、俺たちがバイトしてる道の駅には超巨大なゴミ箱が置いてあるけど、家庭ゴミどころか、粗大ゴミまで捨てられて、その費用は莫大だ。でも海に捨てられるより良い……という判断で道の駅にある店全体でそれを負担している。

 田見さんのパワポには、ここから反対側……それこそ30キロ近く離れた海水浴場の話題が書いてあった。


「ここもゴミがすごくて。だからマスコットキャラクターを置いたみたいなんです」

「あ。これみたことある、テトラポットくん。この雑すぎる名前と造形なんだ? ……って明日海と笑ってたんだけど」

「このマスコットキャラクターをゴミ箱近くに置いて、お土産屋さんでキーホルダーを売り始めたところ、そこにゴミが放置されるのが減ったようです」

「あんな変なキャラを置いただけで!」

「こっちは岬なんですけど、木の鳥居を作っただけで、夜中に入る人がいなくなったって」


 田見さんはここら付近(いやでもかなり遠くまで)行って、色んなことを調べてきたようだ。

 俺はそれを見ながら、


「夜中に行ってない?」

「日中に自転車で碧と行ってます。碧はトレーニングがあるので」

「あー、トライアスロン。え? 田見さんはやってるわけじゃないのに……?」

「はい。でもコーチは熱心に誘ってくださってます。姉妹で世界目指そうと」

「言いたい気持ち分かる」


 と、苦笑した。田見さんの体力があればガチでイケそうだ。

 俺は田見さんが作ったスライドを見ながら、


「この部分だけでも、田見さんが発表したら?」

「いえ。発表はリーダーの蜂谷さんが、お願いします。あの……世界には適材適所があるんです。私は曲が作れます。清乃さんは絵が描けます、明日海さんはデザイン、そして蜂谷さんは、リーダーです」

「! ……おう」

「私が不安になった時、困った時、蜂谷さんが冷静だから、ちゃんと話しかけてくれるから、ネイロ組も応募出来たんです。だから発表は蜂谷さんがするんです」

「……りょ」


 そう言うと田見さんはふにゃと微笑んで、スライドの仕上げをし始めた。

 これがもう本当に精密でしっかり作ってあって、俺はそれを見ながら「(リーダーって言われるの……なんだか嬉しいな……)」と思っていた。

 そして作業を終えた田見さんは嬉しそうに共有フォルダーにデータを入れた。

 


「では。蜂谷班、発表お願いします」

「はい」


 グループワーク発表の時間になった。

 俺たちメンバー、俺、有坂、生駒、芝崎、田見さんは立ち上がって前に出た。

 田見さんは朝の元気はどこへやら。前に出されるとなると俯いて顔を上げない。

 でも朝言っていた言葉を俺は思い出す。こういうのは俺の仕事だ。

 俺が前に立つと、パソコン前で作業していた芝崎がスライドを流し始める。


「冬に淡浜に観光客を呼ぶ……これを討議した結果『無理』と判断しました」


 先生がケラケラ笑う。


「結論が早いな」

「ならば淡浜付近……岬ホテルのほうはどうだろう……そこから俺たちにグループワークは始まりました」


 芝崎がスライドを進めていく。

 そして『寒すぎてあり得ない』→これには気温と風速などデータを提示して、町中のどこよりも冬の淡浜が寒いことを説明。

 みんなで凧揚げをして、一秒で凧が吹っ飛んでいく動画もつけた。

 そんなことしなくても淡浜に住んでる俺たちはみんなマフラーや帽子を海に呑まれて知っているけど。


「岬ホテルの奥と、ここのドライブスルーの駐車場奥は繋がっています。そしてドライブスルーに車を止めたお客さんたちが岬ホテルの奥にきて、そこで宴会をしたり、ゴミを捨てたりしていて、みんな困っていました」


 撮影してきたゴミの写真を何枚も出し、岬ホテルにも協力を要請して、ホテルの駐車場にも捨てられるゴミを見せた。

 そしてホテル側としても、夜中に岬に入り込む人たちに困っていることもインタビュー映像で流した。

 これは芝崎のお姉さんに協力してもらって、支配人に出てもらった。本当に困ってるみたいで語ってくれて助かった。

 スライドを進めて、動画を出してもらう。


「でも俺たち、ここに行って気がついたんです。この岬……森の中に入った瞬間に風が止むんです」

「あ~~。わかる。あそこ入った瞬間に静かになるよな」


 先生が手を叩く。

 俺は頷いて動画を再生する。

 悲鳴を上げながら駐車場を進む生駒……でも森に入った瞬間に風が止んだ。

 ここは一番悲鳴がデカい生駒が適任だろうと任せたんだけど、音割れするレベルの仕事をしてくれた。

 

「そこで田見さんが考えついたんですけど、ここは『風が止む場所』として聖域設定にしてしまえば良いんじゃないかと」

「なるほど。あっ、あそこボロボロの神社みたいなのなかったっけ」


 先生が言うので俺は頷いてスライドを見せる。

 

「自殺者が多く、そのために置かれたものでした。でもここを『風が止む神さまの場所』とあらたに定義して、苦労もいつかは止まる……ようなお守りを岬ホテルで売り、この祠をその場所にすることを提案します」


 そう言って俺は生駒が集めていたお守りの写真を出した。

 そこには主に恋愛成就……恋を見つける……運命の出会い……よく見ると恋のお守りばかりだけど、難を逃れる……みたいなお守りもあった。

 それはどれも可愛くデザインされていて、クラスメイトからは「可愛い~」と声が上がった。

 俺は次に田見さんが作ってくれたスライドを出して、


「ちなみに浜崎海岸でも同じようにゴミ問題に悩まされていたのですが、テトラポットくんを置いたら……こんなにゴミが減ったようです。以上蜂谷班のグループワークとなります」


 俺がそう言い切り、画面はエンディング動画に切り替わった。

 すると教室中から拍手が上がった。

 先生は頷き、


「蜂谷班、スライドも高密度でよく調べていて良い。なにより場所を聖なる所として持ち上げて、そこのゴミを減らそうという提案、そしてその他の場所を調べてきたのも偉い。提案実地検査、そしてなにより、それを実行している所に赴いて、どうなっているのか先に実証結果を出してくるのも偉い。評価A」

「よっしゃあ!」


 これで一学期のグループワークの判定は楽できる。

 生駒は飛び跳ねて喜び、有坂は歓声を上げた。スライドをいじっていた芝崎も嬉しそうに微笑み、俺は頭を下げた。

 前に出たことで石のようになっている田見さんは小さく頭を下げた。

 先生は、


「じゃあひとりずつ、コメント」

 有坂は、

「いや、マジでゴミヤバかったんで、キレイになると良いなと思いました」

 生駒は、

「お守りのページ私です~。私お守りめっちゃ詳しいので、オススメ教えてくださいー!」

 芝崎は、

「ありがとうございました」

 と頭を下げた。

 俺は俯いて震えている田見さんの横で、

「俺たちはここでの生活が長くて、冬の淡浜に人を呼ぶなんて考えも付かなかったけれど、高校からここに引っ越してきた田見さんが、岬ホテルのほうだったら……と提案してくれて、このグループワークになりました。ご清聴ありがとうございます」

 そう言って頭を下げた。

 本当はもっともっと田見さんがすごかったのを語りたかったけど、俺の横でもうこれ以上小さくなれないほど小さくなっている田見さんが次に話すのに、これ以上褒めるのはプレッシャーかも……と思ってしまった。

 次は田見さんがコメントする番だ。

 でも田見さんは俯いたまま、頭だけ下げて終わろうとしていた。

 俺は田見さんの肩にツンツンと触れて、今流れているエンディング画面を見るように促した。

 その写真はエンディング用に撮影してきた写真だけど、奥のほうに小さく清乃が写っていた。

 田見さんはその写真を見て、壇上で顔を上げた。

 そして息を吸い込んだ。



「……あのっ……この班で活動できてっ……良かったですっ……!」



 と小さいけれど、それでも地声で言った。

 みんなは少しだけ驚いたいたけれど、自然と拍手が上がった。

 田見さんはすぐに俯いて頭を何度も下げた。

 発表が次の班になり、俺たちは席に戻りはじめた。

 俺は三つ編みで顔を隠しながら歩いている田見さんの横を歩きながら、


「清乃にさ、田見さんがここまで来てるって行ったら、私も行きたいって言うから一緒に行ったんだ。清乃、めちゃくちゃ久しぶりに自転車乗った」

「……! すごいっ……!」

「あの岬でずっと海見てたよ」

「そうですかっ……私、声が出せて、良かったですっ……でももう……変だったんじゃないかって……やっぱり消えたい……」

「どうしてそうなる~~?」


 俺の横に来ていた芝崎と有坂はケラケラと笑った。

 田見さんは握って隠れてた三つ編みを少しだけ緩めてふにゃ……と笑った。

 

 

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― 新着の感想 ―
›蜂谷さんは、リーダーです  わかる! まとめ役というより調整役っぽいけど、そういう人がいると違うの!  あと、やる気的な牽引役とか。  蜂谷くんはそういうタイプっぽい。
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