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ぼっちなヒロインの育て方 ~傷ついて孤独な女子のために俺なら出来ること~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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一緒にバイトしながら


「田見笑衣子ですっ……よろしくお願いしますっ……!」

「おお。よろしくね。大丈夫? 結構大変だけど」

「体力にだけは自信がありますっ!」

「ならいいけど……じゃあこの山お願いしようかな。全部衣類だから、そんな重くないけど量あるから。店番号の所に移動させてね」

「わかりましたっ……!」


 田見さんは倉庫入り口に積まれている段ボールをヒョイヒョイと台車に乗せた。

 初日だから俺も横で手伝う。


「大丈夫? 話し足りなくて連れてきちゃったけど」

「アルバイト、憧れていました! それに体力だけには自信があります」

「うん……なんかすごいよね、段ボールもヒョイヒョイ積めて」

「お父さんの薦めで、散歩の時、腕に一キロの重りを付けてるんです」

「えっ……お父さんアスリートか何か……?」

「テレビ局って座りっぱなしで運動不足なので、健康オタクなんです」


 そう言って田見さんは段ボールを載せた台車をカタカタと動かし始めた。

 俺と明日海がバイトしてる道の駅は、地元最大の倉庫がすぐ横にあり、ここら辺りに届けられる荷物はすべてこの倉庫にくる。

 海から来た荷物、陸から来た荷物、全部一度ここに集められる。

 倉庫の敷地内には各配達会社と郵便局まである巨大配送ステーションだ。

 倉庫では常に人を募集してて「友だち日雇いでいいから連れてきてくれよ~、時給1300円!」と倉庫の人(父さんの知り合い)に言われている。

 ここ辺のバイトとしては時給がいいけど、寒いしキツいから高校生は全然いない。

 話し足りないし、木曜日の今日は俺たちもひたすら倉庫業務なので、田見さんを誘った。

 田見さんは、速攻で学校のジャージに着替えて笑顔で働いている。適応力が高い……。

 俺は台車から段ボールを下ろしながら、


「ネイロ組に応募する曲の長さに指定とかあるの?」

「三十秒以上、五分以下です」

「新曲は何分くらいになりそうなの?」

「私は曲を二番まで作らないんです。だから一分半くらいだと思います」

「今までYouTubeに上げてる音楽と同じくらいの長さだ」

「はい」


 一分半……短いと思うけど、これがアニメにするとなると長いんだよなー。

 俺は段ボールを積み重ねながら、


「ネイロ曲に付いてるアニメってさ、一枚絵で文字だけ動いてるのも多いじゃん。あれでも応募できるの?」

「可能だと思います」

「でも一枚の絵に文字だけ動いてるのじゃ、アニメ研究部って名前で出すのに、どーなの?」


 横に台車を持って来た明日海も「よいしょ」と荷物を置きながら言った。

 俺は明日海が持って来た台車の荷物も置きながら、


「全カット一枚絵じゃなくてさ、数カットだけ気合い入れるカット決めて、そこだけ動かすとか? あとは止め絵で文字で頑張るとか。文字エフェクトなら俺と明日海で頑張れるじゃん?」

「そうだねー。あの辺りの文字は作れるかも」

「文字作って貰えるだけで全然違う。明日海デザイナーだし」

「おほほ! 見て、田見ちゃん。これ私が描いてるビールのデザイン」


 そう言って明日海は段ボールをビリビリ開けて、自分がデザインした瓶ビールを見せた。

 田見さんはパアと目を輝かせて、


「すごいっ……すごいです……! このデザインを星野さんがっ……!」

「いいでしょー? うちの店のオリジナルビールで、春夏秋冬限定デザイン出してるの。これが売れるんだなー!」

「すごいです!」

「発注してもらってね、結婚式とか、お祝い事にもビール造ってるんだよ。いつか真広さんと結婚して……その時には自分と真広さんの似顔絵を入れたビールを引出物にするの……」

「そんなもん貰う俺の気持ちにもなれ! ほら、いくぞ。まだ山ほどあるんだから」


 俺たちは台車を押して荷物の山に戻って次から次へと段ボールを台車に乗せた。

 田見さんは本当にサクサク動いて「こういうひたすら続く地味な体力仕事は得意です」と言っていたけど、本当みたいだ。

 俺は重たい荷物を積みながら、


「アニメの絵コンテさあ……今まで俺が描いてきたけど……正直……上手に出来てないと思う」

 明日海は段ボールを運びながら、

「優真はさあ~、語りたい話が難しすぎるんだよー」

「たった数分で、しかも清乃しか描けないのに、絶対無理な内容やろうとしてるって、最近やっと気がついてきた……」

「優真の書いてる話って、うちらの技量じゃ無理なんだよねえ。酸素なしでエベレスト登るみたいな話。無理なんだよ」


 明日海は笑顔で俺のほうを見て言った。

 俺は段ボールにもたれかかって項垂れる。

 た、正しい……その通りだ……!

 そう今までアニメ部の絵コンテ……つまり『こういう風に絵を描いて、こういう風に話を作っていきましょう』という設計図のようなものだ。アニメを作る上で最も大切なパートで、全体のクオリティを左右する。

 絵を描くのがすっごく上手い人がいても、コンテがアホだとどうにもならない……それが絵コンテだ。

 俺なりに考えて『伝えたいこと』を必死に入れてきたけど、それをコンテにも出来てない……気がする。

 なのにそれを清乃に押しつけてるんじゃないかな……とネイロ曲のアニメをたくさんみて思った。

 ネイロ曲のアニメは全然動いてないんだ。

 歌詞の内容があって、それがストーリーを語っているから、無理に絵で語る必要はないのか……そう気がついた。

 だから一度物語を手放して、田見さんの曲という物語に乗っかるべき……それを曲を聴いて気がついた。

 俺がそういうと田見さんは荷物をトンと台車において恥ずかしそうに、


「……田見さんの曲という物語……なんだか……すっごく嬉しいです……」


 そうもじもじと言っていたけれど、俺のほうをパッと見て、


「あのっ……私はお二人が作ったアニメ、話の内容分かりましたっ……でもそれより、蜂谷さんは、私みたいな……ちょっとあれな子を誘ってくれて……学校でも助けてくれて、こういうの、誰にでも出来ることじゃないと思います」

「……そう、言ってくれると、嬉しい、な」

「こんな風にバイトとかにも、誘ってもらえるのも、すっごく、すっごく嬉しいです」


 そう言って田見さんは段ボールをチャッチャと積み上げた。

 明日海が俺の横で、


「優真はガチのコミュ強。話せない人いないから。男で生駒さん処理できるの優真くらいよ。生駒さんひとりいるだけでグループ簡単に崩壊するからね。そっちの才能のがすごいよ」

「グループワーク……というか学校……蜂谷さんが居なかったら、一言も話せず石で終わってました……」


 田見さんはせっせと段ボールを運びながら言った。

 俺は少し恥ずかしくて、でも嬉しくなり、段ボールを積み上げながら、


「人と何か作るのが好きなんだよ。だから田見さんが言っていた『女の子』『怪獣』『入って来られない』『廃墟』『涙』『最後に入ってくる』……だけで簡易な脚本と、むしろ設定を考えて、それを元に清乃にコンテを描いてもらうのが良いと思うんだ」


 俺の言葉に明日海も田見さんも頷いた。

 締め切りまで二ヶ月……。田見さんは段ボールをカリカリと爪で引っ掻きながら、


「これからひたすら曲を形にしていく地味な作業に入ります……歌詞の内容とか、方向性は変える気がなくて……だからこう……絵とか決めてもらっても、全然大丈夫だと思うんです」

「おけおけ。同時進行じゃないと無理だと思う。え、田見さんが作った仮歌と、全然違うことになったりもする?」

「全く無い事では、無いですが、曲の印象がガラッと変わることはないです」

「じゃああの歌詞と雰囲気だけで決めていけば良いんだね。硫酸とかは、孤独の象徴……だよね?」

「はい、たぶん……そうだと、思います」


 田見さんのイメージを俺なりに考えてみたんだけど、硫酸=人を近づけたくない脅威=孤独……だと思う。

 目から硫酸と聞かされた時は何かと思ったけど、俺はいつも清乃が描いたラフ絵から話を考えている。

 そう思ったら、言葉の意味だけじゃなくて、そこで何を考えているのか紐解いていくことが大切だと思った。


「主人公の女の子は何歳くらいをイメージしてるの?」

「小学校低学年くらいの……サクラちゃんが良いです。そして魔法使いみたいなマントみたいなのを頭からかぶってる感じ……歌詞の中にも『涙のマントで包む』ってあるんです」

「あ~~。そのほうが可愛いから小さいサクラちゃん。マントにくるまってる感じ?」

「そうです!」

 

 そう言って田見さんはふにゃ……と笑顔を見せた。

 主人公のサクラちゃん……小さくてひとりでマントをかぶって、怪獣が通らない場所にひとりでいる……それって田見さんだったり、清乃だったりする気がする。だからきっと、清乃はすごく心を乗せてこの曲のアニメを考えてくれる気がする。

 ひとりぼっちで怪獣を見ている小さな女の子……。

 俺はスマホでちょいちょいと検索して、赤い……足の甲でパチンと止められる靴を田見さんに見せた。


「主人公の女の子に、この靴を履かせてもいいかな?」

「可愛い……ぽてりとして可愛い靴ですね、すてきだと思います」


 これは清乃にも言ってないんだけど、清乃の病気が治り、小学校の入学式に行けるかもしれない……そうなった時に、母さんがネットで赤い靴を買っていた。

 どうやら病室で清乃が「可愛い」と言った靴みたいで、母さんは「絶対似合う!」と嬉しそうにしていた。

 でもその直後、清乃は熱を出してそのまま緊急入院になり、入学式には行けなかった。

 家にポツンと置かれた新品の赤い靴を、俺はなんとなく自分のランドセルに入れて、靴だけ入学式に持って行った。

 誰にも言えないけど、俺たちアニメ研究部がはじめて作る映像の主人公が、この赤い靴を履いてくれてたら嬉しい。

 さすがに恥ずかしくて皆には言えないけれど。

 田見さんは、


「いいですね。マントをかぶって、足元だけぽてりとした赤い靴のサクラ……ずっと怪獣を見てるんです。町の外を歩く怪獣を」

「煙の向こうに少し見える……とかだと距離感が出ていいね」

「そうですっ!」

「どれどれ……デザインの天才明日海さまが軽く描きましょう……」


 俺たちはバイト終わりに父さんが作ったラーメンを食べながら、軽くラフを描いてすごした。

 これを持ち帰って清乃と方向性を決めたい!


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 おもりを持って散歩する女子高生…(^^;)
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