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ダンジョン3

「おぉ、仰々しいところに出たな。」


「何でしょう、あれは?」


俺たちはゆっくりと近づき、その光の正体を確認した。そこには古代の遺物と思われる石碑が立っていた。石碑には何かが刻まれているが、読み取ることはできなかった。


「うーん、読めないな。ケイト、わかるか?」


「本にも載っていなくて、ヒロイックでも見たことのない文字です。恐らく古代の言語か、ダンジョン特有の文字かもしれません。」


その時、森の奥から重い足音が聞こえてきた。木々が揺れ、地面が微かに振動している。何かがこちらに近づいてくるのを感じた。


「アダス兄様、何か来ます!」


ケイトが緊張した声で言った。俺はすぐに周囲を見渡し、迫っているものを確認した。すると、巨大な影が木々の間から現れた。それは巨大なトロールだった。


トロールは身長が軽く3メートルを超え、その体は厚い脂肪と筋肉で覆われている。巨大な棍棒を持ち、鋭い牙が口から覗いていた。その瞳には冷酷な光が宿っている。


「トロールか。こいつがこのダンジョンのラスボスかな?」


「何を呑気に言ってるんですか、兄様?2層にいたユニークオーガより強いですよ、このトロール。」


だよなぁ。確かに強い。子供の俺たち、今のステータスでは勝てないかもしれない。


「けど、退くつもりはないんだよな。」


「兄様!?」


俺は大きく踏み込み、トロールへと飛びかかった。


接近する俺めがけてトロールが振り下ろした棍棒をギリギリで避け、棍棒を台にして跳ね、トロールの顎に拳を叩き込む。しかし、トロールの分厚い脂肪に阻まれて有効打にならない。


「ちぃっ、さすがに固いな。」


もう一撃与えようと思ったが、トロールの手が迫ってくるので飛び退く。


「ケイト、サポートを頼む!」


「はい、兄様!お任せください。」


俺の声に答えるように、ケイトが薬品を投げた。その薬はトロールの皮膚に触れ、煙をあげて溶解させた。見る間に皮膚が溶けていくのが見えた。しかし、みるみるうちに再生し元通りになる。


「なっ!?」


「すげぇ、再生力だな!」


トロールの再生能力に驚愕しながらも、俺は冷静さを保とうと努めた。再生力を抑えない限り、どれだけ攻撃しても無駄だ。俺たちは知恵を絞る必要がある。


「ケイト、俺の火力が足りないと思うんだけど、何か手はないか?」


「アダス兄様、少し時間をください。兄様を強化する方法、あったと思います!」


ケイトが急いでポーチから書物と薬品を取り出し調べ始める。俺はその間、トロールの攻撃をかわし続ける。

トロールの棍棒が地面に叩きつけられるたびに、地面が揺れ、土埃が舞い上がる。


「HEY!HEY!HEY!鬼さんこちら、手の鳴る方へってな!!」


トロールの攻撃が次第に激しくなる中、俺は軽々と躱してみせ、トロールを煽る。

その時、ケイトが叫んだ。


「兄様!これを飲んでください!」


ケイトが俺に向かって小さな瓶を投げ渡した。瓶の中には青い液体が揺れている。


「これって、何だ?」


「兄様の戦闘力を大幅に上げる特製のバフ薬です!でも、効果は短時間ですから注意してください。」


「分かった。ありがとな、ケイト。」


俺は瓶の中の液体を一気に飲み干した。すると、体中に力がみなぎり、視界が一気にクリアになった。筋肉が膨れ上がり、身体能力が飛躍的に向上するのを感じた。


「よし、行くぞ!」


俺はトロールに向かって突進し、そのどてっぱらに一撃を叩き込んだ。今度はトロールの厚い脂肪を貫通し、内臓にまで達した。トロールは苦痛の咆哮を上げ、よろける。


「もう一発だ!」


「グガァァァっ!!」


反撃してくるトロールの攻撃を躱してながら俺は次々と強力な攻撃を繰り出し、トロールの再生力を上回る速さでダメージを与え続けた。トロールは次第に力を失い、攻撃の隙が大きくなっていくが、まだ倒しきるまで足りない。


「追加に自己強化だぁぁぁ『獅子奮闘』!!」


身体強化スキル『獅子奮闘』

魔力が続く限り身体力を極限に底上げするスキルである。

俺の体から獅子を型どった紅いオーラが吹き出し身を包む。高揚が高まり、四肢に力が入る。


「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァっ!!!」


防御を捨てた素の素早さに、バフ薬とスキルによりましたパワーによる激しいラッシュ攻撃を繰り出す。

トロールによる反撃も受けたがスキルによる脳内麻薬、高揚した俺は怯まず攻撃をつづける。

決して、防御力を上げてないためスキルの効果が切れた後が怖いが……


俺のラッシュ攻撃に堪らなくなったのか、トロールが腕でガードをして身を守るがこじ開ける。

ケイトのバフ薬の効果が切れて、残るはスキル『獅子奮闘』のみだが、俺の少ない魔力では後数秒しかもたない。


「これでラストだぁぁぁっ!『発勁』!!」



俺はトロールの心臓部に向かって防御力貫通スキル『はっけい』を叩き込む。スキルによって光を発する掌がトロールの肉体を貫通した。


トロールはその場をグラグラと揺れながら巨大な体が崩れ落ち、うつぶせに倒れる。


『発勁』を使ったため魔力を使いきり、『獅子奮闘』の効果が切れ体から力が抜けた俺も倒れかけたが、ケイトが走りよって支えてくれた。

息を切らしながら、俺たちはトロールの動きを見守った。


「やったか...?」


トロールは完全に動かなくなり、ついに息絶えた。


「やりました!アダス兄様の勝利です!!ダンジョンの魔力なくってます!ダンジョンクリアです!!」


ケイトが歓喜の声を上げる。俺もほっと胸をなでおろした。


「やったな……あっ、ダメだ。」


「兄様っ!?」


『獅子奮闘』による脳内麻薬が切れため身体中激しい痛みと疲労感により俺は気を失った。


その後、ケイトが俺を背負ってダンジョンを脱出したらしい。

ありがたいこった。


村に帰った俺たちがしこたま怒られたのたは仕方がないことだ。

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