ダンジョン2
「オーガか…子供の体でこれは手強そうだなぁ。」
二人を見たオーガはバカにしたような声でグフフと唸っている。その目には侮りの色が見える。
どうやら二人が迷い込んだ人間の子どもとでも思っているのだろう。
「アダス兄様、通常のオーガよりも筋肉量が多い気がします。気をつけてください。」
ケイトが少し警戒心を強め、毒々しい液体が入った小瓶を手にした。
「突然変異ってやつかな?まぁ、心配しなくていいよケイト。何とかなる。」
俺はそう答え、戦闘態勢である構えをとる。この構えは、前世の神代速雄が若いときに習った何ちゃら拳法の構えだ。ヒロイックオンラインに拳法とかは無かったので、自然とこの構えになった。
俺の戦闘態勢を見たオーガが吠え、その筋肉隆々の腕を振り下ろしてきた。人に当たれば即死であろう一撃だ。
「うへぇ、おっかないけど……でも動きは見えてるよ。」
俺はそれを流れるように避けてオーガの懐に潜り込み、カウンターの拳を叩き込む。その拳はオーガの硬い腹筋に守られた鳩尾に深く食い込み、オーガの表情を曇らせた。
「ここですっ!」
オーガの動きが止まったところを狙ったケイトが素早く薬品の入った小瓶を投げつける。オーガの頭に当たった小瓶が割れ、中から毒々しい液体がオーガに降りかかる。毒々しい液体はオーガの皮膚に触れると、煙をあげて皮膚を溶かした。
「ぐおおおおおぉぉぉぉっ!?」
あまりの激痛にオーガが後ずさる。
「子ども相手だからって嘗めすぎだよ」
俺は、某有名格闘アニメの主人公よろしく両手で構えを取り、
「『気砲波』!」
突き出した両手から気のビームを打ち出した。気でできた光線が一瞬でオーガに衝突し、上半身を消し飛ばした。後方のダンジョンの壁にも風穴が空き、外の光が差し込んでくる。
「うわっ、威力えげつねぇ。」
「ダンジョンの外が見えてますね、兄様。」
『気砲波』はヒロイックオンラインのスキルの一つで、前に使った『気弾』よりも格上のスキルである。コストもかかり、隙もある必殺技の一種であるが、ロマンである。
いいよね、ロマン砲って。
それから俺とケイトはダンジョン2階層を楽々突破した。
魔物もゴブリンやオーク、オーガが出てきたが最初にいた突然変異に比べたら余裕だった。
いや、もしかしたらレベルアップをしたかもしれない。
後で、『ウィンドウ』で確認してみよう。
3層へ続く階段を見つけ、降り立った俺たちは、目の前に広がる広大な森に圧倒された。木々は空高く伸び、その間を通る道は薄暗く、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
ダンジョン内は特殊な異空間になっており、様々な環境を作り出すことがあるんだとか。
「森ですね。ダンジョンにしかない薬草や毒草があれば嬉しいんですけど。」
ケイトが周囲を見渡しながら呟いた。その言葉に俺は微笑みながら答える。
「それは、ダンジョンのみぞ知るって感じだな。」
しばらく歩くと、森の奥から奇妙な鳴き声が聞こえてきた。警戒しながら進むと、小さなクリーチャーが道を横切っていた。
「何でしょうか?」
ケイトが興味を持ったその魔物は小さな体に大きな目を持ち、虫の羽根のようなものが背中から生えている。
「んー、パッと見はピクシーみたいだな。ヒロイックにはいない魔物だ。」
俺がそう言った瞬間、そのピクシーらしき魔物が突然跳ね上がり、森の奥へと飛び去っていった。俺たちはそれを追いかけることにした。
「お、逃げたな。ケイト、追うぞ。」
「え、アダス兄様?罠かも知れませんよ?」
「罠があったら突破すればいいだけさ。」
ピクシーらしき魔物、ピクシー(仮)を追って森の奥深くへと進むと、広場のような場所にたどり着いた。そこには、巨大な樹の根元に何かが輝いているのが見えた。