その侍、戦闘狂
「五明丸兄さん!まさか、同じ王都にいて、噂の騎士団エースが五明丸兄さんとは思いもしませんでした!」
アーロンがなんたる失態と呟きながらメガネをくいっと上げている。
「おお!アーロンではないか。王都で色々と活躍しているFランク冒険者がいると報告が上がっていて、名前を見てもしかしてと思ったが、やっぱりお主だったか。」
「あはは、五明丸兄さんにまで知られるなんて、なんか照れるなぁ。」
「そう、謙遜しなくていいぞ、アーロン。」
五明丸は近くの椅子に腰を下ろし、俺たちの方を向いた。
「さて、某とロイドやアリアがいる時点で皆がこの地に来ているとは思っていたが、まさか殿が直接会いに来るとは思わなかった。」
五明丸は苦笑しながら、静かに自分がどのようにして王都まで来たかを語り始めた。
五明丸が生まれ育った東邦の街は、王都から遠く離れた東の辺境にある。聞けば、日本で言う江戸のような街らしい。
うむ、是非行ってみたいぞ!
五明丸の家は古くからの武家の一族で、一応、貴族だそうだ。当主である父親は武芸の達人で、母親は弓の名手だ。武家の一族として実力主義を重んじる家で、前世でも刀を振るっていた五明丸にとっては居心地が良かったそうだ。
幼い頃から自己鍛錬に励み、兄弟たちとともに修練を重ね、強くなっていった。成人する頃には一族最強と称されるほどの実力を持ち、お上(五明丸のいる地方では領主をお上と呼ぶそうだ)に紹介されて王都へ行くことになった。道中、ドラゴンの襲撃に遭ったが、一刀両断した。それが王国騎士団の団長の耳に入り、スカウトされて今に至るらしい。
「よし、某も殿たちと行動しよう。だが、その前にぜひ殿と手合わせをしたい。」
ニマァと五明丸が笑う。
イケメンだが、何か迫力があってこわいぞ!
「えっ、五明丸兄さん、何を?」
「にゃあ、五明丸兄の顔が凶悪にゃ!」
「実は、某は戦いを通じてこそ真の力を見出すことができると信じている。ヒロイックの頃から殿の腕前を知っていたが、生まれ変わった殿と互いに研鑽を積みたいのだ。」
五明丸の目が鋭く輝き、その中に燃えるような戦意が見える。
ああ、コイツ戦闘狂かよとその場の全員が察した。
「はぁ……いいだろう、五明丸。全力でお相手、いや、ほどほどに手加減してな。いやマジで!」
訓練所の広い空間で、俺と五明丸が激しく戦っていた。サラとアーロンは静かに見守り、その戦いの行方を見守っている。
「さあ、始めようか!」
俺は素早く間合いを詰め、素手で連続の拳を繰り出す。俺の攻撃は速く、五明丸は木刀を巧みに操りながらその攻撃を受け流している。五明丸の木刀が鋭く振られ、俺の拳がぶつかる音が訓練所に響いた。
「おお、流石でござるな、殿ぉ!」
五明丸が笑みを浮かべながら言う。その目には興奮と戦意が見え、木刀を巧みに扱って俺の攻撃を防ぎつつ、反撃の機会を狙ってくる。
俺はその敏捷力を活かして五明丸の攻撃をかわし、素早い反撃を繰り出す。五明丸の一撃が俺の防御を突破しそうになるが、俺は何とか拳で弾き、再び攻撃に転じる。
「痛ってぇな……なかなかやるな、五明丸!」
俺が五明丸の攻撃を捌きながら言うと、五明丸は再び木刀を振り下ろしてくる。俺はその攻撃を避けつつ、素早い拳で応じる。
五明丸の力強い一撃が俺の防御を突き破る場面もあったが、俺の素早い動きでそれを受け流し、再び拳を振り下ろす。敏捷さと反応速度で五明丸の攻撃をかわし、全力で反撃を試みる。
「いい……やはり、殿は強者ですな。」
五明丸の声には敬意が込められており、その目に燃えるような戦意が宿っていた。
その時、見回りの騎士たちの足音が近づいてきた。俺は五明丸の目を見て、その瞬間に察する。
「見回りが近づいてきたな。このままだとバレちまう。」
俺が息を整えながら言うと、五明丸も頷いた。
「うむ、残念だがここでお開きとしましょうな。お疲れ様でござる。」
五明丸が笑顔で言う。
俺たちは戦闘を終え、呼吸を整えながら固く握手をした。サラとアーロンも静かにその場を離れようと準備を整えていた。
「いやはや、いい手合せであった。殿、また試合をしましょうぞ!」
五明丸が提案する。
「うへぇ、お前強いからなぁ……時間あるときな。」
俺も苦笑しながら応じる。




