東邦の侍
街の喧騒を抜け、アーロンが案内する静かな喫茶店に到着した。店内に入ると、木製のテーブルと椅子が並び、穏やかなジャズの音楽が流れていた。
「ここが僕のおすすめの喫茶店です。落ち着いた雰囲気で、リラックスできるんですよ。」アーロンが微笑みながら案内した。
サラと俺はアーロンに続いて席につき、メニューを手に取った。アーロンは店員にオーダーを伝え、しばらくしてからテーブルに温かいお茶と焼きたてのケーキが運ばれてきた。サラはその美味しそうな香りに鼻をくすぐられ、目を輝かせた。
「うにゃ、いい匂いだし、美味しそうだにゃあ!」
サラが興奮気味に言った。
「ここのケーキもおすすめです。自家製で、絶品なんです。」
アーロンの言葉に耳を傾けながら、俺はカップを手に取りながら話しかけた。
「アーロン、お前も僕たちと一緒に来るか?他の連中の手がかりを探しに行くんだけど。」
アーロンの目が輝いた。
「もちろんです!兄さん、姉さんと一緒に行けるなんて光栄です!」
「んにゃあ、一緒に来てくれるのは嬉しいけど、忙しくないかにゃ?」
「はい、大丈夫ですよサラ姉さん!王都での依頼も大切ですが、みんなを探すのも大切です!」
俺たちはアーロンを連れて、喫茶店を出た。最初の目的地はここから近い騎士団の詰所だった。詰所は喫茶店から西側に位置し、堅牢な石造りの建物で、門前には厳つい顔つきの衛兵が立っていた。
「ここが騎士団の詰所か。さっそく入ってみよう。」
俺たちは門の前に立ち、衛兵に話しかけた。
「すみませんが、この中にいる騎士団のエース、東邦の侍と会いたいのですが。」
しかし、衛兵は眉をひそめて答えた。
「一般人はここに入ることは許されていない。アポもない方はお引き取りください。」
「ちょっと待ってくれ、僕たちは……」
アーロンが説明しようとしたが、衛兵は譲る様子を見せなかった。
「しょうがない。」
一旦離れてから作戦会議をすることにした。
「んにゃあ、アダス兄、どうするかにゃ……」
「アポイントなんて、ただの冒険者には許可する理由もないしな……しょうがない。コッソリ忍び込むことにしよう。」
「マジかにゃ、アダス兄。」
サラが俺をジト目で見てくるが、俺は衛兵の隙を素早くつかみ、塀の壁にたどり着いた。アーロンとサラもすぐに続く。
「よし、ここの塀の高さなら余裕で侵入できそうだ。巡回している見張りが来る前に入ろう。」
俺たちは衛兵の注意を引かないように気をつけながら、塀を飛び越えて詰所の中に忍び込んだ。中は広く、訓練場や武器庫が整然と並んでいた。通り過ぎる音や足音に注意を払いながら進む。
「このまま行けば誰かに見つかるにゃあ。」
「誰かに見つかる前に探さないと……お?」
ブンッ、ブンッと音に気づいた俺は静かに訓練場の隅に近づき、物陰に隠れながら覗くと、一人で刀を振るっている男が見えた。濡れ烏色の髪を結い、鋭い目つきで稽古に打ち込んでいるのが見えた。
「どう見ても五明丸だな。」
「はい、兄さん。どう見ても五明丸兄さんです。」
「当たりだにゃあ。」
そのとき突然、五明丸が訓練を中断し、周囲を見回した。
「誰かいるようだな?」
五明丸が鋭い目で辺りを見渡し、声を張り上げた。
マジか、五明丸のやつ息を潜めて隠れてたのにこっちに気づいたのか。
「何者だ、出てこい!」
俺たちは仕方なく、静かに隠れていた場所から出てきた。五明丸は俺たちを見て、その目を見開いた。
「おお、これは……殿ではないか!」
五明丸が驚きの声を上げ、感動の表情を浮かべた。
「いやいや、ロイドやアリアもおるからもしかしてと思っていたが、殿に会えるとは!!!」
この感動している美形細マッチョ侍は五明丸。ケイトやサラ、アーロンと同じく、ヒロイックオンラインで俺が作製したサブキャラクターの一人である。ステータスを器用さ(技術力)に極振りした超テクニック型の侍キャラクターで、技術力が高いおかげで格上の相手にも通用するので重宝したサブキャラクターである。
性格は強い忠誠心があり、名誉を重んじ、誠実であることを大切にし、自制心が強く、礼儀正しさと勇敢さを持っている。




