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嘆きのバンシー

王都への道中、俺とサラは森で何種類かの獣系の魔物に遭遇したが、俺たちの敵ではなく、あっさりと蹴散らした。


「いやぁ~、魔物が出なくて良かった。冒険者のお二人と一緒なら安心ですねぇ~」


ダニエルは安堵した表情を見せる。


「にゃあ、ダニエルのオイチャン。王都までどのくらいかかるにゃ?」


「オ、オイチャン。そ、そうですね……このペースだとあと2日ほどでしょうかね。あ、今日はこの先にあるパラダマという村で泊まる予定です。」


「2日か。じゃあ、その村で一泊するか。」


俺たちは旅の商人ダニエルとともに森を抜け、小さな村、パラダマ村に到着した。パラダマ村は静かで、夕暮れ時の光が薄暗い木々の間から差し込み、古びた家々の影を長く伸ばしている。人通りは少なく、どこか寂しい雰囲気が漂っていた。


「あれ、以前来たときはもっと活気があったような……」


ダニエルが疑問を口にすると、村の奥から一人の老人がゆっくりと歩いてくるのが見えた。老人は俺たちに気づくと、微笑みながら近づいてきた。


「なんだ、ちょっと不気味な感じだな。」


不気味に感じながらも俺は村の様子を観察する。老人が俺たちに近づくと、深いため息をついて話し始めた。


「ようこそ、パラダマ村へ。寂れてはいますが歓迎しますぞ。」


「あ、村長さんお久しぶりです。商人のダニエルです。先ほど森を抜けてきたところです。ここに一泊させてもらえますか?」


「ああ、旅商人さんか。もちろん、どうぞこちらへ。村には宿屋がないんでワシの家でおもてなしをしましょう。」


村長に案内され、俺たちは村長の家に到着した。家は古びていたが、外とは違い、家内は暖かみのある雰囲気が漂っていた。


夕食の準備が整うと、村長は食卓に豊かな料理を並べてくれた。村で栽培された野菜や肉料理が並び、香りが食欲をそそる。


「どうぞ、召し上がれ。」


村長の招待に感謝しながら、俺たちは夕食を始めた。


「美味しいですね。……ところで村長さん。この村には何度か来たことがありますが、前回よりも静かで少し寂しい感じがします。」


ダニエルが再び疑問を口にすると、村長は深いため息をついた。


「実は最近、この村では夜な夜なバンシーという幽霊系の魔物が現れるようになりましてな、村にいる家畜が次々と殺されているのじゃ。それに伴い、いつ人が襲われるかわからないという不安が広まり、村の雰囲気が悪くなってしまったのじゃ。」


「ほほう、バンシーですか……それは厄介ですね。」


バンシーが人を襲う?俺もその話を聞いて驚いた。俺がヒロイックで知ってるバンシーは自分から人を襲うような魔物ではなかったはずだ。


バンシーとは通常、女性の姿をしており、白髪や長い黒髪を持つことが多く、白い衣装をまとっている幽霊系の魔物だ。バンシーの最も有名な特徴は、悲しげな嘆き声で、この叫び声は近いうちに家族や親しい人が亡くなることを予告するものと言われている。 バンシー自身は直接的に人々に危害を加えることはない。ただし、その出現や叫び声が死の前兆とされるため、非常に恐れられている、だったかな。


大方、小心者の村人がバンシーを見て驚いたんだろうが……家畜が襲われてるのは何故だろうか。


「そのバンシーは必ず最初に村の井戸から出現し、村の中をさまよっているそうじゃ。今夜もまた現れるかもしれぬ。」


「それにゃら、今夜にでもウチとアダス兄でバンシーを討伐するかにゃあ。」


「本当ですかな?それは助かりますぞ。井戸の近くには古い家があるので、そこに待機してもらって、出現するのを待つのがいいですぞ。」

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