Cランク冒険者
「ウオォォォォォォォォオンっ!!!」
森の中を歩き続けていたが、突然、耳をつんざくような遠吠えが森の奥から聞こえてきた。その音に反応して、俺は一気に駆け出した。音のする方向に向かうと、数名の冒険者たちが逃げ惑っているのが見えた。彼らの顔は青ざめ、汗が額を伝っている。
「どうしたんだ!?」
逃げている冒険者に声をかけると、彼らは息を切らしながら叫んだ。
「凶暴な魔物が……はぁ、はぁ……突然現れたんだ!!」
「凶暴な魔物…」
冒険者たちが俺を置いて逃げ去った後、森の木々を突き破ってその魔物は現れた。
その体は厚い毛で覆われており、毛の色は濃い灰色から黒にかけてのグラデーションで筋肉質な体つきと強靭な足を持つ巨大な狼。
「コイツはたしか、フェロウ・ウルフだったか?うちの村の周りにもいたけど、ここまで大きくなかったような……」
特徴は通常の狼よりもはるかに大きく、体長約4メートル、肩高2メートルを超える筋肉質な体を持っている。背中と肩には鋭い棘のような突起があり、強靭な足で地面を踏みしめている。
通常その目は黄色く光り、異常なほどの知性を感じさせるはずが、目の前にいるフェロウ・ウルフの目は朱く濁り、知性を感じない。
「なんだコイツ、普通じゃないな。」
俺は、拳を構える。このままコイツを放置すれば、俺以外の試験を受けてる冒険者たちに被害が出ることは明らかだ。
しょうがない、面倒だがこのフェロウ・ウルフは俺が倒そう。
試験開始からいたギルド職員の監視の目もない。これならちょっとだけ力を込めても問題ないだろう。
フェロウ・ウルフは逃げない獲物、俺に向かって、猛烈な勢いで突進してきた。が、俺は突進してくるフェロウ・ウルフを見つめ、避けずにその巨体に向かって正拳突きを叩き込んだ。
「我が拳に砕けぬものは無し!」(フ、決まった✨)
俺の拳はフェロウ・ウルフの硬い皮膚を突き破り、内部の肉体にまで衝撃が達した。フェロウ・ウルフは地面に崩れ落ち、動かなくなった。
「さてさて……証拠隠滅、証拠隠滅。」
俺は素早くフェロウ・ウルフの死体を『ボックス』に収納し、証拠を隠した。周囲を見渡すと、フェロウ・ウルフが暴れていた跡が残っているが、肝心のフェロウ・ウルフは俺の『ボックス』の中だから何か聞かれたらどこかに去ったと言っておこう。
「じゃあ、帰るか。」
ギルドに戻る途中、他の冒険者たちがフェロウ・ウルフが現れたことを話しているのを耳にしたが、俺は黙って通り過ぎた。
ギルドに戻ると、試験官に剥ぎ取ったグリルボアの牙を提出した。
「グリルボアの牙、確かに受け取った。サイズも中々の大物みたいだな、素晴らしい。」
「肉は美味しいって聞いたから個人で持ち帰るぞ。」
「ああ、Cランク昇格試験は牙が必要だからな。肉は好きにしていいぞ。」
といいながら、試験官は少し考え込み、また口を開いた。
「ギルド長から聞いていたが、お前のポテンシャルはかなり高いのだろうな。試験の結果は合格だ。アダス・ラズロ、見事にCランク冒険者として認められた。このまま精進すれば高ランク冒険者になるのも夢ではないだろう。」
てっきり、試験中に現れた魔物について質問があるかと思ったが無かったな。
試験官から新しくCランク冒険者カードを渡された俺にサラが駆け寄ってきた。
「アダス兄、おめでとうにゃ!ウチ、アダス兄なら余裕だと思ってたにゃあ。それで……」
「はははは、ありがとなサラ。ちゃんと美味しい肉も手に入ったし、今日はごちそうだな。」




