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冒険者になりました

試験会場に足を踏み入れた俺は、周囲にいる冒険者試験を受けに来た新人たちの緊張感を感じながらも、自分のチート過ぎる能力を隠すよう心がけていた。他人のステータスを見たことはないが、俺のステータスに書かれている能力のたけは多分チート級だ。


(試験で目立ったら絶対後々面倒臭いことになるからなぁ。)


俺は普段よりも控えめに動き、力を出しすぎないように気を配っていた。周囲の新人冒険者たちと同じスタートラインに立ち、公正な試験を受けるために全力を出さないよう慎重に行動していた。


試験の内容は、体力測定や基本的な戦闘技術の確認、そして実際の模擬戦闘だった。受付嬢に案内されて試験会場中心へ向かうと、他にも数名の新しい冒険者たちが集まっていた。


「次、アダス・ラズロ!」


名前を呼ばれ、俺は前へ進み出た。眼帯をつけた試験官が簡単な説明を始めた。


「まずは体力測定だ。このグラウンドを五周走ってもらう。その後、力試しとして木製の杭を素手で用意した土手に打ち込んでもらう。最後に模擬戦闘での実力を見せてもらう。」


俺は深呼吸をして、走り始めた。思いっきり走りたいけど、我慢して風を感じながら、無駄な動きを抑えてペースを保つ。五周目を終えた頃には、ほんの少し心拍数が上がりはしたが、汗は全然かかなかった。


「ほう、中々の体力があるようだな。次は力試しだ。この木製の杭を素手で土手に打ち込んでみせろ。」


試験官が指差したのは、土手の手前に置かれていたかなり太くて硬そうな杭だった。俺は杭を土手にかけて、拳を握りしめる。全力を出さないよう集中力を高めて、打ち込んだ。拳が杭に当たる瞬間、軽く力を込めた一撃で杭は土手に深く突き刺さった。


「最小限の動きかつ力強い……見事だ、アダス。お前さんの力と集中力は立派なもんだ。次は模擬戦闘だな。ここにいる先輩冒険者の誰かと戦ってもらう。そうだな、アカシデ、お前がこの新人の相手をしてやれ。手加減はしなくていいぞ。」


眼帯をつけた試験官が声をかけた冒険者は大柄な男性で、ギョロギョロした目付きが印象的だった。先輩冒険者と指定された場所に立つ。俺は構えを取り、先輩冒険者を見つめる。


「始め!」


試験官の掛け声と共に先輩冒険者が動き出し、俺に向かって突進してきた。俺は正面で受け止めようと考えたがやめ、横に跳んで避ける。先輩冒険者が避けた俺を追って剣を横凪ぎに振るう。迫る剣を俺はさらに躱して、剣の腹を拳で殴って弾きながら蹴りを放つ。


「そこまで!」


俺の蹴りが先輩冒険者の胴体に当たる前に、試験官は手を上げて戦闘を止めた。


「ふぅ、よくやったアダス。しかし強いなお前さんは。もうすぐC級になるアカシデの攻撃を全部避けきり、反撃もするとは……これでお前さんが冒険者としてやっていける能力は証明された。」


試験官の言葉に、俺はほっと息をついた。


(ふぅぃぃぃぃっ~~~!適度な手加減しながらの戦闘とかマジで疲れたぁぁぁぁ!!)


内心で嫌な汗かきまくりの俺に受付嬢が近づいてきて、冒険者証を渡してきた。


「これで正式にEランク冒険者として登録されました。ようこそ、冒険者ギルドへ。」


俺は冒険者証を手に取り、感謝の気持ちで頭を下げた。


「ありがとうございます。これからも頑張ります。」


ギルドからそそくさと出ると、外の光が一層眩しく感じられた。さぁて、これから始まる冒険に対する期待と希望が胸を膨らませてくれるか楽しみだ。


それから俺は家に戻って、晴れて冒険者になったことを両親に伝え、旅の準備を始めた。


俺は今世の生まれ故郷である村を出るのだ。

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