出資者募集中
――ホープ社長、本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。
「こちらこそありがとうございます」
――お目に書かれてうれしく思います。本日は「軌道エレベーター(以下OBE(Orbital Elevator)と記載)に対する展望」について伺いたいと思います。よろしくお願いします。
――早速ですが、軌道エレベーターの出資者として、ルナエンバシー社は大きな名乗りを上げましたね。どうして出資を決定されたのでしょうか。
「我が社が、月の土地を個人に対して売却する「地球外不動産業者」だからです。」
――……えっと、それだけですか?
「そうですね、まずOBEは、人類の宇宙進出を可能にする画期的な技術であり、私たちはその未来を築く一翼を担いたいと考えています。宇宙へのアクセスを劇的に向上させ、宇宙探査、宇宙開発、持続可能なエネルギーの供給など多くの分野に革命をもたらす可能性があります。私たちはその可能性に賭けることにしたのです」
――出資の決定は唐突な発表のように思われましたが、出資を意識されたのはいつごろからでしたか。
「今回のOBEへの出資を意識し始めたのは数年前からです。カーボンナノチューブなど不可欠な技術に対するイノベーションが急速に進展しており、OBEが宇宙への新たな道を切り拓く可能性がますます現実味を帯びていると感じました」
――決定的な要因をお聞かせください。
「最初の決定はOBEの中継基地が月に置かれることでした。わが社の保有する不動産は月のすべてです。それを直接支配することは我々の悲願でしたので」
「目下最大の障害として、OBEがつかむケーブルを丈夫で長いにもかかわらず軽くする必要がありますが、同社がその開発に成功したということも、次点に挙げられます」
――やはりOBEを利用した事業としては不動産業の展開をお考えなのでしょうか?
「まさにそういうことになります。ご購入されたお客様に土地をお渡しすることができるでしょう」
――28ドル(日本では3000円)で購入した方が多いと思いますが、追加の費用は必要ないのですか。
「我が社が初めて月の土地をご購入いただいた時から100年以上の月日が経過しました。その間に私たちは多くの経済的な困難を経験してきました。お預かりしたお金は現在の28ドルと同価値ではないのです。また土地をお売りする不動産屋として適切な運用を欠かしておりません。全ては、ここで宇宙に進出する手助けをいち早く差し伸べることにありました。1エーカーの土地を28ドルのままでお引き渡しいたします。
もちろん、宅地製造をなさる時は我が社にご用命いただきたいですがね」
――高い理想と、理想的な商魂をお示しいただくことができましたね。宅地製造のお話がありましたが、月の土地全てについて権利を主張なさるおつもりなのでしょうか
「はい。そう考えています。そもそも月は弊社を興したデニス・ホープ社長が所有権を取得しております。異議を述べる機会をとった上での権利なのですからこれからも全てを主張するつもりです。また、その権利を実現するために今回の出資があるのです」
――ありがとうございました。本日は貴重なお話を伺うことができました。
「こちらこそありがとうございました。弊社の見解をお伝えする大変良い機会になったと思います」
記念増刊号『星の路に思いを馳せて』より抜粋
以上